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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

エルフが来た編

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21 二人目の弟子

エルフ娘と森に行きます。
 翌日。
 私はかなり朝早くから起きた。

 まず、やったことは家の周囲の結界張り。

 ここまでハルカラさんが逃げてこれたということは足はついてない可能性が高いが、念のため守りを固めておく。

「悪しき心を持つ者よ、この網にかかりて自由を奪われるがよい。この網は意思持つごとく、お前に降りかかるだろう……ハッ! ――――よし、悪くない出来だ」

 結界は村に張った時と比べるとかなり楽にできた。なにせ、規模が全然違うからな。

 それから、家族全員分の昼食用サンドウィッチを作る。

 理由は私が食事当番だからだ。ちなみに朝食は昨日、ライカが作った残りものを転用、もといアレンジして対応する。

 前日のものを利用するのは当番ルールとしてアリだ。ただし、新たに何も作らないのも禁止。なので、雑穀と薬草のスープはサンドウィッチと同時並行で作っている。

 これ、健康にはいいし、顔のむくみ対策にもなる。最初は薬草の味が独特だったので、娘二人が嫌がっていたが、だんだんと慣れてきた。

 パクチーが最初は苦手だったのに少しずつはまっていく人がいるが、薬草もこういうタイプの物が多い。癖は強いが、癖になる味でもあるのだ。

 ちなみに不老不死だろうと精霊だろうと食生活がひどいと体調は崩すので、健康面を気づかうのは大事だ。

 さて、なんで朝から昼食も作るかというと、午前から出かけるからだ。

 薬草採取である。薬草採取自体は仕事でやっているけど今日はちょっと特別だ。

 ちょうど、薬草に詳しいエルフさんもやってきたので、一緒に薬でも作ろうかと思ったのだ。
 それに弟子ということになるのに、弟子がどういう薬を作るかとか、まったく知らないのも不自然だし。

 やがてライカが起床して、そのあとにシャルシャとファルファが目をこすりながらやってくる。たいてい、いつもシャルシャが先に起きて、姉のファルファを起こしているらしい。

「おはようございます……」

 最後にハルカラさんが起きてきた。ちょうど、食事の準備がだいたいできたところだ。
 私含めて、みんなが「おはよう」「おはようございます」の声をどんどんかけていく。

「久しぶりにまともなベッドで眠れて、とてもうれしかったです……感謝します……」

「はいはい、まあ、こういうのはお互い様です。あ、そうだ、今日からは私の弟子という設定を徹底してもらいますからね。呼び方もこっちはタメ口にするけど、そのつもりでいてね」

「あっ、はい、どうぞ、どうぞ。呼び捨てでも何でもどうぞ、お師匠様!」

「お師匠様か……。間違ってはないからいいか」

 そしてハルカラさんも席についての食事になった。

 しばらくすると、ハルカラさんはなぜか、「うっ、うっ……」と泣いていた。

「あの、どうかしましたか……?」

「仕事が忙しい時は外食続き、追われる身になってからは森の木の実を拾って飢えをしのいだ日々もありました……。こうやって、あたたかい食卓を囲めるのはすごく久しぶりなんです……」

 泣いている最中、ハルカラさんは少し猫背になったが、その背中は苦労人の背中だった。

 ああ、こういう人、日本でも見たことがある……。
 ビジネスで成功したけど、やがて没落して、苦しい生活に陥る人……。

 ハルカラさんの場合はビジネスに失敗したというのとはちょっと違うが、人生転落中であることは確実だ。

 誰かが手を差し伸べてあげないといけないよね。でないと、この人、死ぬよね。
 やれる範囲で人助けしてあげよう。

「ハルカラさん、元気出して~」
 わざわざファルファがハルカラさんの席の後ろまでまわりこんでぽんぽん肩を叩いていた。なんて、いい子なんだ。

「あぁ、ファルファちゃんでしたっけ? ありがとうございます……」

 ハルカラさんが礼を言った。

「こんなことなら業務拡大なんてするべきじゃなかったんです……。細々と自分の住んでた州ぐらいで薬を売っていれば……」

 業務拡大が裏目に出た――やっぱり企業の失敗事例っぽさがある。

「はいはい、くよくよしててもしょうがないし、これからのことを考えよう」

 私は、ぱんぱん、と手を叩く。

「食事が終わったら、このへんの森に薬草を取りに出かけるから。ハルカラの腕を見せてちょうだい。ほかの三人は留守番ね」

「わ、わかりました、お師匠様!」

「ちなみに、昼ごはんはサンドウィッチ作ってるから、ライカたちはそれを食べてて」

「わかりました、アズサ様。あと、こちらはこちらでベルゼブブが何者なのか調べておきますね」

「うん、お願い」

 準備はできるだけしておいたほうがいい。

「それと、いくらなんでもまだ大丈夫だろうけど、もしも敵が来たらファルファとシャルシャはお願いね」

「はい、我の命に代えても!」

「いや、ライカも命は守ってね。なんかあったら私の居場所を教えていいから」

 私がこの世界で暮らして三百年、上級モンスター(そういうのは呼び方としては魔族と言うらしい)が残虐行為を人間に対してやったなんて話はないので、無差別に攻撃してくることはなさそうだが、守りは堅いほうが絶対にいい。

「あまり楽観論になるのはよくないですが、ハルカラさんの関係者などが襲われたという話も聞こえていないので、娘さんお二人までは狙われない可能性が高いです」

「うん、本当にそうだといいね」

 打てる手はひとまず打ったので、私とハルカラは森に向けて出発した。

 ちなみにハルカラの服はやっぱりぱっつんぱっつんだ。

「あのさ……ハルカラって発育がいいって言われたことない……?」

 あまり直截的な表現だとセクハラに当たる気がしたので、無難な表現にした。
 聞きづらいことだからこそ、早目に聞いてしまおうという作戦。

「ああ、ぶっちゃけ、年に七百五十回ぐらい、いやらしい体しやがってとか言われてましたねー」

「一日二回のペース!」

「わたしたちのいた州のエルフってスレンダーな人が多いので、余計に目立っちゃって。もう、慣れちゃいましたけどねー。だから、あまりわたしには気をつかわないでくださいねー」

「そうなんだ……」

「体ばかり見られるのは癪だったんで、それで調薬師として実績出そうと努力したんです。たしかにたくさん薬が売れるまでになりましたけど、それが空回りしてベルゼブブに追われてますー。とほほ……」

 人生ってままならないものだな……。

 そんな話をしていたら、森に到着した。
次回は森で薬草採取をやります。

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