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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

野菜革命編

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210 おいしい野菜計画

「あの野菜、まずいわよ」

「え……?」
 変な声が出た。
 まさかの育ててる野菜へのダメ出し……。てっきり、野菜が栄養を摂るうえで邪魔だから減らせとかそういう要求かなと思ったけど、全然方向性の違うのが来た……。

「あなた、アズサ様に失礼ですよ。だいたい、あなたは植物だから野菜も食べないでしょう? まずいとかおいしいとかわからないはずです」
 私への批判と受け取ったライカがむっとした顔になる。

「食べなくてもわかるわよ。こっちも長く植物をやってるんだから、どういう野菜が人間においしいものとして食べられてるかだって知ってるわ。それで、ここの野菜はまずいって言ってるの。やっぱ、農家みたいなプロと比べると、味は落ちるものね。肥料が足りないせいかしら」

 なんだろう……。すごく敗北感がある……。

「あっ、お師匠様が沈んでます! サンドラさん、言いすぎですって!」
 ハルカラも私のフォローに回ってくれた。

「たしかに、お師匠様の野菜は全体的に水っぽいですし、ニンジンもあまり甘くなくて、娘さんたちが野菜を苦手にしてる理由にそういう点もありますけど、それでも愛情を込めて作っているんですよ!」
「おい! 愛情以外全否定してるぞ!」
 なんか、私が野菜を育てるの、ものすごく下手って流れになってるじゃない! 納得がいかない……。

「あの、お師匠様……別にお師匠様が悪いんじゃないです。そもそも家庭菜園のレベルって、そんなものだということです。そこは農家とは違うわけですから、そんな高品質なものを用意する必要はないんです。できなくて当たり前なんです」
 ハルカラが申し訳なさそうに言った。どうもリアルなダメ出しっぽいぞ……。

「ファルファは野菜自体苦手だから、よくわからない」
「姉さんに同じ。母さんのがことさらまずいとは思わない。野菜という概念がまずい」

 子供は野菜が好きじゃないのはデフォだとしても、菜園の野菜をおいしいと言ってくれる家族は皆無なのか……。大食いのフラットルテあたりからもフォローがない。
 いや、でも、思い返してみると、とてつもなくおいしいだなんて反応は自分含めても一度もないな。こんなもんだろって調子で妥協してたかも……。

 まさか、こんなところで菜園で作ってる野菜のクオリティが微妙という事実が発覚するとは……。

 でも、話はそこで終わりにはならなかった。

「私の力があれば、最高においしい野菜に変えてあげられるわよ」
 誇るでもなく、さらっとサンドラが言った。

「ほ、ほんと……?」
 私はサンドラの顔をじぃっとのぞき込んだ。

「当然でしょ。私は植物よ。どんな土や肥料を使えば、高品質のものにできるかだってわかるわよ」
 サンドラは自信満々で言った。そして、その発言はさらに加速する。

「たとえば、キャベツとニンジンがそろそろ収穫時期に近付いてきてるけど――そうね、二週間で劇的においしくしてみせるわ」
「二週間で!?」
 それ、もはや魔法の領域に近いと思うんだけど。

「まさか……。それは言い過ぎでしょう……。二週間で野菜がおいしくなったら苦労しませんよ」
 ライカは半信半疑といった感じだ。

「だったら、二週間でいかに野菜がおいしくなるの、見せてあげるわ。この高原の家で食べる料理のクオリティが一段階上がるわよ。きっと、びっくりするわよ。じゃ、私は菜園で寝に行ってくるわ」
 そう言い残してサンドラは家を出ていった。
 住んでるような存在だけど、わざわざ外に出ていくあたり、どこかシュールだな……。


 翌日、サンドラが私のところに来た。
 建物の中にはサンドラは勝手に入ってこれる。

「ひとまず、土と肥料を探したいから旅をしたいんだけど。私、地名とか知らないから方角で示すしかないのよね」
 なるほど。そういう知識はサンドラにはないんだな。
「じゃあ、ライカに乗せてもらって、探しに行ってきてよ」
「はい、我も二週間でどれだけ変わるか興味はあります。ぜひ、協力させてください」
 ライカも乗り気だ。ライカは料理にこだわりがあるし、野菜も例外じゃないんだろう。

「植物の基本は土よ。一にも二にも土。いい土を持ってきて、その栄養を私がしっかり野菜に吸わせてやれば、それはもう、劇的においしくなるわ。任せなさい」
「それじゃ、いろんな土地の土を見に行きますか。お手並み拝見ですよ」

 こんな調子で二人の土探しがはじまった。
 といっても、夕方には意気揚々と帰ってきた。

「うん、いい土が見つかったわ。あとはこの土を入れるだけね!」
「力仕事になるんで、フラットルテも手伝ってください」
 どうやら、土の入れ替え作業をすぐに行うらしい。

「よーし、フラットルテ様に任せろ! 肉体労働は得意なのだ!」
 ドラゴン二人の力で土の入れ替えはあっさりと終わった。女子しかいないが、力仕事には強いファミリーだと思う。

 土の準備ができたら、そこから先は待ちの期間だ。
 私やライカはじっくりと二週間を待つ。

 一方でサンドラは土の中に潜って、なにやら野菜に手を加えているようだった。応援でもしているのだろうか。そのあたりはまったくの謎だが、家族の一員を信じるとしよう。

「ああ、もう野菜に水はやらなくていいわよ。この子たちは強くなってるから、土の中の水をしっかり吸い取ってる。むしろ、これ以上あげると甘えちゃうからね。ここは厳しくするの」
 サンドラが言うとおりに私も野菜を育てた。育てたといっても、サンドラがやりたいようにやらせていただけだけど。

 ――そして、二週間後。
 いよいよ野菜を収穫する日が来た。
 キャベツとニンジンを私とライカが家の中に運び入れる。そのあと、水でざっと洗った。

 これがサンドラいわく、最高においしい野菜か。
 見た目はごく普通のキャベツとニンジンだ。

「まずはキャベツから食べてみなさい」
 偉そうに腕組みしてサンドラが言った。
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