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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

地方の婚活パーティー?編

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236 松の精霊の神殿

 翌日、私たちは松の精霊ミスジャンティーが祀られているという神殿に向かった。
 その神殿へと続く参詣道はタジン村の中でもまだ寂れ方がマシだった。比較的、開店している店が多いのだ。といっても、半分ぐらいは店を畳んでいるようだけど。

「どうやら、土産物を売っているお店のようですね。以前は参拝客もそこそこいたってことでしょう」
 ハルカラは商売人らしく、そのあたりのことには敏感だ。

「それにしても、精霊の信仰が急に不人気になることとか考えづらいと思うんだけど、なんで寂れちゃってるの?」
 テーマパークと違って、お寺とか神社とか宗教的な施設が観光地になってるところは、息が長いイメージがあった。

「実は、大昔はこのタジン村を街道が通っていたようです。ですが、七十年ほど前にタジン村を通らない新しい街道が作られてしまい、参拝者も減少することになったようです。過疎化もそこから加速したんでしょう」
「なるほどね……。それは大打撃だっただろうね……」

 街道が通っていれば、そこで一泊したり、ついでに近所の観光地を見る人も多いだろうけど、そもそも街道の外側ではよほどその村に行くという強い目的がある人しか来てくれない。

「しけた土産物ばっかりだなー。今時、木製の剣なんて買う奴はいないのだ」
 フラットルテは開店しているお店の一つをひやかしていた。変な民芸品とかに混じって木の剣が置いてある。日本の土産物屋にたまにあった木刀的な感覚なんだろうか……。

 一方、ナタリーさんは終始無言だった。顔も暗い。何も期待などしていないということか。

「あの、ナタリーさん、笑顔になれないのかもしれないけど、そんな調子だと、さらに幸せが逃げていくんじゃないかな……。楽しもうって気持ちはあったほうがいいかな……」

「ごめんなさい……。素敵な出会いがあるかもとか、事前にわずかでも考えてしまっていたせいで、ショックから立ち直れてなくて……」
「ここまでひどいと、そうなるね……」
 本当は今頃、婚活イベントにナタリーさんも参加している予定だったのだ。元気にやれというのも無理か。

「あっ、ミスジャンティー神殿が見えてきましたよ……。せいぜい、結婚できますようにって祈っておきますよ。百万分の一の確率で効き目があるかもしれませんしね……」
 まったく信じてないな。そりゃ、婚活パーティーをしなきゃいけない状態な時点で、結婚にご利益ある精霊としての信頼度もガタ落ちか。

 神殿自体は失礼ながらこの村には不似合いなほどに豪華だった。
 まさしく白亜の宮殿だ。柱一本、一本に松の木と思われる彫刻が施してある。その他、手を清める水の入った容器や、シャンデリアみたいな照明器具や、すべてに金がかかっていた。

「おー、儲かってたんだな。やたらと派手じゃないか。パールドラゴンの家みたいだぞ」
 フラットルテが感想を述べた。パールドラゴンという種族はそんな成金みたいな種族なのか。
 でも、ドラゴンは金銀財宝の収集癖があって、レッドドラゴンのライカもかなりのお金持ちだった。フラットルテたちブルードラゴンのほうがドラゴンとしては例外なのかもしれない。

 神殿の奥には松の精霊ミスジャンティーの像が鎮座していた。良縁にご利益ある精霊の割には、厳しい顔をした女性の像だ。
 ただ、一心不乱にお祈りを捧げているような人はいなくて、がらんとしていた。

「てっきり、こういうところって『良縁祈願、良縁祈願!』『年収八百万ゴールド以上の人、来て!』『次の婚活パーティーでは結果出せますように!』『元カノとよりを戻して、そのままゴールインしたい!』みたいな人であふれているものかと思ったんだけど」

「神殿に来る人の数も激減してるはずですからね。そのせいですよ。地の利が悪いのは、精霊でもどうしようもないんでしょうね」
 ハルカラが感情をあまり交えずに言った。

「人気もないんですね。じゃあ、やっぱり、効き目もないのか……。それじゃ閑古鳥も鳴きますよね……。ふふふ……」
 やっとナタリーさんが笑ったけど、苦笑いだ。いろいろと諦めた人の笑い方だ……。

「元気出して、ナタリーさん」
「この村にいると、かえって元気が奪われる気もしますし、とっとと帰りましょう。余計な婚活パーティーの話をしてすいませんでした……。ギルド職員としてお詫びします……」

「まあまあ……。ほら、神殿の後ろには松の庭もあるみたいだし、そこでも見学しよっか」
 とにかくナタリーさんを移動させて、気をまぎれさせる作戦だ。じっと立ち止まらせると、どんどん暗さが増していく恐れがある。

「松ですかー。松の下に生えてるキノコって採集したらダメなんですかね?」
 ハルカラの興味は松よりキノコにあるようだけど、普通に考えてダメだろ。神殿のものだろ。

「松かー。ブルードラゴンの間で松ぼっくり投げまくり対決をやるイメージぐらいしかないな」
 ブルードラゴンは種族全体がもう少しおしとやかになるべきだと思う。
 それでも私はみんなを松の庭に連れてきた。

 たしかにいろんな松が植えてあるけど――地味だ。
 いろんな色合いの花が咲いてるとか、そういうのでもないもんね。やたらと背の高いのとか、逆に地面すれすれに枝が伸びているのとかいろいろあるけど、色合いはだいたい同じだ。

「つまらないのだ。その証拠に誰も歩いてないのだ」
 フラットルテの言葉は少なくとも後半は客観的事実だった。参拝者もここまでは来ないようだ。

「なんだか、どの松も元気がないですね。寿命なんですかね」
 ハルカラはエルフらしい着眼点をしていた。
「この調子だと、三十年後はかなり枯れてるかもですね。たくさん松を集めているのにもったいないです」
「松も、村が衰えてることがわかってテンションが低くなってるのかもね」

 フラタ村がこうならなくてよかった。滅びに向かっている村を見るのはしのびない。

「そうっス……。テンション低いんスよ……」

 ――と、どこからか声が聞こえてきた。

 ひと際大きな松の真ん前で、ぐったりしている女性がいた。
 服装的にどこかで見覚えがあるなと思った。
 あっ、精霊だ。世界精霊会議の時にこんなゆったりした服装の精霊が多くいた!
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