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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

野菜革命編

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211 野菜革命

「まずはキャベツから食べてみなさい」
 偉そうに腕組みしてサンドラが言った。

「では、我が試してみましょうか」
 ライカはキャベツを一玉抱えると、ドラゴンらしく豪快にがぶっとかじった。
 しゃりしゃりしゃりという小気味よい音が響く。

 さあ、どうだ、どうだ?
 みんなの視線がライカに集中する。キャベツだけでここまで盛り上がるの、のんびりしている高原の家でも初のことだな……。

「お、おいしいっ!」
 ライカが目を見張った。
「とっても甘くて、このままで、いくらでもいけます! まるで果物です!」

「え、たかがキャベツで、その反応……? そこまでおいしいの?」
 私もおおげさすぎるんじゃないかと思いながら、食べてみた。

 ごめんなさい。
 これはおいしいです。

「なにこれ! 最高級のキャベツだよ! キャベツの王だよ! ジューシーだよ!」

 サンドラはその反応にご満悦なようだった。腕組みして壁にもたれている。
「どう? おいしいでしょう? これまでのキャベツが失敗作に思えるでしょう?」

 あんまり自分が作ってきたものを悪く言うのは気が引けるが、勝負にならないな……。

「次はニンジンも食べてみなさい。生でかじれば、その上質さがわかるわ」
 ニンジンを生で……。それはなかなか難易度の高い食べ方だ。日本に暮らしてた頃、意識高い系の店で野菜スティックみたいなのが出た時に、ニンジン入ってたけど、ぶっちゃけあまり好きではなかった。

「こちらも我からいきますね」
 ライカが物怖じせずにがぶりとかじる。

「すごいっ! 驚きの甘さです! 本当にニンジンなんですか!? 砂糖でもかけたみたいです!」
「またまた、おおげさだな~。ニンジンでしょ。生臭さが残ってたりするんじゃないの~?」
 自分でも、どうもフリっぽいなと思いつつ、生でニンジンをかじった。

「あれ……余裕で生でいける……。こ、こんなことがかつてあっただろうか……」
 ニンジンのくせにおいしい……。このニンジンならファルファとシャルシャもどんどん食べてくれるかもしれない!

「ざっと、こんなものよ。本物の野菜を見せてあげたわ」
 サンドラは枢機卿と王様を足して三倍したぐらい偉そうな顔をしていたが、今はどれだけ偉そうな顔をしていてもいいです。

 そして、生でここまでおいしいということは――
 調理をすればさらにおいしくなるということ!

「ライカ、一緒に料理を作ろう!」
「はい! 我も全力を尽くします!」

 そして、私とライカはひたすら料理を作った。
 テーマは野菜。メインも野菜。どれにも野菜を多めに入れた。

 そしてメインターゲットはあまり野菜が得意じゃない子供たち二人だ。

「さあ、どうぞ! ニンジンのフライにニンジンのポタージュ、あと、ニンジンもキャベツも使った野菜炒めだよ!」

 ファルファとシャルシャの反応はあまりよくなかった。
「うぇ~、お肉が全然入ってない……」
「これは大人の味……。子供であるシャルシャたちには早いと思う……」

 やはり、全然フォークもスプーンも持とうとしない。食べなくてもいいよと言ったら、あっさりその選択肢をとりそうだ。

「二人とも、だまされたと思って食べてみて。おいしいから!」
「母さん、シャルシャは母さんにだまされたという記憶をもって生きていきたくはない」
 そんな言い方されたら、ちょっと勧めづらいわ。

「少なくとも、私はおいしいと思ってるよ! ちゃんと私も、ライカも二人のために愛を込めたの! ね、ライカ?」
「はい、我ももっと肉がほしいなと思いましたが、今日は野菜のおいしさを引き出すのにこだわりました!」
 まあまあ肉が食べたいという本音が出てるけど、そこは許容しよう。

「ママに愛を込めたとまで言われちゃったら、ファルファも食べるしかないな……」
 まず、ニンジンのポタージュから口に入れるファルファ。
 だんだんとファルファの顔が輝きだした。

「あっ、おいしいよ! これなら食べられるよ!」
 よっしゃー! 今、私は大きな壁を乗り越えたよ!

 ファルファに釣られるように、シャルシャも料理を口に運んでいく。こちらの表情もすぐに花が開くように、ぱっと明るいものに変わった。
「シャルシャは今まで野菜というものの本質を見誤っていたのかもしれない……!」

 そうだよ、野菜は本当はとってもおいしいんだよ!

 二人は見事、野菜ばっかりの料理を完食した。これは母親冥利に尽きる! 娘が野菜を好きになったということは、私が母親としてステップアップしたことと同義なのだ!

 私はライカとアイコンタクトをとる。
「そして、しっかり野菜を食べた二人にはご褒美があります!」

 ライカが持ってきたのは、ニンジンをたくさん使ったキャロット・パウンドケーキだ。
「野菜はお菓子にも使えるんですよ! さあ、召し上がってください!」

 もう、そこから先は何の心配もいらなかった。二人はその甘いケーキをばくばく食べて、お代わりも所望した。もちろん、それにも応えてあげた。

 ただ、この家はもっとはるかに食べるのがいるんだよな。
「ご主人様、お代わり、もう一つお願いします!」
 無限に食べるのではないかという勢いで、フラットルテが四つ目のケーキを要求した。
「もう、十分に食べたでしょう。そろそろ我慢してください……」
 ライカが苦言を呈した。はっきり言わないとフラットルテにはわからないのだ……。

「え~? まだまだフラットルテは足りないのだ! とくに野菜はあまりおなかにたまらないから、いくらでも食べられるのだ!」
 本当にいくらでも食べそうなところが怖い。

「じゃあ、また明日作ります……。それでいいですね……」
「むしろ、フラットルテも作るから教えてくれ」
 たしかにフラットルテは料理の腕前は人並みにある。ここに来た直後からクッキーを作ってたぐらいだ。

「ふむ。わかりました。あなたにもひととおりのことをお伝えしましょう」
 おっ、ドラゴン二人も仲良くお料理ということになるなら、さらにいいことだぞ。

 改めて、サンドラにお礼を言おうとしたら――もう部屋にいない。
 外に出ると、菜園の土の上で、ごろんと横になっていた。

「何? もう寝ようとしてたんだけど」
「ありがとうね、サンドラ。あなたのおかげでみんなが笑顔になりそうだよ」
 私もその笑顔の一部をサンドラに向ける。

「わ、私もここにお世話になってはいるわけだからね……。ちょっとは役に立てるでしょ……」
 照れたようにサンドラは顔を背けて、ずぶずぶと土の中に入っていった。

 うん、サンドラ、あなたは間違いなく、この高原の家の一員だよ。
「今後ともよろしくね」

野菜革命編はこれにて終了です。次回から新展開です。
そしてスライム倒して300年既刊が全巻重版いたしました! ありがとうございます!
その記念として活動報告のほうに短いものですが、記念SSも掲載いたしました! よろしければそちらもご覧ください!

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