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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

地方の婚活パーティー?編

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238 精霊おすすめプラン

 立ち上がりかけた私の腕を、ぎゅっとつかまれた。
 松の精霊ミスジャンティーに。

「あの、高原の魔女さん、力を貸してほしいっス……」
 上目づかいで懇願されている。どうも、面倒な展開になりそうだぞ……。

「あなたたち、みんなお年頃とお見受けするっス。誰でもいいから結婚して、式で松の精霊に二人の愛が長く続くよう祈りを捧げてほしいっス! それでお布施を神殿に入れてほしいっス!」
「けっこう、厚かましいな……」

「ミスジャンティー神殿は全国どこも経営の危機なんスよ! 長らく、結婚式の時に儀式をやって、お布施をもらうというシステムで運営してたんスが……その収入が激減して……」
 そりゃ、総本山がこの有様だもんなあ……。

「同情はするけど、同情しかできないよ。私、結婚する予定はないし」
「お師匠様に同じく」
「ご主人様に同じく。昔ほど結婚願望もないのだ」

 私に、ハルカラとフラットルテが続いた。

「結婚したいけど、相手がいません……。超美形の冒険者さんがギルドに来て、いきなり結婚しようって言ってくれたりしませんかね……」
 ナタリーさん、それは都合がよすぎる。それと、本当にそんな人がいたら、結婚詐欺を疑ったほうがいいぞ……。

「――というわけで、お力になれそうにないので、私たちは帰るね」
 ミスジャンティーにさっきより強く腕をつかまれた。

「話だけでも聞いてほしいっス! 結婚式パックはいろいろと用意してるっス!」
「いや、パックがいろいろあっても結婚相手がいないから無意味でしょ」
 結婚自体が成立しないのだ。
 盛大な挙式とか地味婚とか選ぶ段階にたどりついていない。

「同性同士の結婚式でも大丈夫っス!」
 意外な発言だったので、少し私の思考が停止した。

「同性婚って、この国で認められてたっけ……? いや、認められてないでしょ。いくらなんでもそんな二十一世紀的な価値観は浸透してないでしょ」
 とくにこの世界は貴族間での領地の継承とかそういう問題が絡むので、同性婚とかそうそう許せないはずだ。

「法的には無効でも式を挙げたい二人のためにやるお祝いっス! ミスジャンティー神殿としては、もう三十年も前から顧客拡大のためにやってるっス! 私がお告げを出したっス!」
「そういう商売に熱心なところ、わたしは評価しますよ」
 社長でもあるハルカラが言った。

 顧客拡大のためにやってるんだろうけど、それで愛する同性カップルの中での思い出になるなら悪いことではないのではなかろうか。

「あっ、お師匠様、一度ためしにわたしと結婚式をやってみるとかどうですか、なんちゃって」
「やっぱり、至急帰ります……」
「お師匠様、その態度、普通に傷つくんですけど……」
「ハルカラには悪いけど、こういうの、冗談でやったりすると、いつのまにか冗談で済まなくなったりするから、ちゃんと一線を引くべきなんだよ」

 高原の家って、現状、巨大なシェアハウスとなっている。
 そして、私の前世の、日本でのシェアハウスというのは、よく地獄になっていた。
 非常に高頻度で住人同士のトラブルになるのだ。

 家をシェアするわけだから、ルールにゆるい人間と厳しい人間がいるとほぼ確実にいざこざになる。
 あと、家族感覚の人と、あくまでも他人だという感覚の人とがシェアしてもやっぱりもめる。

「どうして私にかまってくれないの?」「家族でも何でもないんだからかまうわけないでしょう」みたいなやりとりが私の友達の範囲でもありました。
 まして、そこに恋愛がからんだら、それはそれで厄介なことになる。

 だから冗談でもジョークでも、同居人と結婚式など挙げてはいけないのだ。
 火種になってからでは遅い……。私は絶対に高原の家をあんな負の感情が渦巻いてるシェアハウスみたいにしない!

「ハルカラがやるって言うなら、フラットルテもやっとくぞ。なんか、損した気分になるからな。ああ、けど、それだとライカもご主人様と結婚式を挙げておくとか言いそうだな……」
 そうそう。一度はじめたら、歯止めがきかなくなる。
 恋愛感情が一切なくても、この人ととくに親密ですってアピールには見えるからね。それを快く思わない人や対抗心を燃やす人が出てくるわけだ。
 なので、あまりカジュアルに式をやるべきじゃない。

「むむむ……。手ごわいっスねえ……。友達数人での合同結婚式プランなんかもあるんスけど……」
「……もはや、結婚式って概念が崩壊してない?」

「松の精霊としては、愛情や友情が末永く続くことを祈るだけっス。なので人数が二人である必要すらないんス。冒険者パーティー全員による式とか、会社の同僚全員による式とかでもいいんス。ミスジャンティー神殿にお金が落ちればそれでいいんス」
 最後に思いっきり本音が出てるぞ。

 とはいえ、各地に神殿があるような神格化されている精霊としては、経営を考えないわけにもいかないのか。

「あっ、一人結婚式プランもあるっスよ。自分で自分を永遠に愛すると誓う式っス」
「もう、あなた、ヤケクソになってるでしょ!? 松の精霊なんだし、初心に返って、松がよく育つ祈祷とか神殿でやれば……?」
「そんな地味な商売ではやっていけないほどに神殿が増えているので、難しいっスね……。五百年前なんかは、大きな町にはどこにだってミスジャンティー神殿があるぐらいでしたんで……」
 時代の移り変わりと言ってしまえばそれまでだけど、この子も大変だな。
 しかし、お金に執着する存在が私の周囲には多すぎる気がする……。

「ダメっスかね……? 一生の記念になるっスよ……?」
「むしろ、だからダメなんだよ。私の家、かなりの大家族だから、そのうち二人が式を挙げたら、ほかの同居人との間に差がありますってことになるでしょ。それ、和を乱す行為でしかないの」

 これだけ言えば、引き下がってくれるだろう。私にだって協力できることと、できないことがある。

「たとえば、姉妹でこれからも二人でいようねという意味合いで、式を挙げるケースもあるっスよ。そういう兄弟や姉妹はいないっスか?」
 ん?
 姉妹が姉妹愛を確認するための式。
 つまり、ファルファとシャルシャがウェディングドレスを着ての結婚式。
 それを母親として私が見守る。
 姉妹が姉妹として愛し合うのは何も悪いことじゃないし、あとくされもない。

 それは、かなりいいのではないか。

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