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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

地方の婚活パーティー?編

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237 ミスジャンティーっス

 あっ、精霊だ。世界精霊会議の時にこんなゆったりした服装の精霊が多くいた!

「えっ、私のこと見えるんスか。そういや、ここに来る人もいないんで、気配を消すのも忘れていたっス……」
 この、やたらと沈んでいる子はもしや――

「あなた、ミスジャンティーっていう松の精霊?」
 この世界には、精霊が実在している。ミスジャンティーという精霊もいたっておかしくない。

「あっ、よくわかったスね……。でも、松の精霊というより、結婚立会人の精霊っていうほうが本職だったんスけどね……。近頃じゃ、結婚式で私の儀式をやるカップルも少なくて、やってられないっス……」
 やはりミスジャンティー本人であるらしい。それにしても、精霊っぽくないしゃべり方だな……。全体的に軽い……。像の雰囲気とかなり違うぞ。

「まさか、松の精霊が本当にいるとは思わなかったよ。ここに祀られてるわけだから、家みたいなものなのか」
 神社に神様が住んでる漫画とかけっこうあったしな。でも、八幡神社とか稲荷神社とか支店? が日本中にある神社の場合、どういう扱いになるのかとか思うけど。ここのミスジャンティー神殿はいわば本店であり、総本山だから、いてもおかしくはない。

「あれ、お師匠様、そこに誰かいますか?」
 ハルカラにはミスジャンティーが見えていないらしい。

「それ、ただの松ですよね……? それともレベルMAXの高原の魔女様には何か特別なものに見えるんですか……?」
 ナタリーさんも似たような反応だ。とすると、これは私にしか見えないという流れか。

「なんか、うっすらと辛気臭い女がいるように見えるのだ。これは、もしや、蜃気楼!? やったのだ、蜃気楼を経験できたのだ!」
 フラットルテにはまあまあ見えているっぽいぞ!?

「あれれ……。おかしいっスねえ……。私は普段は下々の者には見えないようにしてるんですが……。そんな高レベルの人がここに数人も来るとか何事っスか……?」
 そっか、ドラゴンは強いもんなあ……。絶対に並みの冒険者じゃないもんなあ……。だから、姿を消している精霊も感知できるのか……。

「おい、蜃気楼の女。お前は何者なのだ? 蜃気楼でも返事とかできるのか? なあ、なんか言うのだ」
「ちょっ! べたべた触らないでほしいっス! これでもそこそこ由緒ある精霊っスから! 敬いの心とか、感謝の心とか、そういうのほしいっス!」

 やけに二人がわちゃわちゃしているので、見えない二人も混乱していた。何かが起きていることまではなんとなくわかるのだが、それが何かわからないので、落ち着かないという顔だ。

「ええと……ミスジャンティー……って呼んでいいかな? 話がややこしくなりそうなんで、特例で全員に姿が見えるようにしてくれない……?」
「わ、わかったっス! だから、この頭の悪そうなドラゴン娘を止めてほしいっス!」
「頭は悪くないのだ! 学校に通ったりしてなかっただけなのだ!」

 なんか、ミスジャンティーはフラットルテに肩車をされていた。どさくさで、フラットルテがやりたい放題やっている。



 神殿内の関係者用の部屋に入って、私たちは話を聞くことになった。
 これ、不法侵入なのではという気もするが、祭神にあたる存在が案内したので、多分許されるだろう。

「こほん……ええと、改めて自己紹介するっスけど、松の精霊ミスジャンティーっス……」
「あなた、世界精霊会議にも来てた? 来てたならニアミスしてたことになるけど」
「なんで人間が世界精霊会議の存在まで知ってるっスか……。もう訳がわからないっス!」

 そのあたりのことも一通り説明して、こちらの自己紹介もしました。あと、ついでに私たちがタジン村に来た理由も。
「ああ、高原の魔女って聞いたことあるっスよ。風の精霊が噂してたっス」
 風の精霊が私の情報を精霊の世界で広めてる気がするけど止めようもないし、しょうがないか。

「こっちは、婚活パーティーに参加しても無駄のようだったから、この神殿を見学して帰ろうとしてたの。そこで、あなたに出会ったわけ」
「ああ……タジン村はもう終わりっス……。毎年、村民の平均年齢が一歳ずつ増えていってるっス……」
 それ、新規参入が皆無ということか……。

「この村は、昔からそこそこ豊かだったっス……。なので、衰退しても、家の貯金でどうにか暮らせる人が多かったっス……。そのせいで、少子高齢化対策も後手にまわりすぎて、もう、どうしようもなくなっているっス……。我慢しちゃいけないところで我慢してしまったっス……」

 いかにもな地方の問題だ……。
 明日の生活もままならないような人ばかりだと、みんなこのままじゃダメだ、どうにかしようと必死にもなる。
 しかし、衰退がゆっくりだとちょっと我慢したり、ちょっと努力したりして、それで耐えられてしまうのだ。

 たとえば年収が七百万の人の翌年の年収が十万円下がっても、その人は少し下がったけど、この程度なら耐えられるなと思ってしまう。
 けど、マイナス十万円が五十年続いたら、家族を養えなくなってくる。
 で、年収七百万の人の年収が翌年に二百万になったりはしないので、衰退を受け入れてしまう面がある。

「おかげで、ミスジャンティー神殿の信用度もだだ下がりっス……。私は昔から松の精霊ってだけでなく、結婚式の仲人を務める精霊として深く信仰されてたっス……。その総本山の地元がこれっスから……」
 ミスジャンティーは、はぁと深いため息をついた。

 当事者としてはやりきれないだろうなあ。

「あの、質問よろしいでしょうか……?」
 おずおずと、ナタリーさんが手を挙げた。
「精霊様は、結婚相手をさっと見つけてきて、その……運命的な出会いを演出したりとか、そういう力はあるんでしょうか……?」
 あっ、ナタリーさん、結婚相手を探してもらう気だな。
「いえ、そういう力はないっス。あくまでも、私は仲人をやるだけっス」

「そうですか、じゃあ、いいです」
 すぐにナタリーさんが冷めた顔になった。心の声を読んだら、おそらく「なら、お前には用はない」とでも書いてあると思う。

「高原の魔女様、帰りましょう。あと、私は私で本格的に結婚相手を探します」
 たしかに長居をする理由はこれでなくなった。

「そうだね、じゃあ、フラタ村に向けて出発しよっか」
 立ち上がりかけた私の腕を、ぎゅっとつかまれた。
 松の精霊ミスジャンティーに。

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