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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

今年も喫茶店をやった編

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221 素直になれない娘

 私はあわてて、洗い場のほうに戻った。

 すると、そこでは高速でお皿が洗われていた。
 それだけじゃない。洗ったお皿はすぐさま布巾で水分をふき取られ、きれいに並べられている。すぐに利用可能な状態になっている。

 そんなことを一人でこなしている達人がいる。
 元スライムのブッスラーさんだ。

「ああ、アズサさん、お疲れ様です! 洗い場はどれだけ食器がやってこようと、ブッスラー流皿洗い術で片付けていきますので!」
「もう、武道、関係ないだろ」
 なんでもブッスラー流ってつければいいと思ってないか。

「いや~、これでも長らくお皿は洗ってきたんで、なかなか自信があるんですよ」
 しゃべりながらも手を動かすブッスラーさん。見た感じ、無駄は一切ない。
 しかも、水をふき取られたお皿も新品かというほどにきれいに輝いている。短時間ながら、徹底した洗浄を行った結果だろう。
 どうやら、洗い場はブッスラーさん一人で大丈夫だろう。

「これはどうやって身につけたの? 滝行をしている時にその滝の勢いで思いついたとか?」
「かつて人間の体を維持できるようになったばかりの頃、お金がなくて困っていた時に編み出したんです」
 なんで、金欠が関係してくるんだ?

「ほら、お金もないのに料理屋さんに入って飲み食いするから当然払えないじゃないですか。なので、食べた金額の分だけ皿洗いをやって許してもらっていたんです」
「武道、本当に関係ないな!」
「武道で体を動かすと、体の維持にもかなりの食事量が必要になってくるんですよね。食べることをおろそかにしてはいい肉体も作れませんから」
 いいこと言ってるようだけど、いまいち心に響かないな。

「コツはお金のことなんて気にせず、堂々と飲み食いすることです。お金がないことを考えすぎると、態度に出ます。すると、事前にこいつ、お金ないんじゃないかとか怪しまれてしまって、料理を出してもらえなくなります。食べてしまえば、こっちのものです。払う金はないから皿を洗いますって言えば、向こうも折れます」
「常習犯か」
 ほとんど居直りじゃないか。

 それでも、これでそれぞれのラインが機能するようにはなった。

 厨房にハルカラがやってくる。
「ライカさん、そろそろ交代の時間です。ホールをお願いします」
「わ、わかりました。精一杯やろうと、お、思います……」
 ライカはどことなく、落ち着かない様子だ。ちょっと、確認してみたほうがいいかな。

 理由はすぐにわかった。

 ライカがホールに出た途端、お客さんの視線が一斉に集まった。
 その程度ではすまなかった。屋外のほうに出ると、ライカ目当てでお客さんが立ち上がったり、果てはライカのほうに近づいていったりする。
「これが、あの美少女か!」「噂には聞いていたが……」「ライカちゃん、ライカちゃん、こっち向いてー!」「やった! 本物を見れたっ!」「かわいい、かわいい!」

 有名な外タレが来たみたいな反応になってる!

「や、やめてください……。我はか、かわいくなんてありませんから……。皆さんの勘違いですよ……」
 さすがにそんなことはないけどね。ライカはかわいいよ。すっごくかわいいよ。
 しかも、そうやって恥ずかしそうにするところがもっとかわいさを上げているのだ。

 とはいえ、ここまでエスカレートするとは……。

「王都で世界一の美少女がここにいると聞いてきたが、本当だった」「これは記録に残さないといけませんな」「王国美少女コンテストに出るべきだ」
 だんだんと大事になってきているな……。

 なんというか、ライカ、ごめん……。一日だけのことだから耐えて……。

 一部に問題はあったものの、喫茶『魔女の家』自体は軌道に乗った。
 あとは閉店までこつこつとやるだけだ。列は相変わらずできているけど、

「こちらに代表者の方のお名前と人数をお書きください。お呼びした時にいらっしゃらない場合は先に次のお客様をご案内することがありますので、ご了承ください」

 と、ファートラが適切に列の整理をしているので、トラブルも起きてはいない。

 私もテーブル拭きとか全体が見回せる仕事をしながら、気を配っていたけど、もうあとは放っておいても大丈夫だろう。
 自分の休憩時間になったので、ダイニングに戻る。こちらは喫茶店では使用してない。あくまでも家族の憩いの空間だ。

 ダイニングではまだサンドラが床にごろんと転がって、本を読んでいる。ちゃんと椅子に座ったほうがいいけど、まだ子供だし、植物だし、固いことは言わなくてもいいか。
「何、休憩?」とサンドラがこちらに視線を移す。
「そうだよ。滞りなく動いてるから、あとはこれを閉店まで繰り返すだけだね」

 年に一回ならいいけど、これを営業日はずっとやってる飲食店は本当に大変だろうな。とても私にはできないや。

 ただ、私の返答を聞いたサンドラが少し寂しそうな顔をしたように見えた。
「そっか。なんだかんだで上手にやれてるのね。なかなかすごいじゃない」

 ああ、これはもしかすると、そういうことかな。
 私は自分の部屋に行くと、事前に用意をしていたものを、そっと持って、ダイニングに戻ってきた。

「サンドラ、よかったら少しだけホールのほう、手伝ってくれる? そしたらほかの人も休憩に入りやすくなって助かるんだけど」
 さっと、サンドラが顔を上げた。その表情を見ても、興味があるのはすぐにわかった。
 やっぱり、この子、ツンデレというか、自分の気持ちを素直に表現するのが苦手だな。これからもフォローしていかなくちゃ。

 だけど、またサンドラの表情は冷めた、いつものそっけないものになる。
「でも、給仕服とかないんでしょ。じゃあ、私だけ変な感じになっちゃうじゃない。いかにも臨時の人に見えるし……」

 これは、給仕服を着たかったんだな。
 いやあ、用意しておいてよかった。

 私はサンドラ用のミニサイズの給仕服をサンドラの前に出す。
「じゃじゃ~ん! ちゃんとフラットルテの服を注文する時に作っておいたんだよ!」

 サンドラの目が輝いたのがわかった。こういう時だけサンドラは純真な子供の顔になる。
「じゃ、じゃあ……手伝ってあげてもいいわよ……」
「うん、ぜひお願い!」

 サンドラが出てくると、またお客さんから「なんだ、あの幼女は!」「期待のニューフェイスだ!」といった声がかかった。全体的にノリのいい人が多い店だ……。

 サンドラは慣れない手つきではあったけど、任された仕事を一生懸命にやっていた。
 見ていたお客さんまで応援していたぐらいだ。

 うん、今年の喫茶『魔女の家』も大成功だね。
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