挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

珍しくダンジョンに潜ってみた編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

189/280

187 村おこしがムズい

『喫茶 ひまわり』に入店すると、思いのほか冒険者たちで混んでいた。

 なんとか四人掛けの席を確保して、ほかのパーティーの会話に聞き耳を立てる。

「困ったな。展示を見ていたらかなり時間を食ってしまったぞ」
「引き返して明日再度潜るか?」
「それは空しすぎるだろ。ここは気合い入れていくぞ」

 私たちと同じような状態になっている!

「まさか豪華賞品がもらえるとかいうのも、超高性能の剣とかじゃなくて、特産品セットとかじゃないだろうな?」
「この調子だと、それすらありうるな……」
「それだったら承知しないぞ。交通費もかなりかかってるのに……」

 自分のことじゃないのに胃が痛くなる。
 村おこしが完全に失敗しているんじゃないだろうか。いや、村おこしをしようとするのはいいんだけど、冒険者をそれで誤解させて呼んでしまっているのではないか……。

「アズサ様はどれにいたしますか?」
 メニュー表をライカが私の前に持ってくる。
「じゃあ、この名物のブーガビーパンにしようかな……。このへんで収穫した野菜や獣の肉をパンにはさんでるらしいし」

 このブーガビーパンなるもの、地域の十五の店でそれぞれまったく違った味で提供していると書いてある。
 名前に地名をつけているあたり、昔からその土地に根付いているご当地グルメじゃなくて観光用にあわてて作った感じが強い。

 私たちはブーガビーパンを六つ注文した。人数より多いのはドラゴン二人が二つずつ食べるからだ。ドラゴンは一つでは足りない。

 出てきたブーガビーパンはサンドウィッチとかハンバーガーの間ぐらいの食べ物でそれなりにおいしい。
 おいしいが、ベルゼブブの渋い表情を解消するには至らなかった。

「ううむ、わらわも胸が苦しくなってきたのじゃ」
 ぼそりとベルゼブブが暗い顔で言った。
「もし、わらわが地元の村で、村おこしをしたいから手伝ってくれと言われたら、どうしようということをさっきからずっと考えておった……」

「ベルゼブブもやっぱり、そういうことを考えてたか」
 衰退していく地方の実態と、その抵抗および空回りがこのブーガビーでは強く見えている。

「魔族の世界でもこういう寂れてしまった町や村などいくつもあるのじゃ。世の中は栄枯盛衰。永久に繁栄し続けることはできぬ。新たに勃興する町や村もあれば寂れてしまうところもあるのじゃ。しかし、寂れたところも見過ごすわけにはいかぬ……」

 ベルゼブブは頭を抱えていた。
 絶対に当初は想定してなかったタイプの心労だ。できればダンジョンが難しいとかそういう次元で困りたかっただろう。

 あくまでもベルゼブブは政治家なので、このあたりのことが気になってしまうのだ。
 寂れてきたから廃村にするんでよろしく、って言えないのだろう。

「わらわの地元でも、苦しんでいる村がなくはないのじゃ。寂れきらないように補助金を出しても、それはせいぜい役場をきれいにするとか、そういう役割ぐらいでしか使われぬし、かといって、補助金を出さなければ村が滅んでしまう……」

「生々しい問題だな……。冒険者を満喫する時に考えたくはなかった……」

「このブーガビーパンもおいしいのじゃが、ちっともオリジナリティというものがないのじゃ。ブーガビーパンを食べにここに来ようなんて気持ちにはなれないじゃろ。それでは観光用の目玉としては弱すぎるのじゃ」
「ベルゼブブの言葉でちょっとわかったことがあったかも」

 問題点がクリアになった。
「ここの土地はいろんなことにチャレンジしてるけど、一つ一つの威力が小さすぎるんだ」

 たとえば、さっきまで見てた資料館的な展示を見るために来る人はいないだろう。自然がいっぱいとか言っても、そんなのどこの田舎でも共通してることだ。だいたい、この世界は自然がいっぱいなところのほうが多い。

「おそらく、以前作っておったテーマパークとかもこんな調子で中途半端になったんじゃろうな。お金をたくさんつぎ込んだ割に客が来なかったのじゃ」
「やっぱり、イチから村を建て直すって絶望的に難しいのかな」

 私とベルゼブブが悩んでいる間、フラットルテは三つ目のブーガビーパンをお代わりしていた。食べていれば幸せらしい。
 ライカは観光ガイド的なパンフレットをじっと読んでいた。教養があると、ちょっとしたことに楽しみを見つけられると聞いたことがあるが、ライカはそういうタイプなのだろう。
 フラットルテはとにかくおいしいもの食べてれば、それでよくて深く考えないタイプ。
 この二人みたいなキャラなら実は堪能できそうだけど、どう考えても少数派だし、ブーガビーに来たいと思って来たわけじゃないからなあ。
 ブーガビー地下遺跡だけでどこまで押し通せるかというと、かなり怪しい。だいたい、冒険者しかこれじゃ来ないだろうし。

「まあ、よいか。肝心のダンジョンに潜って全貌を確認するのが先じゃな。ここで議論を重ねてもわからんことが多すぎるのじゃ」
「うん。まだすべてを見てるわけじゃないからね」

 これさえあれば、誰もがこのブーガビーに来るっていうようなものがあるかも。

 ――と、また違うパーティーの声が聞こえてきた。
「ダンジョンもモンスターがしょぼかったしなあ」
「宝箱もあったけど、松明とか古着だったし」
「地下二十階で引き返して正解だったわね。どうせ先に進んでもバカ見るだけよ」

 ……これはダメなんじゃないか。

 不安要素しか感じないまま、私たちはお金を支払って店を出た。
 さて、地下八階に進もう。どうかまともなダンジョンでありますように……。
コミカライズとベルゼブブのスピンオフ、ガンガンGAさんにて2話を公開いたしました! 詳しくは活動報告をごらんください!

20161213_slaim_syoei01.jpg
GAノベルさんより発売中です! 5巻は2018年1月15日発売! 1巻は10刷を達成いたしました! ↑をクリックしていただければ紹介ページに飛びます!
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ