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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

ユフフママの娘編

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228 幼女姉・幼女妹

 その日の夕方から、(小さい)私とサンドラはユフフママの娘として生活することになった。
 私とサンドラはダイニングの椅子に座っている。
「あれ、そういえば、サンドラ、土の中に入ったりしないんだね」
 この時間はもう地面に潜ってしまうことも多いんだけど。

「……ここ、湿気が多いでしょ……。水っぽすぎて、植物として暮らすと枯れるわ……」
 疲れた顔でサンドラが言った。そんな大変な事情があったのか!

「なので、この数日は室内ですごすわ。この体に栄養は貯め込んでるから一か月や二か月なら土に入らずにすむから」

 そっか。人間に見える部分はすべて根っこなんだな。そういう意味では動けるマンドラゴラはタフな生態なのかもしれない。

「じゃあ、今日は私がファルファやシャルシャの代わりにあなたに文字や計算を教えてあげるよ」
「そ、そう……? じゃあ、お願いするわ……」

 サンドラはあんまり感情表現をするタイプではないけど、その時、うれしいかどうかはだいたいわかるようになってきた。

「うふふ、ごはんの前にカップケーキを一つずつ焼いてみたの~。どうかしら~」
 そこにエプロン姿のユフフママがケーキを持ってやってきた。こちらもうれしそうだ。
「あっ、サンドラは食べられないんだよね。気持ちはありがたいんだけど……」
「そうよ。私はせいぜい水と、そんなに湿ってない土ぐらいでいいわ」
 サンドラがそっけなく言う。でも、申し訳ないなという気持ちはあるようだ。顔がわずかに曇った。

「あらら~。そうなの。ごめんなさいね。みんな、それぞれの生き方があるものね~」
 ユフフママは眉を下げて、しょんぼりした顔をしたが、それからサンドラをひょいっと抱き上げた。
 そして、ためらいなくハグ。
「ごめんね、サンドラ。ママ、わかってなくて。許してね~」
「ちょっと! 苦しいわよ! やめなさいよ……。で、でも……少しぐらいならいいかも……」

 最初は抵抗しているかに見えたサンドラの表情がやさしいものに変わってきた。
「ママか……。植物だからよくわからないけど、なんかほっとするような気もするわね。悪くないかも……」
 サンドラもママみをユフフママから感じている!

「アズサの時にはなかった安心感があるわね……。母の胸ってこういうのを言うのかしら……。母性って言うの?」
「どうせ、こっちはそんなにおっぱいないよ! 悪かったな!」
 やけに負けた気がする! 一度たりとも勝てると思ったことはないけど、無性に悔しい!

「サンドラ、私のこと、ママって呼んでいいのよ。むしろ、呼んで」
「ママ、やすらぐわ。それと、ママの水分を適度に吸収できて、ちょうどいいかも」
 植物として、したたりの精霊の水分を得てるのか!
 ある意味、利害関係としても正しい親子関係だ!
 そして、私は絶対真似できないからその時点で勝てない!

「じゃあ、ママはアズサのために夕ご飯作らないといけないから、それまでサンドラはお姉ちゃんのアズサと遊んでてね」
「うん、わかったわ」
「アズサ、サンドラのこと、お願いね」
 ユフフママの中ではサンドラが妹、私が姉という設定か。
「はーい。わかったよ。サンドラ、おままごとする?」
「おままごとか……。あなたがしたいならいいわよ」
 こういう時、「やるー!」って反応は絶対しないのがサンドラ流だ。

 おままごとか。ファルファとシャルシャが大人びていたせいで、実は私がやってあげたことがほとんどないんだよね。二人がするおままごとはリアル志向というか、専門的すぎて子供っぽくないし。ちょうどいいかも。

 けど、サンドラとのおままごとも、おかしかった。

「じゃあ、私は父親で町の靴屋さんをやるね」
「私は、杉の大木をやるわ」
「……いや、それ、どういう設定でどういうストーリーを作るの……?」
 両者、接点がないだろ。

「そこでいいお話を考えるのが姉の役目でしょ」
 えええっ? そういうものなの……?

「あ~、靴屋の仕事、今日も終わりだな。よーし、町はずれに生えてる杉の大木のところに行くか~」
「…………」
「うわ~、いつ見ても大きな杉だな~」
「…………」
「ねえ、何かしゃべってほしいんですけど……」
 おままごとでずっと無言で通されるの、ものすごく寂しいんだぞ。

「どうして普通の杉の巨木がしゃべるのよ。黙して語らず、ただじっとそこに突っ立っているのが杉というものでしょ。しゃべったらダイナシじゃない」
「そんなところに本格志向を持ち出さないでほしい……」

「あのさ、しゃべれる設定にしてくれない……? ひたすら一人で靴屋のおじさんを演じるの、シュールな感じになっちゃうから……」
「わかったわ。特別にしゃべれる設定にしてあげる」
 この妹役、偉そうだな……。
 母親視点だと気にならないけど、姉視点だとじわじわとムカついてくる。

「いやあ、杉さん、今日の調子はどうですか?」
「上のほうで、鳥が巣を作ったわね。水はまあまあね」
「杉さん、杉さん」
「来年もしっかり花粉飛ばすわよ」
「待って、待って。まだおかしい」
 私が中断を宣言する。

「杉がしゃべってるけど、靴屋のおじさんと会話してないよね? 一人で語ってるだけだよね?」
「杉が心を持っているとして、どうして人と会話したいと思うの? 私を基準にして考えすぎよ」
 サンドラ、おままごとする気ないだろ。

「……じゃあ、サンドラはパン屋さんをやって」
「杉の巨木のほうがいい」
「どんだけ杉の巨木が好きなの!?」

 こだわる要素がわからない!

「だって、杉って世界を見渡してるのかってぐらい背が高かったりするじゃない。あれはあこがれるでしょ?」
 基準がすべて植物……。

「おままごとはやめて、あなたにお勉強教えるね」
「そう。それでもいいわよ」
 妹をあやすのって難易度高いものなんだな……。

 そして、勉強の時間になった。
 開始してすぐにサンドラが以前よりずっと言葉を覚えているのがわかった。

「簡単な文章なら書けるわよ。『杉は背が高い』『真夏に降る水は助かる』『シダは湿ったところにいて、気持ち悪い』」
「あ、書けてる、書けてる。全部、植物に関するものだけど」
「実践的でしょ。すごいでしょ」

 実践的なのかは不明だけど、読み書きができるのはよいことだ。

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