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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

珍しくダンジョンに潜ってみた編

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193 地下遺跡の答え

 私はこの奇妙ななつかしさの理由がわからず、もう少し奥へと足を運んでいった。
「あっ、アズサ様、あまりほかの方から離れると、はぐれてしまいますよ!」
「迷子になるほど、やらかし体質じゃないから大丈夫だよ。落ち着いていられないんだ。この謎を解き明かさないと帰れない!」

 そうだ、今の私は冒険者だ。だったら謎を解かないと話にならない。
 この奇妙な感覚の答えを出してやる!

 足下はあまりよくない。岩場に水が落ちてぬれているので、気を抜くと、つるっとすべる。それでもかまわずに足を動かす。

 ダンジョンは終わりでも道は終わりじゃない。この谷の底をしっかり探ってやる。

 そして、私はついに答えにたどりついた。

 したたりの精霊のユフフさん、通称ユフフママが、泉で冷やした野菜を引き上げているところに出くわした。

「あらあ、アズサ、なんでこんなところにいるの?」
 そのユフフママのさらに奥には、私が泊まったおうちもあった。

「そりゃ、見たことあるわ! このへん、ちょっと前に来てたんだから!」
 そういえば、このあたり、さんざん水がしたたっていたよね。したたりの精霊が住むべき場所だ。

「あっ、もしかしてダンジョンから来ちゃった? 物置きのものはあまり持っていかないでね。でも、いらないものばかり置いてるから、むしろ有効活用になるのかしら」

 待って、その発言の意味するところはもしや……。

「あの地下遺跡っぽい部分って、ユフフママの持ち物ですか……?」
「ほら、わたしって『世界精霊会議』の実行委員みたいなことをやってるでしょ。開催場所をこのあたりにしたこともあったの。そしたら、寝泊りするところがあったほうがいいなってことで、このあたりの土地を改造して部屋を作ったのよ。今は一部の部屋を物置きにしてるだけだけどね」

 そういうことかっ!

「そしたら、どこかでダンジョンの部分とつながってしまったのよね~」
「しかし、あれだけのものを作ったんだったら、工事関係者もいろんなところにいそうだけど、話は広がらなかったの?」
「工事は岩の精霊の協力を得たから、そんなに大変じゃないわよ」
 精霊の中だけで完結してたのか。

 謎が解けた。ブーガビー地下遺跡は、精霊用の宿泊施設のなれの果てだったのだ。
 でも、それはそれで人間の価値観からしたら、十二分にとんでもない発見なのかもな。


 私はそのあと、ユフフママをみんなに紹介した。
「いつも、アズサがお世話になっています」
「それ、リアルな母親みたいな発言じゃない……。ま、まあ。いいけど……」
 私もこの人が母親のような錯覚をすることがあるので、文句も言いづらい。

「わー! どことなくお姉様に似ています!」
 ペコラ、適当なこと言い過ぎでしょ。血のつながりはいくらなんでもない。

 すぐに帰るのもそっけないので、ユフフママのところで特製パンケーキをごちそうになりながら、今回のダンジョン攻略を振り返った。

「なんとも、ミミズやナメクジだらけのダンジョンじゃったの」
 ベルゼブブはハエの悪魔なくせに嫌そうな顔をした。ハエだからミミズは我慢しろというのも横暴ではあるが。

「結局、地下遺跡ではなかったということですね。遺跡だったとしても、そこまで深いものではなかったので、早晩、どこかの冒険者が完全に攻略していたと我は思いますが」
 律儀に作っていた地図を広げながら、ライカは言った。
 ちなみにユフフママのおうちに「地下遺跡」の間取り図は置いてありました。そりゃ、設計者なんだから、その時に使ったものがあるんだろう。

「ブーガビーの人はもしかしたら、とんでもなく広大な地下遺跡で冒険者をずっと呼べると思っていたかもしれないけど、そのあてははずれちゃった形だね」
 ダンジョンというのは攻略が完了した時点で、冒険者は立ち寄らなくなる。新しいお宝も手に入らないし。

 というわけで、私たちの遺跡攻略は、こうやって終わりを迎えたわけだけど、問題はもう一つ残っていた。

「ブーガビーという小さな村は、村おこしの希望を一つ失ったわけか……」

 他人事と言えばそれまでだけど、なかなかハードだな。
 これって努力論じゃ何も解決できない次元の問題なんだよなあ。
 もし、私が非力だったとしたら、筋力を鍛えるとか、そういう個人的な方法でどうにかできる。

 けど、廃坑になってさびれていく町をどうにかしろと言われても、打つ手がない。廃坑になってさびれるのは自然のことわりだからだ。

「アズサよ、町の連中が、一方的に勘違いしてしもうただけじゃから、別におぬしが悩むこともないじゃろ。この世界すべての存在に悩みぐらいあるぞ」

 ベルゼブブがあきれた顔で言った。薄情だからこんなこと言ってるじゃなくて、私をフォローしようとして言っているんだろう。だって、ベルゼブブなんて、まさにおせっかい焼きの性格なのだから。

「でもさ、どうにか観光で立て直そうとしてるオーラは感じちゃったからさ……。こう、目の前で倒れられて、その人をスルーできるかっていうと、難しいじゃん?」
「そんなこと言っても、こんな廃鉱に人が来る理由など、もうないしのう……」

 しばらく、場が沈黙した。
 しまった。空気を悪くしてしまったか。みんな考えてはくれているようだけど、答えはそんな簡単には出ないようだ。

 そりゃ、ワンアイディアでどうにかできたら、すでにどうにかなってるよね。

「このブッスラーに案があります!」
 静まり返った部屋にブッスラーさんの声が響く。

「なんじゃ? どうせ悪どい方法じゃろ?」
「ベルゼブブ師匠、もう少しだけ信用してください」
 かなり難のある師弟関係だな……。

「今回の地下遺跡探検みたいにイベントをどんどんやっていけばいいんです。武道大会を毎年開くとか、そういうことをすればいいんです!」
 なるほど。発想は悪くない。
 日本でもフェスを開いて人を呼ぶところとかあったよね。
「おお、思ったよりまともじゃのう」
「ベルゼブブ師匠、一言多いってわかってますよね……」

 なんだかんだで息が合ってるな、この師弟関係。

「高い賞金を出せば武闘家は世界中からやってきますよ。みんな三度の飯よりお金が好きですから」
 それ、あなたの価値観だけでしょ……。しかし、賞金でインパクトを出すのは正しいかもしれない。

「なるほど、なるほど~。でもわたくしが考えるに、この規模の村だと財政的に土地で栽培している野菜セットぐらいしか賞品にできないと思うんですけど~」
 ペコラが生々しい意見を言った。

「あっ、ちなみにそんな賞品だったら私は絶対参加しません」
「ブッスラーさん、手のひら返すの早いっ!」

「だって、試合に出ると殴られたり蹴られたりして痛いわけですよ? そんなつらい思いして、もらえるものが野菜だったら納得いきませんよ! お金、お金! 対価をよこせってことですよ!」

 ある意味、正しいな……。

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