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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

学校に通ってみた編

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215 スペックが過剰すぎる

 今度はファルファがボールを受け取った。

「えーい!」
 ――ブウゥゥン!

 剛速球が近くの女子の足に直撃した。
 跳ね返って、またファルファのところにボールが戻ってきた。それをまた拾って、投げる。
 今度は奥にいた男子に当たる。ボールが速いので回避が間に合わないらしい。

「怖い!」「スピード速すぎる!」「痛いよー!」
 相手チームが片っ端から泣かされちゃってる!

 味方チームのほうは「すごいよ!」と言ってる子と「あの姉妹、ヤバいんじゃね……」と怯えてる子が半々ぐらいだった。
 みんな、だんだんとこの双子のポテンシャルが異常だとはっきり認識しだしている。

 シャルシャも先に問題点に気づいたらしい。
「姉さん、このままではシャルシャたちは畏怖される存在になってしまう。それではまるで邪神……。ここは加減を行うべきかも……」

「でも、全力でやらないと面白くないよ。それに手を抜いたら失礼だよ」
 ファルファの意見も正しいが、手を抜かないとゲームにならないんだよね……。

「これは体験入学のまま、終了になりそうね」
 後方にいたサンドラがぼそっと言った。
 私もそう思います。

 もはや同じ十歳だからいいでしょと言って、十歳のクマやトラを放り込んだような状態になっている。ていうか、年齢的にも子供ではないのでその時点でもチートくさい……。

 結局、ドッジボールの試合はファルファとシャルシャの無双で一瞬で終わってしまったので、もう一戦やることになった。
 敵チームも双子をどうするか協議しているようだ。

「あの二人にボールを取られたら終わりだ」「まず、ほかの奴を片付けよう」「そしたらそのうちに休み時間が終わる。時間切れで人数の多いこちらの勝ちになる」

 時間切れまで考慮したうえでの作戦か。なかなか小賢しいけど、それぐらい勝ちにこだわらないと勝てないからやむをえない。

 その相手チームの作戦は最初、上手く機能したようで、なかなか双子にボールは回らなかった。

 で、そうなると、狙われるのは見た目も小さいサンドラだ。
「喰らえ!」
 敵チームの外野が近くにいたサンドラにボールを当てにいく。あっ、その子はか弱いからあんまり狙わないであげて!

 しかし、またしても子供たちにとって、想定外のことが起きた。

「ひゃっ! 危ないっ!」
 サンドラが土の中に潜って、回避した。
 グラウンドの割と硬そうな地面でもすぐに入り込めるらしい。
 それはまあいいんだけど、無茶苦茶目立つ……。

「えええ! 地面に入っちゃった!」「それ、どうやるの!?」「すげー! やりたい、やりたい!」
 もう、試合はそっちのけになっちゃった!

「こんなの簡単よ。地面にも必ずもろいところがあるの。そこにさっと根を突っ込むの。そしたら、さくさく入っていけるから」
 髪の毛に当たる葉っぱの部分だけ出したまま、サンドラが説明した。いや、簡単なわけないから。地面のもろいところとか、あなたぐらいしかわからないから。

「考えるんじゃないわ。感じるのよ。土を感じなさい。慣れれば誰でもできるから」
 どうやって慣れるんだ。それと、あなた以外できる存在、三百年生きてきたけど見たことないから。

 そんなところで休み時間は終わって、また授業になった。

 そこから先の授業でも先生が苦しめられていた。
「シャルシャはこの本に書いてある本質という概念に異議を唱えたい。これは所詮、定義上の存在だけでしかなく、そういったものを論じるのはある種の誤謬なのではないかと思う」
「ええと……シャルシャちゃん、先生もそういう話はよくわからないなあ……」
 シャルシャ、初等教育の先生は哲学談義みたいなの、できないよ……。

 無数のトラブルを引き起こしたまま、その日の体験入学はおしまいとなりました。
「どう? 楽しかった?」
「ファルファはすっごく楽しかったよー!」
「シャルシャはまるで自分が異邦の存在であるかのような断絶感を稀に味わうことがあった。だが、おおむね興味深い体験であったと評価する」
 どうやらシャルシャとしては浮いてる時があるとなんとなくわかったらしい。

「サンドラはどうだった?」
「悪くはなかったけど……入学許可、降りないんじゃないかしら」
 この子が一番よく状況が見えてるな……。



 後日、セナール塾に母親として行った。
「お子さんは大変聡明ですので……その……うちで教えられる範囲をすでに逸脱しております……。もっとほかの本格的な場で学ぶべきかと……」
 塾の人に申し訳なさそうに言われた。
「デスヨネー」

 チートな子供を連れていってご迷惑おかけしました。
「サンドラちゃんだけならうちで面倒を見ることはできますが……どうしますか……?」
 私は五秒ほど考えたが――
「……むしろ、家で双子に習わせます」
「それがよろしいかと……」

 こうして、我が家の子供たちが学校に通うのは無理ということがはっきりしたのだった。
 それはそれでいいや。我が家でしっかりと育てることにしよう。

 二人はがっかりするかと思ったけど、すんなり受け入れてくれた。
「人が多いのはよかったけど、勉強はあんまり面白くないんだよね」
「講義のレベルとしてはさほど高くなかった。やはり限界がある」

「二人には今度からおうちでサンドラにお勉強を教えてあげてね。人に教えるのも大切な勉強だよ」
「はーい!」「心得た」

 サンドラが「やれやれ。元の鞘に収まったわね」と笑っていた。
「そうそう。こんな辺鄙な高原に住んでるんだから、わざわざ町の学校まで通う必要もないわよ。ここで勉強したらいいのよ」
「サンドラ、偉そうだけど、あなた、まだちょくちょく文字の向きとか逆になってるからね」
「しょ、しょうがないじゃない! 植物が文字書く状況なんてないんだから!」

 サンドラもやる気ではあるようだから、そのうちそこそこの学力になるだろう。

 ただ、本音を言うと、私はほっとしていた。
 学校に通わせたら、我が子と過ごす時間が減っちゃうからね。
 少なくとも、私は子離れは当分できそうにない。

「ところで、サンドラ」
 一つ気になることがあった。
「あなたに、毎日『ありがとう』って言ったり音楽聞かせたりすると、よく成長したりするの?」
 あの、クラシックを聞かせると野菜がおいしくなる的な話が本当なのか?

「知らないわよ……。少なくとも毎日、ことわざとか聞かされたら教養は身につくんじゃないの……?」
 まあ、記憶力あるものね……。


体験入学編はこれにておしまいです。次回から新展開です!
そして活動報告のほうで、15日発売の4巻のサイン本設置店について書きました(といっても編集さんのツイート先を貼っただけですが……)。興味ある方はご参考までにご利用ください!

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