挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

今年も喫茶店をやった編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

224/280

222 打ち上げ中

 最後のお客さんも夜七時過ぎには帰って、喫茶『魔女の家』の営業は無事に終了した。
 本当に喫茶店なのかという要素もあったけど、変な料理が出る喫茶店があってもいいだろう。

「「かんぱ~い!」」
 ダイニングでは狭すぎるので、私たちは外に設営されているテーブルを並べて、打ち上げをした。飲食ができないメンバーも一部にいるが、そこはまあ、乾杯をする儀式が大切ということで。

「いやあ、働いた後の酒は最高じゃのう」
 ベルゼブブはぐびぐび飲んでいる。ベルゼブブは有休をわざわざ使って、ここにやってきたわけで、なんというか物好きだなと思う。けど、休日に山に登る人とか日本でも珍しくなかったので、好きでやる分には問題ないのかもしれない。

「お店をするのっていいですね~。わたくし、『おいしくな~れ!』って三十回ぐらいやった気がします」
 この魔王、そのあたりはフランクだな。

 リヴァイアサン二人もおいしそうにお酒を飲んでいる。この二人はあくまで労働としてここに来ていた。
 ブッスラーさんはお金の枚数をやけに数えているけど、おそらくバイト代かなんかだろう。武道家だけど、仕事は選ばないのだ。

 ライカとフラットルテはお酒を飲みながら、ああだこうだ言っていた。やっぱり、この二人、仲いいだろ。
 残りの家族は寝ていた。
 なぜか眠る必要のないロザリーまで眠っている。ロザリーいわく、コップや料理を運ぶ労働をずっとやっていたら、疲労感があったとのこと。幽霊でも疲れることはあるんだな。

 ハルカラは今回はお酒を飲む前に早々と寝落ちしていた。早起きの人間が多かったので、その影響もあるようだ。娘二人とサンドラも三人揃って寝息を立てていた。

 多少疲れる部分もあるんだけど、やっぱり喫茶『魔女の家』はやるべきだな。

 人数が増えていくと、どんどん家族としての一体感が薄くなってくる。それで家族仲が悪くなったりはしないけど、こう……全員で何かをやるってことがしづらくなるのだ。
 たとえば家族旅行だって、三人家族と十人家族では難易度が変わってくるだろう。多人数になればなるほど、全員で何かをやるというのは難しい。
 それでも、たんに同じ建物に住んでるだけの関係になってしまうのは寂しい。

 そんな時に、みんなでお店をやろうっていうのは、ちょうどいいものかもしれない。日程も踊り祭りの前日にしておけば、踊り祭りが廃止されないかぎり、半永久的に年中行事のようにやっていける。

 私はリヴァイアサン姉妹のところに移動した。魔族たちの協力のおかげで大人数のお客さんを最後までさばくことができた。
「ありがとうね。もう趣味を超えて、一大プロジェクトになっちゃったけど、ご協力感謝します」

「いえ、これも仕事ですから。農相の秘書官は仕事の幅が広いんです」
 真面目にファートラが答えた。こんなの、どう考えても秘書官の仕事じゃないだろ。
「なんだか、学校生活を思い出します。楽しかったですよ~」
 そのヴァーニアの言葉で私は何かを悟った。

 そっか、こんなにみんなで集まって何かをするって、学校ぐらいでしかないんだ。
 社畜として生きてきた時、ただ、目の前の仕事とだけ格闘してきた。そりゃ、違う部署ならプロジェクトチームもあったかもしれないけど、それもたかが知れている。

 みんなの力を結集して、何かを完成させることって、長い間、やっていなかった。

「ああ、お祭りってそういうものだよね。お祭りだから、みんながそこに集まって、ぱーって盛り上がれるんだ」
 村の誰かが突然、何月何日に盛り上がろうと言っても、効果は薄いだろう。せいぜい友達が来て、終わりだ。
 それでも祭りなら、自然とみんながその日のために力を合わせて、しかも、しっかりと楽しもうとする。

 私は家族や友達の中でお祭りがしたかったんだ。

「ヴァーニア、少し賢くなれたよ」
「はい?」
 ヴァーニアはきょとんとしていた。

 ペコラはごろんと芝生の上に大の字になって寝ていた。魔王がとるべき態度じゃないけど、それでもペコラはとてもいい顔をしていた。
「あ~、たまにはこういう下々の者がやってる労働もいいものですね~」
「下々って言うな」

 私はペコラの横に腰を下ろす。
「お姉様、魔王って、肉体労働をすることなんてないじゃないですか。だけど、たまには体だって動かさないと、なまっちゃいますもん」
「それはそうかもね。命令をするだけの仕事って面白くないかも」

「なので、お姉様はまた何かイベントをやってください。わたくしもできるだけ企画しますから!」
 ペコラが起き上がって、私のほうに倒れてきた。じゃれてくる猫みたいなものだ。

「善処します。具体的には何も定まってないけど」
「そんなお役所言葉、ダメですよ~。妹に対して誓ってください!」

「はいはい、わかった、わかった」
 私はペコラの頭をぽすぽす叩いた。

「う~、なんだかいいようにあしらわれちゃってますね……。お姉様、最近余裕が出てきて、からかいがいがないです……」
 ペコラが文句を言ってるけど、からかおうとしてたのか。これは姉としておしおきしないといけないな。ぱんぱんと頭を軽く叩く。

「ふふふ~、お姉様とのスキンシップ~。お姉様にせっかんされてます~」
「あなた、その趣味はちょっと不気味だよ……」

 そこにベルゼブブが赤ら顔でやってきた。ベルゼブブはよく飲むけど、酒に強いからつぶれることはない。

「おうおう、すっかりできあがっておるのう」
「ベルゼブブ、あなたの上司が邪魔だからどうにかして」

「魔王様、明日もいろいろとやらねばならんこともありますから、そのへんにしといてはいかがですかな」

 ベルゼブブの言葉が気にかかった。
 明日もいろいろとやるって、どういうことだ……?
 無論、明日は踊り祭りなんだけど……。

「そうですね。明日のために今日はこれぐらいにしておきましょう。ふふふ~ん」
 ペコラはやっと立ち上がると、またスキップしていって、酔い覚まし用の水を飲んでいた。

 その日は魔族たちにもゲストハウスや空き部屋を使ってもらって、みんな高原の家で寝泊まりした。
 もはや、宿屋みたいになってきたな。

20161213_slaim_syoei01.jpg
GAノベルさんより発売中です! 5巻は2018年1月15日発売! 1巻は10刷を達成いたしました! ↑をクリックしていただければ紹介ページに飛びます!
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ