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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

世界精霊会議編

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181 冤罪にはまりかけた

 私は少しぼうっとした頭でダイニングに座っていた。
 いけない、いけない。切り替えていかないと……。こんな調子で娘二人に会うわけにはいかないぞ。あくまでも私は二人の母親なんだから、あまりぼうっとしすぎていてはいけない。

 顔だけ写るサイズの鏡の前に立って、表情を確認して、自分を親モードに戻した。
 よし、これで大丈夫だ!

 そこにファルファとシャルシャの二人が入ってきた。
「おはよう、二人とも! よく眠れた?」
 ほがらかにはきはきと、いかにも頼れるお母さんという感じで。

 けど、娘の反応がどこかおかしかった。

「ママ、それ、どうしたの……?」
「姉さん、そういうのは黙っておいたほうがいい」
「むしろ、聞かないほうがママが気にしちゃうって」

 む? 何か私に問題でもあるのかな……?
 若さを吸い取られるみたいな恐ろしい力はユフフママにはないぞ。だって、鏡も見てるけど、何も変化はなかったし。

「二人とも、気になることがあったら、ママに教えてほしいな」

「ほらね、ママもああ言ってるでしょ?」
「わかった。シャルシャもそれに従う」

 ほんとにいったいどういうことなんだろう。

「ママ、おもらししちゃったの? 大人なのに?」
 おもらし? いやいや、まさか、そんな――

 今、気付いたけど、下半身がぐっしょりしている……。

「そんなバカな! それはない! これは何かの間違い!」

 その時、めったに笑わないシャルシャが顔に微笑をたたえた。

「母さん、シャルシャも姉さんも人の身体的特徴をバカにするようなことはしない。そういう行為が何も生み出さないことは知っている。だから、無理して取り繕ったりしなくてもいい」

「シャルシャ、立派に育ってくれてとてもうれしいけど、取り繕ってるわけじゃないからね!?」

「おもらししちゃう時もあるよね。ファルファもわかるよ。大丈夫だよ!」
 違う! 本当に違うんだ! でも、ぐっしょりしていることは事実だし、よもや……。いやいや、そんなこと、三百年生きてきたけど、一度たりともなかったぞ。
 何か心当たりはないか?

 そこにユフフママが入ってきた。

 私は助けを求めるような目で、そちらに視線を送っていた。

「あら、あらら……」
 なんか、見てしまったって感じで口を手で覆ってる!

「そういう時もあるわよね。人って個体差も激しいし」
「その納得はいらないから!」

「もしかして、あなた、その強さの代償として、もらしやすい体質になったりしてない?」
「いや、そんな悪魔の契約みたいなもの、あるわけないでしょ! これは……私にも原因不明の何かだって!」

 ぽんぽんとユフフママに頭を叩かれた。
「そんな些細なこと、気にしなくていいのよ。もらしたぐらいで、あなたの価値が下がるわけでもなんでもないわ!」
 やっぱり、漏らしたというその一点は揺らがないのか……。もしや、私は本当に……? 自覚がない間に起こるとしたら、記憶にないから違うとは言えないわけだし……。

「はい……。ひとまず、替えの服、あったらください……」
 しかし、そこで、くすくすくすくすと、ユフフママが笑い出した。

「からかってごめんなさいね。あなたがあまりにも悲観的な表情でこっちを見てきたものだから」
 あっ、これは種があるタイプの反応だ。

「ほら、わたしってしたたりの精霊でしょ? だから、わたしに密着すると、その影響で水がしたたった感じになっちゃうの。ぬれてるように見えるのはそのせいよ」

「あ~、よかった。じゃあ、謎はすべて解けたね」
 しかし、絶妙に羞恥心をくすぐるアビリティだな……。着替えは必須になる。

「な~んだ。ママのせいじゃなかったんだ」
「シャルシャは最初から母さんを信じていた」
 いや、シャルシャ、その発言はウソでしょ。もらしてもいいんだよって態度だったでしょ。

 ただ、ファルファがまだ引っかかるようなことがあるような顔をしているけど、いったい何だろう。でも、これより大きな問題なんてないよね。

 私たちはユフフママに用意してもらった朝食を食べた。
「邪魔になるし、これを食べたら出ていくね」
「え~。迷惑なんて気にせずにずっといてもいいのよ。空いている部屋でごろんと楽にしててもいいし」

 うっ、帰省した時の実家の母親感がすごい!
 何も考えずにだらだら滞在したくもある!

 しかし、何日も家を空けたらライカたち、留守番中のメンバーが心配するし、それはよくないよね。

「いえ、今回はこれで帰る……」
「そう、またいつでも来ていいのよ」
「はい……その時はまた……」

 ユフフママに甘えたくなった時は、こっそりお邪魔しよう。
 料理もいかにもな家庭の味でほっこりとする。

「ねえ、ママ、ちょっとファルファ、よくわからないことがあるんだけど」
 フォークで野菜を突きさしながらファルファが言った。
「うん、いったい何?」

「ママ、おねしょしたみたいになってたよね。あれって、ユフフさんにひっつくと、そうなるんだよね?」
「うん、そうみたいだね」
「ママがユフフさんにそんなにひっつく時っていつなの?」

 食べている料理の味がしなくなった。

 もしかして、これは子供の教育によくないことなのか? 落ち着け、落ち着け。とくにいやらしい要素はないぞ。でも、堂々と言うのが恥ずかしいのも事実だ……。

 私が焦っている向かい側でユフフママが楽しそうに笑っていた。
「そういうのは大人になればわかるわよ~」
「誤解を招く表現はやめて!」

「あのね、変なことじゃないのよ。ただ、大人も誰かに甘えたくなることはあるの。そういうお手伝いをわたしはしてあげてるだけなの。ファルファちゃん、わかった?」

 慈愛に満ちた目でユフフさんは言った。

「うん! ファルファ、よくわかったよ! ファルファも不安な時とか、ママにぎゅっとされたくなることってあるし!」

 理解はしてもらえた。うん。よかった。
 本当にほっとした。

 私たちは朝食をごちそうになると、ユフフママの家を出た。帰りも瞬間移動の魔法で湖のほとりまで送り届けてもらう。

「また、来たくなったら、ここに来てくれればいいからね」
 私はこくりとうなずいた。
 それから、小声で、こう言った。
「バイバイ、ママ。元気でね」

 三百年、この世界で生きてきて初めてママができました。
 でも、三百年生きているうちに娘ができたんだから、ママができたっておかしくはないだろう。うん、セーフ、セーフ!

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