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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

学校に通ってみた編

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212 サンドラの教育

 年齢と見た目が一致しないのでややこしいが、この家で一番幼いのは、サンドラである。
 ファルファやシャルシャよりもさらに幼い。小一とか小二といった印象だ。
 それと比べるとファルファとシャルシャは小四か小五ぐらいの見た目である。
 このわずか(見た目では)数年の差が本当に大きい。

 何が大きいかというと、ファルファとシャルシャが本格的にお姉ちゃんとして振る舞いだしたのだ。

 その日もテーブルで娘二人がサンドラに文字を教えていた。
「こ、これでいいの……?」
「あっ、逆だよ。反時計回りじゃなくて、時計回りに書くんだよ」
「ええと、こう?」
「そうだよ! じゃあ、十回練習してみようね!」
「えっ、次の文字に進ませなさいよ」
「何度も書くと忘れないんだよ!」
 ちなみに、シャルシャはその様子を見ながら、こくこくとうなずいたりしているだけで、何もしゃべらない。すべてを見守る老師範みたいな空気を出している。
 これは二人で教えていると言うのか怪しいが……教える場には参加しているので二人で教えていると定義することにする。

「うん、よくできましたー! じゃあ、『りんご』って書いてみようね」
「舐めないでよ。それぐらい、私だってできるわ。ほら!」
 シャルシャが首を横に振った。
「それだと『りんが』になってるよ」
「ちっ! しくじったわ! 次は間違えないからね……」

 ファルファが教育者として見事に活躍している。実に素晴らしい。
 サンドラは大半を土の中で生活していたので、文字も読めないままだった。このままでは生活に支障があるので、文字は覚えてもらわないといけなかったのだけど、その担当はいつのまにやらファルファになっていた。
 やはり、見た目の年が近いほうがサンドラも抵抗がないらしく、それを素直に受け入れていた。

「古人は言った。ダルク街道は五十日かかる。されど、すべては同じ一歩からはじまる。こつこつと積み上げていけば、いつか天にも届く塔になる。学問とはそういうもの」
 シャルシャがいきなり意識高い発言をしたが、とくにファルファもサンドラも聞かずに、文字の勉強をしていた。

「なんか、娘が増えたみたいでいい感じかも。サンドラは夜は土の中に入ってるけど」
 そういう発言はサンドラにはきっちり聞こえているらしい。耳がぴくぴくと動いた。

「別に私はアズサの子供じゃないわよ。私は私、あなたは植物じゃないでしょ。変なこと言わないで」
 そういう反抗期的なところも、これはこれでいい。

 これまでファルファとシャルシャを育ててきたが、二人ともいい子すぎた。ほんとに絵に描いたようないい子だった。しかも、頭もいい。娘も子供としてはある種のチート状態なのだ。

 しかし、それは手がかからないのでありがたくはあるが、子育てで少し苦労するのも母親としての醍醐味と言えば醍醐味なのではなかろうか。
 もちろん、夜泣きでまったく眠れませんとか、暴れて毎日、家の壁を破壊しますとか、そういうのはしんどいんだけどね……。

 そういう意味では、サンドラのちょっとはねっ返りなところは、ほどよい反抗期でよい。

 私は満足げにその様子を見たあとで、洗濯物の仕事に行った。
 ちなみに、竜巻の魔法を洗濯機代わりにしている。必要な水は今日はお風呂の残り湯を使う。洗剤は植物性のものを作っている。このあたりは魔女の領分だ。
 魔法はこういう時、本当に便利である。なにせ、大家族なので洗濯枚数も多い。手洗いはきつい。

「はい、本日の洗濯物完了」
 そして、洗濯物ができたら、外に干しに行く。

「むむむ……ハルカラの下着、ちょっと派手すぎるんじゃない……? 何用のシフトなの……? 逆にフラットルテはそもそも下着が見当たらないんだけど、まさか、面倒だから履かずにすごしたのか……? あとで問い詰めよう……」
 多少ひっかかるものがあるものの、干していたら、シャルシャが一人でやってきた。

「母さん、シャルシャに提言がある」
「ほう、提言とな」
 相変わらず、言葉が硬い。

「シャルシャにしても姉さんにしても、人の容姿からすれば子供と言えるもの。サンドラさんは言うにおよばず」
 サンドラはまさに幼女だが、年齢的には年上なのでさん付けである。
「そして、今までシャルシャと姉さんは二人で自主的に学んできた。そこにサンドラさんが加わったことで、新たな広がりも感じている」
「うん、そうだね。二人はいよいよお姉さんになったわけだもんね」

 ファルファはシャルシャの姉ではあったが、これは双子なのでちょっと例外的だった。だが、サンドラが入ったことで、真の姉的なふるまいをファルファも、これまで姉になったことがなかったシャルシャも求められることになったのだ。

「そこで思ったのだけど、もっと子供が多い環境に属することで、多くの発見をできるのではないかと。自分の人生に有益な結果をもたらすと確信している」
 言葉が子供離れしているので、翻訳が必要だが、つまり、やわらかくすると――

「シャルシャは学校に通いたいということでいいかな?」
「そう。大きな町には子供のための学び舎があるという」

 シャルシャは何度もうなずいていた。その顔にうっすら笑みが出ている。

 なるほど。小学校的な場所に通いたいということか。
 この世界にも小学校(的な場所)がないわけではない。もっとも、そういうのはシャルシャが言っているように、大きな町ぐらいにしかない。この州の中だと州都のヴィタメイにしか、そういう施設はないだろうな。

 そういうところに通うのは、町に住む庶民の子供だ。
 貴族階級の子供とかだと、専属の家庭教師がつく。その逆に、貧しい農家の子供とかだと、今度は働き手として幼いうちから頑張らないといけない。

 小学校というほど、勉強に特化したものじゃないし、義務教育という概念もない。でも、たんに子供を預かるだけというわけではなくて、最低限の教育は施しているらしい。文字が読めたほうが就職先も広がるし、なにかと便利だし。
 とにかく、小学校に近いものがあることはあるというわけだ。

「体験入学、できないだろうか?」
 シャルシャがはっきり言った。いつにも増して押しが強い。
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