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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

ベルゼブブの家に行く編

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198 屋敷の正体

「わーい! 探検、探検!」
 もう、ファルファは二階への階段を上りきっていた。
 少し遅れて、シャルシャも到達する。

 そして、ファルファは一番近くにあった二階の扉をがちゃりと開き――
 その場でびくんと腰を抜かしてしまった。

「わわわ……わわ……うわあ……」
 一方で、シャルシャのほうはちょっと涙目になって立ち尽くしている。。
「ど、どうしたの!? なんか、見ちゃいけないものでもあった!?」

 まさかと思うけど魔族の屋敷だし、残虐なものでもなければいいけど……。串刺しになってる人間が並んでるとか、スプラッタな展開なんてないよね……。

 私もあわてて、二人のところに駆けていく。

 そこで私が見たのは、クモの巣とホコリで真っ白になった廃墟さながらの一室だった。

 どう考えても人が住んでいる環境じゃない。それどころか、どんな存在だって、この部屋に五十年は一度も踏み入ってないだろう。

「ここ、ベルゼブブの屋敷じゃないの……? 何がどうなってるわけ……?」
 そういえば、二階の床もかなりホコリがすごい。二人が走ってきた足跡がしっかりとついていた。雪の積もった道を踏みしめたみたいになってるぞ……。

「見られてしもうたの……」
 追いついてきたベルゼブブが観念したという顔になっていた。
「説明してほしいことが多すぎるんだけど、教えてくれるよね?」
 ベルゼブブも小さく、こくとうなずく。

「まず、この屋敷は、たしかにわらわの持ち物じゃ」
 そこにウソはないわけだな。問題はこの二階の惨状だ。
「しかし、広すぎて管理ができんので一階の一部の空間だけで生活しておるのじゃ……。二階以降にはまったく立ち入っておらん!」

 謎が解けた。豪邸なのに来たいと言ったら微妙な顔をした理由もわかった。客人を泊めるスペースなんてないし、こんな真っ白な部屋なんて見せられないものな……。

 ちなみに一階でも、まだ私たちが案内をされてない部屋は似たようなものだった。
 中から物音がする部屋のドアを開けると――

「うぅっ、ホコリが強すぎます……。もう勘弁してくださいよ……」
「もうすぐ休憩時間だから、ヴァーニア、我慢しなさい……。私だってきついわ……」
 マスクをしたリヴァイアサン姉妹のファートラとヴァーニアが部屋の中で悪戦苦闘していた!

 ほかの部屋を開けると、そっちではブッスラーさんが懸命に床や壁を拭いてまわっていた。
「修行でボロボロになった日々と比べれば、雨風しのげる空間があるだけでもリア充です!」
 こっちはたくましくやってるな。武道も肉体労働だから、親和性があるんだろう。

 そのあと、もう少し詳しくベルゼブブに問い詰めたが、この屋敷はベルゼブブ一族代々のものとかじゃなくて、ベルゼブブが農相になった時に与えられたものだという。
「あなた、貴族の家柄じゃなかったんだ」
「むしろ、官僚として出世したので、自動的に貴族になったわけじゃな……。親はどっちも庶民じゃ……。恥ずかしいからずっと黙っておった。すまん……」
「でも、ベルゼブブって名前は本名だよね。いかにも強そうだけど」
「人間でも、聖人の名前を庶民につけたりするじゃろ?」
 あ、たしかに、それはそうだ。マリアって名前の女性なんて世界中にいたよね。

 ベルゼブブはいわゆる、成り上がりというやつだね。尊大キャラをやってた手前、今更打ち明けられなかったんだろう。
 で、屋敷を手に入れたベルゼブブは贅沢して暮らす方法もよくわかってなくて、メイドも執事も一切雇わずに自分が生活できる範囲だけで生活する道を選んだということらしい。

 日本で社畜やってた頃は広い家に住みたいと思ってたけど、限度があるんだな。身の丈にあってない建物を手に入れても扱えないのか。

 ただ、ベルゼブブに説明を聞いている間、妙に暑苦しい感覚があった。
 その暑苦しいほうを向くと、ライカがいた。
「アズサ様、こんなに広くて立派な建物なのに、有効活用されてないのはもったいないと思いませんか?」

 おや、これは何かに目覚めたような表情だぞ……。
「この屋敷をきれいにいたしましょう!」
 やっぱり、そういうことを言い出したか! ほんとに真面目だ!

 しかし、私は微妙な気持ちだった。
 なにせ、普通の家の掃除を手伝うって次元じゃないのだ。お屋敷なのだから、部屋数もとてつもなく多い。ちょこちょこやっても焼け石に水なような……。

「ねえ、ライカ。ここはほどほどに一階の空き部屋を手伝うってことにしない……? 徹底的にやると軽く見積もって一週間はかかるよ……」
 別にベルゼブブは今の生活スペースで問題なく暮らしてるわけだし、それでいいだろう。

「アズサ様、我に秘策アリです。短時間で屋敷をそこそこ落ち着いた状態に変えてみせます」
 そんなことができるのか? しかし、ライカの表情は自信に満ちている。

 ライカがビシッとフラットルテに指を向けた。
「フラットルテ、掃除で勝負です!」

 秘策の意味がわかったぞ。フラットルテを焚きつけて、掃除自体を対戦ゲーム化するわけだな。
 しかし、どちらかというと、だらしないフラットルテだし、掃除対決なんてものじゃいくらなんでも乗ってこないだろ――

「やってやる! お前との対決はすべて勝つぞ! それがフラットルテ様のプライドなのだ!」
 あっさり、乗せられてる!

 ライカがほんの一瞬、黒く笑った気がした。
 今、「この人、バカですね」みたいなことを思ったな。ライカがフラットルテの操縦法を覚えちゃったかもしれない。
 できればライカには汚れがない純真なままでいてほしかったが、長く生きていれば世渡りの仕方もわかってくるものか。それも成長と言えなくもない。強くなってください。

「では、ひとまず夕食の時間をタイムリミットとしましょうか。それまでにより広い範囲をきれいにしたほうが勝ちです」
「よし! 任せろ! このフラットルテ様がホコリもクモの巣も備品もすべて吹き飛ばしてやるからな!」
「いや、備品は壊さないでくださいね……? ここはベルゼブブさんの家ですからね……? そこは丁寧にやってくださいね……?」

 ライカのほうが焦って、制限をつけていた。フラットルテは勢いがあっても、雑なので、そのあたり断っておかないと、単純に屋敷が壊されかねない。

 ともかく、「掃除対決で短時間で集中してきれいにする作戦」が行われることにはなった。

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