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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

何かが生えていた編

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208 菜園で暮らします

 サンドラは少しばかりうつむいて、黙り込んでしまった。
 どうやら悩んでいるらしい。
 最低でも、ぜひともこの庭で暮らしたいというわけではないようだ。

「ここ、長く住んでたけど……あんまり太陽の光が強くないし……そんなに楽しくないのよね……。栄養効率も悪いし……」
 小声でサンドラはもごもごと言った。

「だから……違うところに移ってもいいかなとか思ってはいるんだけど……また魔女に捕まったら大変だし……安全なところがあればいいかなって……」

 ベルゼブブがちらっと私の顔を見た。
 それから、ハルカラも私のほうを見てきた。
 ああ、はいはい、わかりましたよ。わかりました。

 フラットルテは「いったい、何だ?」と言っていたので、全然わかってないらしい。フラットルテらしい。

「サンドラ、私の住んでる高原に来る? 菜園もあるし、そこに生えることはできるよ。部屋も余ってるから、そっちで暮らしてもいいし」
 一瞬、サンドラの目が輝いた。


 でも、サンドラはすぐにいぶかしむような表情になる。
「ほ、本当? そこって生えるのにいい環境なんでしょうね……?」
「マンドラゴラにとっていい環境かはわからないけど、土が合わないなら、また違うところに移動したらいいんじゃない? 試すだけならいいでしょ? 太陽の光はたくさん浴びれると思うよ」
「あなたがそう言うなら、じゃ、じゃあ……試してみようかしら……。つ、連れていきなさいよ……」
 話はついたな。

 考えてみれば、この子が私と出会わなければ、ずっと静かにベルゼブブの庭で暮らしていたわけで、ここは私が彼女の面倒を見るのが筋というものだろう。
 もしも彼女が悪い魔女に捕まって薬の材料にされちゃっても寝覚めが悪いし。私の庭に生えてる限りはそうそう魔女も収穫には来ないだろう。庭の範囲に結界を張るぐらいなら、どうとでもなるし。

「よし、サンドラ、あなたは今日から高原の家の一員だよ」
 私はサンドラの頭を撫でた。サンドラ側もまんざらでもなさそうだ。

「やったー! 家族が増えました!」
 ハルカラが喜んでいるが、これにはサンドラがむすっとした。
「家族って何よ! エルフはマンドラゴラじゃないでしょ! 私は庭に生えるだけだからね! がお~!」
「わっ……この子、お師匠様にしかなつかないんじゃ……」
 ハルカラが危惧を示したけど、うん、それはあるかもね……。
 で、ハルカラに敵意を示すなら、フラットルテにもそうなるわけで……。

「ご主人様、こいつは生意気なのだ。フラタ村を十五周ぐらいさせて根性叩き直したほうがいいのだ」
「あなたは関係ないでしょ! がお~!」
「むっ! ブルードラゴンの息をかけたら、お前なんて凍りつくんだぞ! 土だって凍るんだからな!」
「ひ、卑怯よ……。土を狙うのは反則だわ……」

 サンドラは私の後ろにこそこそ隠れた。このあたりはただの幼女だな。あと、普通に歩けるようだ。足じゃなくて根っこのはずだけど。
「土がないところだと逃げられない……」
 歩けても、土の中の移動よりは大変らしい。

「サンドラ、連れていくのには、一つだけ条件があります」
 私は人差し指を一本、ぴんと伸ばす。
「何よ……? 言ってみなさいよ……」

「高原の家で暮らしてるほかのメンバーと仲良くすること。たまのケンカはいいけど、ちゃんと仲直りすること」
 また、サンドラは黙り込んだ。都合が悪くなると、沈黙に移行するタイプだな。

「それが守れないなら連れていけないよ。あなたはずっと一人で生きてたかもしれないけど、この世界にはあなたみたいなのがものすごい数いるの。全員と仲良くなる必要まではないし、そんなこと不可能だけど、よく出会うメンバーとは仲良くなったほうが生活しやすいの」
 サンドラは悩んでいるようだけど、この悩みは自分が折れるのが恥ずかしいとか、そういう悩みだな。もう、答えは彼女の中で出ている。

「わかったわ……。仲良くなる努力はするから、連れて行ってよ……」
「よーし、よく言ったね」
 私はもう一度、サンドラの頭を撫でた。

「これからよろしくね、サンドラ」
「ええ、よろしく、アズサ……」
 その時のサンドラは微笑をたたえていた。
 こう見ると、本当に子供だな。草の部分も髪の毛にしか見えなくなってきた。

「しかし、なんで、一人で生きてたのにツンデレになるんですかね~?」
 ハルカラが余計なことを言った。
「別にデレてないし! とくにあなたにはデレたことなんてまったくないし! ツンデレって言葉の意味、誤解してるんじゃない!? がお~! がお~!」

「ひゃあ! 怒りを買ってしまいました! ていうか、なんで植物なのにツンデレって概念を理解してるんですか! どんな土の養分を吸収したんですか!」
 ハルカラのツッコミはまさしくそうなんだけど、とにかくあまり煽らないであげてほしい。素直じゃない子なんだから。

 ううむ、高原の家で仲良くやっていけるのだろうか……。
 到着する前から、前途多難な部分もあるな……。



 サンドラは本当に菜園の隅っこに植わることになった。
「うん、なかなか悪くないわ。さえぎるものがなくて日照時間も長そうだし」
 土の中から声が聞こえるので、ちょっとシュールだ。

「じゃあ、普段はそこにいるんだね? 家の中で生活しなくていいんだね?」
「ベッドなんかじゃ眠れないし、こっちでいいわ。気が向いた時に建物の中には行くから」

 こんな生活形態を家族と言っていいのか謎だけど、コミュニケーションはとれているから家族と考えよう。

 そこにじょうろを持ったファルファとシャルシャがやってきた。
「水やりの時間」
「サンドラさん、お水だよ~♪」

 シャルシャがじょうろで水をサンドラの上にかけた。

「あっ、気持ちいいわ。ほっとする。うん、ありがと、ありがと。ああ、もういいわ。それ以上かけると根腐れの原因になるから」
 植物側が適量を教えてくれるって、まあまあ便利だな。

「母さん、この植物、極めて貴重。観察しがいがある」
 シャルシャは観察日記みたいなのをつけようとしている。いや、アサガオじゃないからね……。

「ママ、家族が増えてうれしいよ!」
 ファルファは純真な反応を示している。

「うん、シャルシャもファルファみたいにサンドラを家族として扱ってね」
「わかった。ぬかりはなしない」
 こくりとシャルシャがうなずく。

「あっ、一日二回は水をちょうだいね。お願い」
 そしたら、またサンドラが植物寄りの発言をしてくる。

 様々な境界線が揺らいでる気がするけど、ある意味、この高原の家らしいと言えばらしいかな。
マンドラゴラ編はこれでおしまいです! 次回から新展開です!

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