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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

何かが生えていた編

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202 後輩の店へ

 私はそのまま、二人の捜索を続けた。
 それで、だいたい十五分ほど経った頃。

「皆さん、二人は見つかりました!」
 上空で、ドラゴンになったライカがばさばさ翼をはためかせて、叫んでいた。ドラゴンのサイズなら、いくら深い森とはいえ、はっきりとわかる。

「あっ! よかった! これで万事解決だ!」
 私も木をぴょんぴょんジャンプして(ステータス的にそういうアクションゲーム的なこともできる)とくに高い木からライカの上に飛び乗った。

 その上には、元気なファルファとシャルシャが乗っている。
 二人は涙目になっていた。
「少し進んだだけで、どっちがどっちかわからなくなって……引き返そうとしたのに帰れなくて……」
「何時間も迷ったような気持ちになった……。言葉にできないような恐ろしい体験だった……」

 私は二人を包むように抱きしめてあげた。
「ほら、自分たちだけで行動しちゃダメだよ。とくに魔族の土地は何があるかわからないんだからね」
「ごめんなさい、ママ……」「母さん、ごめん……」
「わかればよろしい。わかればよろしい」

 これにて一件落着。
 日本でも見えてる山が、法的には自分の土地ですみたいな人が田舎にはいるけど、あれにちょっと近いかも。土地として持ってることと、把握してることはまったく違う概念なんだよね。二人もベルゼブブの庭だと思って油断したのだろう。

 その日はベルゼブブの屋敷で一泊して、ゆっくり休んだ。
 シャルシャは枕が変わると眠れないかもとか言ってたけど、きっちり眠っていた。



 後日、私は洞窟の魔女ことエノのお店にハルカラとともに行っていた。『マンドラゴラ錠』がちょうどなくなっていたので、新しいのを買いに来たのだ。
 ちなみに洞窟の中ではない。今はエノも町中にお店を出していて、そこで落ち合っている。フラットルテに乗ってきたが、興味がないらしく外で待機している。

 私としては知り合いの同業者と世間話をしに来たような感じなのだが、ハルカラは敵情視察という態度で、やけに真剣に商品を見ている。

「あっ、このビンは使いやすそうですね。これぐらい小さいほうが一人暮らしの世帯にはいいのかも……」
「ちょっと、そこの人! こちらのをパクるのはやめてくださいよ! 悪質なようだと王国に販売停止の訴えを起こしますからね!」
 この世界には著作権という概念はないし、特許という概念もあるのか怪しいが、裁判所で商人があの商人の商品がルールを犯してるなどと言い立てることはできる。

「パクったりなんてしませんよ。参考にするだけです。ほかの企業の商品を見ているうちにインスピレーションを得ることだってありますからね」
「場合によっては、ハルカラ製薬そのものが活動できないように裁判を起こしますからね! 悪質なことはやめてくださいね!」

 ハルカラとエノは商売敵なので、割と険悪である。こういうのは近い職業の人間ほど、仲が悪くなったりするものだ。私は商売っけがないので、中立である。

「先輩もあの弟子がずるいことしないようにちゃんと言っておいてくださいね」
 エノに釘を刺された。
「はいはい。心配しなくてもハルカラはそんな悪質なことはしな――」

「この薬は成分さえわかれば、こちらの工場で類似品を安価に大量生産して打撃を与えることができるのでは?」
 あっ、企業間の対決って、割と容赦なくやる流れなのかな……。

「ハルカラもほどほどにやってね……。どっちかが倒産しましたみたいなの、困るからね……」
「大丈夫です。お師匠様の知り合いを破産させて路頭に迷わせるようなことはしませんよ。仮に破産させたとしても、ハルカラ製薬で雇ってあげますから!」
 だから、破産させるなよ。
「こちらこそ、安易な大量生産ではダメだと悟ったら、いつでも弟子にとってあげますよ。こっちは雇う人が増えても、一つ一つ愛情込めて手作りの精神を忘れてませんから」

 深入りすると厄介なので、ここは二人が同業者同士、高めあっているとポジティブに解釈することにしよう。

「じゃあ、エノ、『マンドラゴラ錠』を一つ買いたいんだけど」
「あっ、先輩にお売りするだなんてだいそれたことはできないですよ。先輩は私の恩人なんですから!」
 最近、エノに先輩と呼ばれている。そう間違ってもいないんだけど。

「少し待っていてくださいね。とっておきのがありますから」
 エノが出してきたのは、一般的な『マンドラゴラ錠』より高級そうなビンだった。
 ラベルにも『熟成マンドラゴラ錠』と書いてある。

「普通の『マンドラゴラ錠』は三年物のマンドラゴラを使っているのですが、こちらはなんと十年物のマンドラゴラを使用しています。一年を通しても少量しか作れない貴重品なんですよ」
 ドヤ顔で説明をはじめるエノ。

「そんな貴重品だったら申し訳ないんだけど……。我が家って基本的にみんな丈夫だし……」
「そう言わずに持っていってください! 私からの気持ちです! ぜひ! さらに健康になってください!」
 ここまで言われたら、いただくしかないか。

「ありがとうね、エノ」
「いえいえ。先輩のように私も立派になりたいです。いつか、最高品質の三百年物のマンドラゴラを見つけて、最高の薬を作ります!」
「三百年物……。そんなのもあるんだね……」
 マンドラゴラも奥が深いな。
 というか、私、魔女の割にはあまりマンドラゴラに興味がない。高原には生えてないというのもあるが。

「その三百年物っていうのは、そんなにすごいの? ヴィンテージってレベルの数字じゃないけど」
「ええ、それはもう。ほら、マンドラゴラって伝説で引っこ抜くと声を出すとか、その声を聞くと死ぬって言うじゃないですか」
「ああ、それぐらいは知ってるよ」
 私が前世で暮らしていた地球でもそんな話はあった。マンドラゴラの根っこが人間に似ていることからできた俗説と言われている。

「もしかして、三百年も経つと、マンドラゴラが声を出したりするの?」
 ファンタジーの世界ならそれぐらいのこと、ありうるからな。

「いえ、声とかそんな次元じゃないですよ。ぺらぺら人の言葉をしゃべると言われてます。それどころか、動き回れるそうです」
 エノの様子からすると、メジャーな話らしい。
「そのしゃべるマンドラゴラを使って薬を作ること、これぞ魔女たる者、一度は夢見ることです! 私も魔女ですからもちろんいつか入手したいと思ってます!」

 ぐっと右手を握りしめるエノだった。
ガンガンGAさんにて、コミカライズ3話更新しております。ライカが本当にかわいいですので、まだ未読の方はぜひ!

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