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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

今年も喫茶店をやった編

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225 一緒に歌おう

 ステージに、例のアイドルっぽい服を着たペコラが上がってきた。

「こんにちは! ペコラです! 魔族と人間の架け橋になるべく、今日は踊り祭りに参加しました!」

 会場からは無邪気な「かわいー!」「ペコラちゃーん!」といった村の人の声がしてるけど、魔王だからね……? とんでもない存在が来てるからね?

「今日は、お祭り活性化のために、たくさんお店も出しました! 皆さん、満足していただけてますかー!?」

 またまた、会場からは「満足ー!」「そんなことができるなんて魔族の偉い人?」なんて声がする。無茶苦茶、偉い人です。むしろ、一番偉い人です。

「わたくしの将来の夢は魔王になることでーす!」

 いや、すでに魔王だろ! ピンポイントで私に脳内ツッコミを入れさせるためにやってるだろ!

 観客は「応援してるよー!」なんてお気楽なことを言っている。もう、すでに夢がかなっているので、残念ながらその応援は無駄に終わります……。

 なるほど……。途中ではぐれたようになったと思ったけど、このためだったのか……。

 いつのまにか、家族たちもペコラに声援を送っているのが見えた。とくに、娘二人がぴょんぴょんジャンプしているのが見えた。

「ペコラさーん! ファルファだよー! こっち見てー!」
「荒々しい初期衝動を感じる」

 この大きなステージに自然と引きつけられてきたらしい。

 その時、ペコラがにやにやとこっちに視線を送ってきたのがわかった。
 何かを仕掛けないと気が済まない性格だな。トラブルにならない範囲でなら、とことんやってよ。魔族側のことだから、私は一切関知しません。

「それじゃ、いきまーす!」
 ペコラの曲は相変わらず、魔族っぽく、血なまぐさいものだったが、曲調はいたってポップなので、ちょうど中和されて、なかなか悪くなかった。
 フラタ村および遠方から来たらしい、見慣れない顔の人たちも盛り上がっている。

 私の横に村長さんがやってきた。
「いやあ、高原の魔女様の喫茶店とそのお友達のおかげで、今年の踊り祭りは大盛況です。本当にありがとうございます!」
 深々とおじぎをする村長さん。喫茶店はいいとして、ペコラがやってることは、私は何もしてないのだけど……。

「村にも多くのお金が落ちて、財政的にもうるおいそうです。助かりますよ」

 まあ、村に活気が出るということは、村にお世話になっている身としては悪いことではないかな。あんまり特殊な発展を遂げてもらって、うるさくなっちゃうのも嫌だけど。

「魔族は私もコントロールできてない部分があるので、やりすぎなところがあったら、私に言ってください……。基本的に善良な連中なんですけど、人間と比べるとスケールがふたまわり――よんまわりぐらい大きいので……」
「承知いたしました。そこは村長として管理の意識も持って、ぬかりなくやりますので」
 ひとまず村長の言質はとったので、私の責任が何割か減った。でも、村長のパワーではどうしようもない部分も大きいので、私も目を光らせておこ――

「次は高原の魔女のお姉様もステージに立ちます!」
 さらっとペコラがステージ上で言った。

「えええええっ! 聞いてない! 何一つ聞いてない!」
 私は声を張り上げて抗議する!
「当然です。お姉様には何一つ言ってませんから」
 この妹分は、私を翻弄しすぎだろう……。もっとおしとやかにしてほしい。私がおしとやかかというと、全然そんなことはないけど……。

 周囲からも私に期待する視線が注がれている。これはもう逃げられない。

「ったく……。しょうがないなあ……」
 私はわざとらしくため息をついて、ステージに上がる。

 たいして高くはないステージだけど、いろんな人の顔が見える。家族はもちろん、ベルゼブブやリヴァイアサン姉妹、ブッスラーさんといった魔族グループやエノ、ポンデリも視界に入った。
 遠くでは、したたりの精霊のユフフママもさりげなく、手をぱたぱた振っていた。いつ、情報を仕入れてやってきたんだろう……。

「お姉様、どうですか? 祭りはこれぐらい先が読めないほうが面白いでしょう?」
「ペコラ、あなたは自由奔放って言葉を具現化したような存在だね。でも、これから何をしたらいいの?」
 別に演説を求められてるわけじゃないだろうけど、しゃべるぐらいしかできないよ。

「そこはもちろん、歌を歌ってもらいます!」
 本物のアイドルみたいにペコラは微笑む。私が生きてた頃の日本に連れていったら、ある程度ファンがついたかな。
「歌といっても、あなたの持ち歌はわからないんだけど」

「そこは心配いりませんよ。お姉様も知っている歌にしますから」
 そんな歌、ほぼないぞと思ったけど、答えはすぐに出た。

 ステージの袖から出てきたのは――
 アルミラージの吟遊詩人、ククだった。

「ご無沙汰してます、アズサさん」
 リュートを持ったまま、頭を下げるクク。長いウサ耳がぺたんと垂れる。

「お久しぶり。そっか、そういうことか」
 ククの歌なら、家で練習している時に何度も聞いているから、ある程度ならわかる。

「私の曲、一緒に歌っていただけますか?」
「うん。あなたの邪魔になっちゃうかもしれないけど、できるだけ上手に歌うよ」
 今のククは、とても落ち着きはらっていた。大きなステージをあれから何度も経験しただろうククにとって、村のお祭り会場なんて、まったく緊張するような規模ではない。

「では、いきますね」

 私とペコラはククのリュートと歌に合わせて、一緒に歌った。
 マイクはなくても、声はよく響いた。

 いつのまにか、観客のみんなも同じように歌っていた。

 会場が一つになったのを、私はたしかに感じ取った。

 二回前の踊り祭りの時はまだ一人で暮らしてたんだよなあ。
 レベルMAXになってたと偶然知ってから、私の生活は激変した。おそらく、このペースだとこれからもそれなりの激変が起こるだろう。

 でも、それまでの約三百年間とこの二年弱だったら、短いけど二年弱のほうが楽しみでいっぱいだと胸を張って言えるだろう。

 一人のスローライフもいいけど、みんなと過ごすスローライフはまた格別なのだ。

 これもスライムをこつこつ倒してきた結果なわけだから、スライムに足を向けて寝れないな。
 といっても、スライムはあらゆるところにいるから、どれかには足を向けることになるけどね。

 去年とはまた違った、とてもよい踊り祭りになりました。


踊り祭りのサプライズ編はこれにておしまいです。次回から新展開です!

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