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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

異世界でまんじゅうを作る編

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174 柏餅っぽいものも売る。

『食べるスライム』がヒットしているうちに、私は次の商品の開発にいそしんでいた。

 それはもち米を使ったお餅だ。とはいえ、お餅のお菓子といってもいろいろある。あんまり粘り気があると、ノドに詰める危険があるので、ここは柏餅みたいなのを作ろうと思う。

 これもなぜかフラットルテが試作品をがつがつ食べてくれた。スタッフがあとでおいしくいただきましたというやつだ。ドラゴンはこういう時、やたらとたくさん食べてくれるので助かる。

 こちらは饅頭と比べると、割とあっさりとできた。スライムっぽい目はこっちも焼き印を入れる。それと、せっかくなので、葉っぱの上にお餅を載せて完成とする。
「名付けて、『葉っぱスライム』だよ!」

 最初の試食はフラットルテが行います。
「うん、このおなかにたまる重量感。朝食にもなりえますね。中の餡子も悪くないです」
「お米だからね。ずっしりしてるかも」
「ひとまず、十五個ほど食べてみますね」
 間違いなく、食べすぎです。

 さて、娘たちにも食べてもらおう。
「おいしい! ママ大好き!」「母さん、料理上手」
 いつか、シャルシャにも元気に「ママ大好き!」って言ってもらいたいが、それをやられるとキャラが変わってしまう気もするし、このままでもいいかな。

 もちろん、シャルシャがママのこと好きなのはよく知ってるよ。それはそれはよく知ってるよ。少なくともベルゼブブよりは知ってるよ。ここ、重要なところだからね。

「母さん、お茶と一緒に楽しみたい」
 シャルシャがそう提案したので、お茶を入れてあげた。『葉っぱスライム』に合うように、少し濃い目に入れる。

 シャルシャは『葉っぱスライム』を一口。それから、ずずずっとお茶を飲む。

「ふぅ~。はぁ~。生き返るぅ~」
 その時、シャルシャの目がすっと細くなって、とてもやさしげな笑みが宿った。貴重なシャルシャの笑みだ! やった、いいものを見れた!

 今すぐ抱きしめたい衝動に駆られたけど、親とはいえ、いくらなんでも挙動不審なので、ここは耐える。そういう忍耐も必要だ。

「ここで、膝の上に寝ている猫でもいれば最上」
 縁側で一息ついてるおばあさんみたいな発想だな。猫はかわいいからわかるけど。

「ママのお菓子、お茶とも相性いいね! うん、シャルシャの言うことわかるよ!」
 ファルファはいつもどおり、こっちを全肯定してくる。
 この笑顔を守るためなら私は魔女にでもなる(もう、魔女です)。

 じゃあ、この『葉っぱスライム』も売らないとね。ハルカラにも教えておかないと。

 従業員を確保しますというハルカラの提案は、かなりありがたい。なにせ、ものを売るとなると、かなりの時間、拘束されてしまう。作るのだって趣味の延長だから、毎日決まった時間に起きて仕込みをするだなんてことはできないし。

 そのあたりの問題を会社のシステムはカバーしてくれるんだろうな。
 個人だと限界があるところを補って、いろいろ広げるのに一役買っている。会社には会社でいい面ももちろんあるのだ。そのいいところだけ利用していこう。

 ハルカラにも『葉っぱスライム』(という名のほぼ柏餅みたいな食べ物)を食べさせてみたけど、太鼓判を押してくれた。

「これも、もちろん売りましょう! 『食べるスライム』との二枚看板になって、もうどこにも隙はありませんよ!」
「経営者がそう言ってくれると、ありがたいよ」

 翌日、ナスクーテの町で売っている風景を見学させてもらった。
「新商品の『葉っぱスライム』入荷! 新しい食感! 高原の魔女の本領発揮」の文字が躍っている前で、開店作業を従業員の子がやっている。

「こうやって見ていると気恥ずかしいな……」
「恥ずかしがることはないですよ! どどーんとかまえていてくださいよ!」

 そして、開店時刻になった。従業員の子が「今から販売しまーす! 新商品もありますよー! いかがですかー!」と声を張り上げると、ぞろぞろとお客さんが集まり出した。

 フラタ村と比べると人口が多いし、町の外から来る人も多いので、店の前がかなりのにぎわいになる。
「おお……これは爽快だ……。やっぱり作ったものが売れるっていいね……」
「ですよね。多分お昼前には完売しちゃいますよ。大量生産したほうが儲かるんですけど、それで味が落ちては本末転倒なんで、このままやってもらえればと思います」

 なによりうれしかったのは買った人が笑顔だったことだ。
 最初はあくまでも娘二人を喜ばせたいって気持ちがあったけど、ほかの人も笑顔にできるなら、それにこしたことはない。

「さすが、高原の魔女様だな」なんて声が聞こえてくる。うん、もっと言って。

「高原の魔女様、ほんとに飲食系に強いよな」「喫茶『魔女の家』もよかったしね」

 ん……? どうも評判が偏ってないか……?

「魔女様の得意分野はここなんだな」「薬より、こっちのほうが向いてるって気づいたんだろうね」「自分の長所を発見するっていいことだよ」

 私はその時、自分がミスをしていたことに気づいた。

 もともと南に行ったのは薬を作って魔女らしくするためだったのに、お菓子のほうで目立ってしまっている。むしろ、さらに薬を作る部分が後ろに退いている!

 従業員の子が「お菓子作りの魔女様の新作ですよー!」と声を上げている。

 そんな変な二つ名にしないでっ! あくまで高原の魔女だから!

「いいお菓子を作るために高原に住んで三百年、素晴らしい新作です!」

 別にお菓子作りのために住んだわけじゃないっ!

「このお菓子には三百年の伝統が生きています! 古くて新しい、それがこのお菓子です!」
 そんな江戸時代の半ばから操業してますみたいなノリにしないで! 思い付きで作ったものだから!

 もう、薬のほうでしっかりと名を残すのは諦めたほうがいいかもしれないな……。
 しかし、それって、もう魔女ではない気もするが……。

 私は自分のアイデンティティについて考えながら、『葉っぱスライム』をかじった。
 甘さ控えめでちょうどいい味だった。
 これは世界を狙える……。いやいや……スローライフを忘れないようにしよう。

お菓子編はこれにて終了です。次回から新展開です。
そして29日からガンガンGAよりコミカライズはじまります!

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