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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

今年も喫茶店をやった編

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219 喫茶『魔族の家』?

 そして、日程もじわじわと近づいてきて、今年も喫茶『魔女の家』の本格的な準備がはじまった。
 しかし、本格的すぎた。

 高原にずらっと、数えられないぐらいのテーブルが並んでいる。
 最低でも二十とかではない。三桁の大台に届いているかもしれない。

 なお、こんな数、どこから用意したかというと――

 私たちの頭上には、巨大なリヴァイアサンが浮揚している。
 そう、本来のリヴァイアサン状態になったヴァーニアの上に、大量のテーブルと椅子などの備品を載せて、ヴァンゼルド城から運んできたのだ。
 そのせいで、すでにスケールがおかしなことになっている。

 なお、設営に関しては、ファートラとベルゼブブが指示を出して、職員だかバイトだか知らないけど魔族たちにやらせていた。

「そのテーブル、場所がずれています。もう少し、奥にやってください」
「脚がぐらぐらする椅子があったら、持ってくるのじゃ。予備に差し替えるからのう」

 このあたりは偉い魔族らしく、指示を出し慣れている。私たちはテーブルが高原いっぱいに広がっていく様子を見ているだけでよかった。

 なんか、デパート屋上のビアガーデンを思い出すな……。もはや、そういうスケールなんだよね……。いったい、何人を収容するつもりでいるんだ……。
 高原のおしゃれな喫茶店という空気はみじんもない。これはこれでいいんだけど、手打ちそばの店を志してたのに、いつのまにか餃子が名物のチェーン店になっちゃったような、コンセプトの違いを覚える。

「なんだか、騒がしいわね……。おちおち光合成もできないじゃない……」
 土の中を移動して、私の横にサンドラが顔を出した。

「ごめんね。予想より大幅に規模の変更があったの」
「ふうん。まあ、年に一回のことみたいだし、いいけどね」
 仏頂面でサンドラは設営を見ていたけど、やがて、どこかに行ってしまった。
 何か言いたいことがありそうだったな。

 そこにライカとハルカラが戻ってきた。
「喫茶『魔女の家』の広告、近所の町には貼ってきましたよー!」
 二人には踊り祭り前日に、喫茶『魔女の家』をやるという広告を出しにいってもらっていた。

「こんな遠いところからは来ないだろうという遠方の町にも、言われたとおり一応貼りました。やはり、ちょっと範囲が広すぎるんじゃ……」
 ライカは疑問を感じていたようだけど、個人的にはこれぐらいでちょうどいいと読んでいる。
「あの席数でしょ。ガラガラなのも寂しいし、魔族のバックアップがあればなんだってできそうだし、とことんやってやろうよ」



 そして喫茶『魔女の家』当日――と言いたいところだけど、その前日からすでにおかしなことになっていた。
 ライカが偵察に行ったところ、フラタ村に人があふれていたらしい。
 まあ、踊り祭りの少し前から人が来るのは不思議なことじゃないし、『魔女の家』をやる前日、つまり、メインのお祭りの前々日にも出店が並んだりはする。

 しかし、それにしても従来の規模ではないのだ。
 そんなに部屋数があるわけでもない宿はパンク状態で廊下に寝る人まで出ているという。

 それだけじゃなくて、空き地で野宿をはじめる人間も多数にのぼっているとか。

 ハルカラいわく、ナスクーテの町にも、大型の馬車でやってくるような人がやたらと増えてきているらしい。
 なので、もう当日にどんなことになるか予想はついていた。

 当日の早朝五時。
 嫌な予感がして、早目に眠って、四時五十分に起きていた。ほかの家族にも早く寝てもらった。
 外に出て、その予感は的中した。

 すでに謎の列が形成されて、ずらっと終わりが見えないほど続いていた。
 このまま列の人数がさらに増えていったら、リアルにフラタ村まで伸びていくんじゃないだろうか……。

「こんなの、さばききれるのか……?」
 宣伝するべきではなかっただろうか? いや、そういう問題じゃないな。それだけでこんな異常な数の人が来るわけがない。去年行った人の口コミがとてつもない力を持ったとか、そういう次元のことだろう……。

「どうやら、すでに戦いははじまったようじゃのう」
 後ろからベルゼブブの声がした。もう、給仕服に着替えている。こちらも準備万端ということか。

「お任せください。私と妹は仕事ということにしてもらっていますので、ちゃんと働きます」
 ファートラもそこに出てきた。ああ、二人はさすがに仕事扱いなんだ……。有休じゃないんだ……。

「ヴァーニアは今から起こしてまいりますから、朝五時半からでも稼働できます。モーニングにも対応できます」
 いや、たしかに日本でも朝五時とか六時からやってる喫茶店はあって、毎日そこのモーニング食べてから出勤する人とかいたんだろうけど、また喫茶店のジャンルが微妙に違うんだよね……。

 そんな地元密着型みたいなのを目指してたんじゃないの……。おしゃれな喫茶店をやってみたかったの……。もはや店の規模がビアガーデンになってるからその方向性にはいけないけどね……。

「しかし、この数を待たせまくるのも困るしな……。しょうがない……。朝七時オープンぐらいにしておくかな……。休憩は随時とる形でやるね」
「うむ! 任せよ! 喫茶『魔族の家』を繁盛させてやるのじゃ!」

「ん……今なんて言った?」
「喫茶『魔族の家』……ああ、喫茶『魔女の家』じゃったな」
 無意識のうちに乗っ取られかけている!

「もう、いいや! とことんやっちゃえ! お客さんが満足してくれたら、それでよし!」

 私は腹を決めた。
 ひとまず、まだ眠っている家族は六時に起こす。とはいえ、六時にはフラットルテ以外、全員が起きていた。サンドラまでダイニングに出てきている。

「まあ、せいぜい頑張りなさいよ。私は動物のあくせくする姿を見てるから」
「植物から見ると、全部動物ってくくりなんだね……」
「今日はかまってもらえなくても文句言わないから、しっかりやりなさい」
 そう言って、子供向けの本をサンドラは読みだした。言葉は偉そうだけど、エールを送ってくれる気持ちにウソはないんだな。

 さあ、喫茶『魔女の家』、今年も開幕だ!
15日に発売した4巻がオリコン文芸書ランキングの9位に入りました! (活動報告にも書きました)
本当にありがとうございます!

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