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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

何かが生えていた編

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203 熱意に負けちゃった

53500点を突破しました! 本当にありがとうございます!
「そのしゃべるマンドラゴラを使って薬を作ること、これぞ魔女たる者、一度は夢見ることです! 私も魔女ですからもちろんいつか入手したいと思ってます!」

 ぐっと右手を握りしめるエノだった。

「なるほど、そういうものなんだ」
「むしろ、先輩は魔女なのにマンドラゴラにこだわりとか見せないんですね」
 エノに不思議そうな顔で見られた。
「だって、私はのんびり暮らすのが目的だからね。魔女を極めるって目標そのものがないし」

 もしも魔女として大成することを考えてるなら、呑気にスライムを三百年も倒していないでしょ。

「けど、しゃべるマンドラゴラなんて、どこにいるの? 樹齢三百年の木なら、全然ありうるし、三百歳のマンドラゴラ自体はありそうだけどさ」
「どこにいるかわかったら、苦労しませんよ。一種の伝説みたいなものですかね。なにせ、そのマンドラゴラのほうが移動できるんで、逃げられちゃうんですよ。ふだんは地中にいるでしょうし、生息場所を特定するだけでも激ムズです」

 それもそうか。いわば、とんの術を常に使ってる忍者みたいなものか。そりゃ、防犯カメラがある世界でもないし、見つけられるほうが奇跡だよね。

「移動する時は特徴的で、その進んだ跡が畑のうねみたいになるらしいんですけどね」
「ふうん。そんな植物もいるんだね――――あれ?」

 私は、ふっと視線を天井のほうに向ける。天井が気になるのではなく、私が回想する時の癖だ。

「なんか、そういうの、最近見た気がするぞ……」
「なんですって!?」

 すぐさま、ぎゅっと、エノに手を取られて、ぶんぶん振られた。
「どこですか! どこで見たんですか? 教えてください!」
「待って、待って! 何かの勘違いかもしれないし、あんまり期待値を上げないで!」
 がっかりさせるのは申し訳ないので、事前に安全弁を作る。

「ええとね……なんか草が地面を移動してくるなと思ったら、私の前で人間みたいな姿をしたのが出てきてね……。それで……しゃべってた」
「どう考えても、それですよ! 三百年生きて、人間のような知性を得たマンドラゴラですよ!」
「あっ、そういえば私のことを見て、魔女に出会うなんて最悪みたいなことを言って、逃げていったっけ……」
「もう、百二十パーセント、当たりですよ! マンドラゴラと無関係な、地中に生えてて、魔女を見て怖がる知性を持つ存在なんてこの世界に存在しませんから!」

 たしかにそんな狭い設定の何者かが何種もいたら嫌だ。

「それで、どこなんですか? その場所が肝心です!」
 エノの目が怖い。情熱の赤い炎が灯っている。
 なんというか、「圧」を感じる……。

「あなた、お師匠様に迫りすぎですよ! 親しき仲にも礼儀ありですよ!」
 ハルカラが私の危機と受け止めたのか、間に割って入ろうとするが――
「礼儀より大事なことなんですっっっ!」

「え、あ……はい……」
 エノの気迫に負けて、引き下がってしまった。いや、その理由で引き下がらないでよ。

「ええと、場所はどこだったっけ……。ああ、あそこか」
「どこですか!? どこですか!?」
 私もその気迫に負けてしまった。

「魔族のベルゼブブの庭だ……。庭といっても、森みたいになってるんだけど。むしろ、数百年放置されてるから、純粋な自然林なんだけど……」
「ほほう! そうですか! わかりました! 情報提供ありがとうございます!」

 やっと手を離された。解放された……。
 そこまでアツくなるほどのものなのかと思ったけど、エノはさささっと布の袋に荷物のようなものを入れはじめた。

「何してるの……?」
「今日から出発します! それまでしばらく、お店はほかの担当者に任せます!」
「あの、魔族の土地ってものすごく遠いよ?」
「ワイヴァーンと契約してますし、それを使います。とにかく一刻も早く向かいます。大丈夫です!」

 どうにも、ばたついているので、私とハルカラは店を出た。ほかの店で昼寝をしていたフラットルテを起こして、帰宅した。

「生きてるマンドラゴラって、そんなに心が躍るものなの?」
 フラットルテに乗りながら私はハルカラに聞いた。
「わたしはエルフなんで、ちょっと敬遠しますけど、魔女ならぜひともほしいって人も多いんじゃないですかね」
「エルフだと、なんで敬遠するわけ?」

「エルフは森の中で暮らしてる知的生命体の命を取るのは禁忌としてますから。元が植物とはいえ、会話のできるマンドラゴラを薬の材料にはできませんよ~」
「あ…………」

 さっきはエノに圧倒されて、ぽろっとしゃべってしまったが、まずかったのでは……。
 今になって、私は事の重大さを認識しはじめた。

「あのさ、薬の材料にするっていうのは、マンドラゴラの葉っぱの部分をちょっと拝借とか、そういう次元じゃないの……?」
「それは魔女によるでしょうけど、全身すりつぶそうとする人だっているんじゃないでしょうか?」

 それはいけない。
 エノのあの雰囲気からすると、全身を使おうとしそうだ……。
 最悪、私は殺人事件に加担することになるかもしれない……。
 あと、そもそも、ベルゼブブの家に不法侵入するとなると、エノのほうがただですむかも謎だ。

 これが常識人なら、ベルゼブブという人の家の庭にあると聞いた時点で、じゃあ無理だなと諦めるか、そうでなくても庭を調べていいか許可を得てから行動するといった手順を踏むだろう。
 でも、今日のエノの様子を考えるとベルゼブブの承諾なしに庭を探検しようとしかねない。
 マンドラゴラも危ない。
 無茶をしそうなエノも危ない。

 私が止めないとっ!

「フラットルテ、行先変更……。ベルゼブブの家に……魔族の土地に飛んで……」
「ご主人様、わかりました!」

 私たちは大急ぎでベルゼブブのところに向かった。
 しかし、速度がちょっと落ちた。
「ご主人様、スピードを上げると、ハルカラが落下するかもしれないので、縄で固定しておいてほしいです」
「そうだね……。そういうところは念入りに対応したほうがいいね……」
 急いでいる時ほど、安全運転を心がけよう。

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