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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

エルフが来た編

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20 モンスターには毒だった

高原の魔女にまた大きなトラブルの予感です……!
 私はエルフの娘さんを応接用の部屋に案内した。

 娘二人も、
「エルフさんだー!」
「やはり、耳が長い。ちなみに耳垢が乾いているのが南方のエルフ、濡れているのが北方のエルフ」
 などと言って、一緒に部屋に入ってきた。

 シャルシャはエルフや地理についても詳しそうだし、いてもらったほうがいいかな。

「じゃあ、まずは自己紹介からお願いします。こっちが高原の魔女って呼ばれてることはご存じみたいですから、名前だけ言っておきますね。魔女のアズサ・アイザワです」

「フラント州というところにある小さなエルフの国から来ました、ハルカラと申します……」

 フラント州ってちょうどシャルシャが読んでた歴史学の本に出てきてたな。

「わたし、近くにいろんな薬草があるという利点を生かして調薬師をしておりまして……早い話が、魔女さんと近い職業なんです」

 どっちも長く生きてて、植物などから薬を作る、たしかにほぼ同じだ。

 なお、この場合、魔女と調薬師という職業に厳密な違いはない。
 ぶっちゃけ、私が調薬師を名のっても問題はない。

 強いていえば、魔女は獣の臓器を乾燥させたものだとか血だとか、動物性のものを使う場合もある。
 エルフの調薬師なら、ほぼ植物系オンリーで、特殊な鉱石みたいな鉱物系のものすら使わないだろう。

 でも、私はあまりそういう動物性のものを使わないので、限りなく調薬師に近いと思う。

 そこにライカがハーブ茶を人数分出してくれた。娘二人分も入れて、四人分。料理中、お手数かけます。

「ご職業はわかりましたけど、調薬師がなんでベルゼブブに追われるんですかね」

 考えつく限り、接点がない。

「実はですね、自分で言うのもアレなんですけど、わたし、調薬師の中では結構稼いでいるほうでして、滋養強壮によく効くキノコや植物の成分を集めて、『栄養酒』というお酒を造っておりました」

 漢方薬を配合したお酒みたいなものだろうか。

「それで、この『栄養酒』、疲れている時に飲めば仕事を乗り切れると、各地で大評判になり、爆発的にヒットしました、一本五千ゴールドのものを集落のエルフ総出で大量生産して、それでも生産が追い付かないぐらいで、いや~、栄養酒御殿を集落に建てちゃいました」

 いや、自慢話はいいので、先へ行ってくれ。

「ちなみに、こういうものです」

 ハルカラさんが出したのは小さなサイズのビンだった。 

 これ、見た目も、話を聞いた感じも、栄養ドリンクじゃないのか……。
 こういうの、私もかつて常飲していたので、この話、耳が痛いな……。残業が長くなる時はぐびっと一本いってたわ……。

「評判が評判を呼んでけっこう遠方のほうまでこの『栄養酒』が売りに出されたんですね。それで、そこで本来、意図してない利用者が出てきてしまったんです……」

 そこでハルカラさんは頭を抱えた。

「上級魔族のベルゼブブという人、人というか魔族なんですかね……その方がこれを入手して飲んだらしいんですよ……」

「飲んだらどうなったんです?」

「これ、人間とかエルフはとにかくやる気が出て体力がみなぎるんですけど、モンスターにとってはそれが毒だったみたいで……服用後、十分後に倒れて、そのまま高熱を出して、危うく地獄に逝きかけたと……」

 上級魔族だから地獄に逝っても問題なさそうだが、そういうわけではないのか。

「つまり、それで息を吹き返したベルゼブブに恨みを買ったということですね」

「そうです! こんな毒薬を作った奴は絶対に殺してやると息巻いているみたいでして……魔族語での手配書が人間やエルフが住む土地にまでばらまかれていまして……」

 紙を一枚出されたが、魔族語はちょっと特殊なので、読めない。

 そこにシャルシャが顔を出してきた。

「お願いします、『栄養酒』という酒、作った女、捕まえる、豪華な、褒美、差し上げる――単語だけを読んでいくと、そんなことが書いてある」

 さすがにシャルシャは博識。たしかに手配書みたいだな。

「従業員はみんな怖くなって逃げて、それどころか、わたしが集落にいるのも禁じらまして……こうやって魔女さんのところまで来た次第なんです……。お願いですー! 助けてくださいー!」

 席を立って、私のところにひれ伏すハルカラさん。

「困っているのはわかりましたけど……これ、下手をすると魔族と全面戦争なんてことになりませんかね……?」

 いくらなんでも、そんなもの手に負えんぞ。

「ええとですね、エルフのほうでも、集落がある州のほうでも、その危険を感じ取っているようで、もうこのエルフの調薬師を差し出したほうがいいのではという意見になっていまして……居場所がないんです!」

 もう、帰る場所もないどころか犯罪者扱い……。不憫ふびんと言えば不憫だ。

「エルフのお姉さん、かわいそう……」
「帰るところがないって、見てるとつらいかな……」

 娘二人も共感を示していた。これで出ていってくれとは言えないな。娘の教育に悪い。

 しかし、この人のためにベルゼブブと戦うのはナシだ。
 娘やライカに危険が及んでは困るし、いくら私が強くても、個人はともかく組織や国家と戦うのは限界がある。

 これは落としどころを見つけるか。

 私は、ふう、とため息をついた。

「わかりました。あなたを助けましょう。ここまで来られたらどうしようもないです」

「ありがとうございますー!」

 そのまま、ハルカラさんは私に抱き着いてきた。この人、ボディタッチが過剰だな……。

「ただし、ベルゼブブと向かい合う気もないです。あなたはこの家で匿います。それでほとぼりが冷めるまで様子を見ましょう」

 この人がここにいるということが知られなければどうにかなるだろう。

「ということは、この建物から出られないということですか……?」

「いえ、そこまで徹底しなくてもいいかもしれませんけど、ばれると困りますから、偽名使ったりとか、変装したりとかはしましょう」

 幸い、この人は私と職業が近い。しかも長命のエルフだから私の家にいてもほとんど違和感はない。

 私は余っているローブを出してきた。

「外出する時はこのローブを着てください。あなたは高原の魔女アズサの弟子二人目です」

 こうして、私はお尋ね者を偽の弟子にすることにしたのだった。

 なお、私のサイズに合っていたローブは……。

「すいません、サイズがちょっと窮屈で……」

 胸やお尻がぱっつんぱっつんになっていて、かなり破廉恥だった。

 これ、村に行って、作ってもらうしかないな……。

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