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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

珍しくダンジョンに潜ってみた編

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194 地の底大滝

 ブーガビーの村をどうしたらいいかという話は、全然まとまらなかった。
 大々的なイベントをやる経済的余裕もなさそうだしなあ。このまま、滅んでいくのか。

「あ~、ガチの地下遺跡みたいな、誰もが観光で来たくなるような絶景があればいいんだけど……」
 とはいえ、ないものねだりだ。そんなものがないから、順調にさびれているのだし。

「う~ん、絶景と言えば、あそこなんてどうかしら~」
 ユフフママが思わせぶりな発言をした。

「あそこってどこですか?」
「このへんって滝が多くてね、その中でもいいのがあるの。わたしは『地の底大滝』って呼んでるわ」

 滝か。ユフフママの家のすぐそばも滝があったぐらいだしね。地形的に水が出やすいんだろう。

 でも、悪くはないけど、滝ぐらいじゃなあ……。いや見る前に判断しちゃうのはよくないことだぞ。まずは見てみよう。

「ユフフママ、その滝まで案内してもらえる?」
「かわいいアズサのためなら、もちろんよ。じゃあ、サンドウィッチ用意するから待っててね」
 マジで行楽かよと思ったけど、滝を見にいくのだから、行楽なのかな。

 支度中、別室で待っていると、ライカが遠慮がちに私のほうにやってきた。
「アズサ様、あんなお母さんっぽさを出してる方とお知り合いになっていたんですね……」
「あっ、うん……。精霊つながりで、ファルファとシャルシャと行動してる時にね……」

 それからライカは少し表情をゆるめた。
「アズサ様もああやって甘えるようなことがあるんですね。アズサ様にも子供っぽいところがあったらしくて、安心しました」
「安心ってどういう意味……? あと、そ、そんなに甘えてないし……。あれぐらい普通だし……」
「そういう、ムキになってるアズサ様、珍しいかもです」

 なんか、さらにライカに笑われた。師匠としての威厳はもう、まったくないね。そんなに師匠と弟子って関係でもないからいいけど。

 そして、サンドウィッチの準備もできたようで、私たちはユフフママについて、滝を見に行くことにした。

 地の底の水がいろんなところからしたたっているあたりをひたすら歩いていく。
 洞窟を抜けた場所から考えても、それなりの距離だ。しかも、足下も悪い。

「これ、仮に立派な滝があっても、不便すぎて観光資源にならないんじゃないですかね……」
 ヴァーニアがおそらくみんなが思っているけど、言ってなかったことを言った。

「とにかく行こう……。もしかしたら、すごく珍しいものかもしれないし……」

 勝算はない。ダメ元なのだ。
 ちなみに私が見た中で、一番ひどかった滝は日本にあった三十センチぐらいのものだ。もしかしたら五十センチぐらいあったかもしれないけど、どっちみち誤差だ。
 恐ろしく、しょぼかった。それ、ただの川の一部分ですよねというのがあった。よく、あれを滝だと名付けられたなと思う……。

「地形としては、いかにも滝がありそうですけどね。このへんも水がしたたってるぐらいですし。悪くはありません」
 ファートラはゆっくりと周囲を観察しながら歩いている。

「あっ、これは貴重な苔ですね」
 ファートラがなにやら採集して、袋に入れていた。
「まさかの苔コレクターなの!?」

「はい。苔ってよく見るとかわいいじゃないですか。癒されますよ」
 いろんな趣味の人がいるものだ。自分にはよくわからない。

「ほら、アズサさん、見上げてみてください。とっても幻想的ですよ」
 ファートラの視線が上に向く。そびえたつ崖と崖の間から、水滴がしたたり、一部は霧となり、独特の景観を形作っている。幻想的という言葉の意味もわかる。

「…………たしかに、悪くないね。この景色も観光資源にできるかも」
 地の底を歩いていないと見られない景色がここにはある。

「アズサさん、足下を見ずに歩くと危ないですよ」
 ファートラが注意をした直後に、ヴァーニアがぬれた岩場ですべって転んでいた。私も注意することにしよう……。

 さらに歩くこと十分。
 途中、岩と岩の間みたいなところも抜けて――

「ふふふ、さあ、着きましたよう。『地の底大滝』ですよう」

 前を行くユフフママが足を止めた。
 ちょうど真ん前が岩壁になっていて、右に折れないと視界がまったく開けないところだ。

 先を歩いていたベルゼブブやライカが、驚いたように口を空けていた。
「えっ、そんなすごいものなの?」

 私も先を急いで、角を右に曲がる。

 そこで私は絶景としか言いようのないものを目撃した。

 何十、いや、何百という小さな滝がまるで枝垂れ柳みたいに両側の岩壁から飛び出ているのだ。

 一つ一つの滝は小さいけれど、それがとんでもない数になっていることで、見たことのない空間を作り出している。

 そこに夕日がうっすら差し込んで、無茶苦茶かっこいい。

「わっ、すご……」
 呆然と立ち尽くしてしまった。てっきり滝というから、迫力ある一本の滝があるのだろうと思ったが、全然ジャンルが違う。
 無数の水のシャワーがオーケストラを奏でているみたいだ。

 多人数なのにみんな無言で滝を見ていた。

「すごいわよねえ。わたしのとっておきの景色なのよ」
 ユフフママは自慢したりはせずに、ただ、微笑んでいる。

「すごいのに、ちっとも知られていないの。下手をすると言葉を理解する存在ではわたししか知らなかったんじゃないかしら」

「あの……なんでここまでのものが知られてないのでしょうか……?」
 ライカもすっかり見惚れていて我を忘れていたようだけど、ユフフママの言葉でやっと頭が動くようになってきたらしい。

「単純なことよ。こんな地の底に来る道なんてなかったもの。最近、ついにダンジョンとつながったみたいだけど、誰も冒険者は到達しなかったし」

 そうか。ダンジョンを潜ったことで私たちは初めてこの地にやってきたんだ。滝を「発見」したんだ。

 ブッスラーさんも、とても澄んだ目で、滝の群れを見つめ続けている。
 そして、こうつぶやいた。
「これは、お金とれますね」
 心も金に染まってるのかよ。
 でも、そのアイディアはいいな。お金がとれるということ、つまり、観光資源になるということだ。
コミケお疲れ様でした! ガンガンGAでベルゼブブの外伝の新しい話が更新されました! よろしくお願いします!

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