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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

地方の婚活パーティー?編

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235 青年会はある(青年がいるとは言ってない)

61000点を突破いたしました! ありがとうございます!
 松林の一角にそれっぽいテーブルを見つけた。
「タジン村青年会」という横断幕もかかっているから、あそこだろう。

 受付には六十歳ぐらいのおじさんとお爺さんの間ぐらいの人が座っていた。
 今でも現役の海の男なのか、それなりに精悍な顔つきではある。

 ナタリーさんが受付の人のところに行った。
「すいません、婚活パーティーに来たんですが!」

「おおっ! よう、来てくれたな~。助かったわ~! 今はつどいを後ろの松林の中にあるテーブルでやっとるから入っていってや~。血潮あふれる若人ばかりじゃからの~!」
 方言混じりで受付の人が言った。かなり喜んでいる。サクラとして参加する私はちょっと申し訳ない……。ずっと付き添いということにする手もあるけど……。

 ただ、ちょっと気になったことがあった。
 集いってなんだ……? 表現が古臭いぞ……。

 ナタリーさんが近くをきょろきょろ見回ったあと、「あの、集いってどこですか?」と尋ねた。

 たしかに近くではそれらしいものはない。
 一箇所、視界に入るテーブルではまさにご老人といった風情の人たちがチェスをしたり、お酒を飲んだりしている。

 私は嫌な予感がした。

「あのテーブルにいるのが『タジン村青年会』のメンバーたちじゃな~。みんな、ピチピチの独身じゃからよろしく頼むわ~!」

「いや、ご老齢の人しかいませんよ……? もしかしてジョークですか……?」
 ナタリーさんの目は笑っていない。

「いやいや、まさしく『タジン村青年会』じゃ。平均年齢は六十七歳じゃったかのう?」
 青年の範囲広すぎるだろ!

 テーブルのほうでは「お前さん、酒は飲まんのかい?」「いや~、医者から止められてもてな~」「お前さん、全身病気じゃからの~」「ははは~、そっちも腰を先日痛めておったじゃろ~」「正確には腰と首じゃ~」「年金でどこ行こうかの~」なんて話が聞こえてくる。

 なんだ、この病院の待合室で聞けそうな会話……。

「いや~、過疎化が進んできての~、村の外からも若い衆を集めんと、神殿の祭りも満足にやれんということで、今回のパーチーをな、開こうと思うたわけじゃ。やはり青年会の平均年齢も六十歳を超えたあたりから、つらくなってきての~。あんたみたいなべっぴんさんが来てくれると助かるわい」
 受付の人は笑っていたが、ナタリーさんは冷めた目をしていた。

「あの、二十代の人や、せめて三十代の人はいないんですか?」
「ワシが最年少じゃ。じゃから受付をさせられとるんじゃよ」

 ものには限度ってものがあるぞ……。
 嗚呼、地方あるある……。青年会に青年がいない問題……。

 くるっとナタリーさんが私たちのほうを向いた。
 笑顔だったので、かえって怖かった。

「私、フラタ村の周辺でいい人は探すことにします! 今回は皆さんにご迷惑おかけしてすいませんでした! ここの宿泊費とか食費とかは全部私が払いますから!」
「あっ、いいよ……。お金に困ってるわけでもないし……。それより観光でもしよっか……。ほら、海がきれいだし……。うん、そうしよう、そうしよう……」

 タジン村、危機感を持ったのは偉いけど、四十年ぐらい危機感を持つのが遅かったと思います……。かなり早めに移住者を増やす方策を立てないと、本当に廃村になるよ……。

 そのあと、私たちは海辺を散歩した。
 海岸の景色自体は悪くない。歩いてるヤドカリを見つけたフラットルテが「かっこいい!」とはしゃいでいた。かつて、婚活していた割にははしゃぎ方が子供だ。

 とはいえ、砂浜ぐらい、海沿いにはどこだってあるだろうし、観光資源としても弱いかな。陸路だと交通もかなり不便みたいだし、みんなもっと便利なところに引っ越していったんだろうな。

 人の声はない。ただ、波の音がするだけだ。
「なんだか歩いていると、もの悲しくなってきますね」
 ハルカラがつぶやいた。私もうなずく。
「人でいっぱいなところもがやがやしてて嫌だけど、いなすぎるのも、ちょっとね……」

 フラットルテは波のほうに走っていって、かなり満喫していた。順応が早いところは尊敬する。

「うぎゃー! クラゲに噛まれたのだ!」
「ああ、海にも危険な生物は多いから気をつけなきゃ……」
「お師匠様、やたらと大きなカニに足をはさまれました。それと、砂に埋まってたやけに鋭利な貝殻で足をケガしました」
「ハルカラはもっと気をつけて歩いてね!」

 砂浜の危険を一つずつ体感していかないでほしい……。

 そのあと、私たちはタジン村の市街地も歩いたが、そもそも市街地と言えるようなところはなかった。大半が空き家らしく、人通りはほぼない。
「まさか、ここまでとは……。なんで、今になって婚活をしようと考えたんだ……。もっと早く気づくでしょ……」

「高原の魔女様、問題意識を持ってた人はきっと、先に出ていったんですよ……。鈍感な人だけが残ってしまったんですよ……。こういう村ってほかにもあります……。ここまでひどいところは初めてですが……」
 ナタリーさんは終始疲れた顔をしている。
 ちょっと、予想の斜め上だった。

 その日は村で唯一の宿屋、『大漁屋』で泊まることになった。
 私以外にも若い女性客がいたが、みんな絶望した顔をしていた。
「これは大ハズレだったね……」「結婚でご利益ある神殿あるはずなのに、この有様って……」「旅費返してほしいわ……」

 みんなつらそうだな……。タジン村には酷だけど、これは挽回不可能だろう……。

 食堂に並んだ海の幸はなかなか悪くなかった。ものすごく久しぶりに食べた焼き魚もなつかしさを感じた。
 でも、それだけじゃなあ……。

「高原の魔女様、明日、どうします? 朝一で帰ります? 帰りますか」
 ナタリーさんがお通夜みたいな声で言った。

「せ、せっかくだし、松の精霊の神殿に行かない……? ほら、神殿自体は結婚にご利益あるみたいだし、祈って損はないかも……」
「じゃあ、そうしますか。地元がこれだけ寂れてる時点でご利益なんてお察しだと思いますけどね……」
 ああ、完全にナタリーさん、絶望しちゃってるぞ……。
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