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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

異世界でまんじゅうを作る編

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172 饅頭から改名します

 ファルファとシャルシャはテーブルで、ずっと本を読んでいた。
 ファルファは『算術と論理学』。
 シャルシャは『時間とは何か』。
 毎度ながら、異常に難しい本だ。私には全然理解できない。多分、手続き踏めば、教授になれる程度の頭はあると思う。

「二人とも、おやつにしない? ほら、頭使ってると眠くなるでしょ?」
「でも、夕飯も食べ終わったし、おやつの時間じゃないよ?」
「食後から時間も経っているので、デザートというのとも少し違う」
 冷静な判断をされてしまった。

「と、とにかく、甘くておいしいお菓子、ママ、作ったから食べてみて!」
 茶色っぽい色で丸い、いかにもなお饅頭。お皿にいくつも載ったそれを二人の前に差し出す。

「ほら、頭を使うと、甘いものがほしくなるでしょ? これを食べると、さらにはかどるかもよ! 食べて、食べて!」
 少し押しが強すぎたかもしれないが、二人とも手にとってくれた。

 まず、ファルファがぱくりとかじる。
 その途端、ファルファの表情がぱっと明るくなる! 私はその顔で勝利を確信した!

「おいしー! とってもおいしー! ママ、すごいよ! こんなの知らない! ママ、お菓子作るの上手なんだね!」
「ありがとう、その言葉をずっと聞きたかったんだよ!」

 私は喜びを噛み締めていた。

 続いてシャルシャ。二人の嗜好は双子らしく似ているので、もうそんなに心配はない。
「うぅ……滋味深い味……」
 目を閉じて、ぷるぷるシャルシャはふるえていた。それから、二個目にも手を伸ばしてくれた。表情はあまり変わらないけど、おいしくなければこんな反応にはならないはず。

「母さん、これの名前は?」
 シャルシャは性格上、来歴とかを知りたがる傾向にある。今回もそうだ。

「まんじゅうって言うんだよ」
「マンジュー。たしか西部にそんな地名があった気がする」
 そう言うとシャルシャは自分の部屋に行って、地名辞典を持ってきた。それには饅頭は載ってないと思うけど……。そもそも、地名ですらない。

「マンジュー、あった。マンジュー伯ルグネスが有名。このお菓子についての記述はない」
「それは全然関係ないよ……。偶然、偶然」

 しかし、マンジューという土地のオリジナルと思われるの、なんか嫌だな。この世界で作ったのは私だし。
 その逆で、もしも饅頭が流行った場合、マンジューの人がなんでうちの地名ついてるのかと困惑するかもしれない。

 シャルシャが辞典をめくってる間にファルファはぱくぱく食べていた。食後に食べるの、あまり健康によくないかもしれないけど、今日はとことん食べていいからね。

「これ、おいしいけど、もっとかわいかったらいいな~」
 かわいさを要求された。えっ、饅頭にもかわいさっているの!?

「ほら、ママ、これ、お顔も何もついてないし。お顔みたいだったら、もっとかわいいんじゃないかな?」
「斬新な提案だね……。いや、でも、会社名の焼き印入れたりする饅頭ってあるし、そうでもないのか……」

 とはいえ、リアルな顔をつけても、不気味だし、そこはどうにかする必要がある。動物の顔にするか。でも、わかりやすい動物の顔ってなんだ?

「これ、スライムっぽい形状」
 シャルシャがぼそりと言って、まるまる一つ口に入れた。
「むほん、すふぁいむは甘くなふぃと思うふぁ」
 多分、「無論、スライムは甘くないと思うが」と言ったのだろう。
 一口で食べるの、やっぱり無理があるな。

 けれど、その言葉で私はインスピレーションを得た。

 スライムの顔ならすぐ作れる。すごくシンプルな顔だし。ちょっと何かを熱して、じゅっとひっつければいける。

「わかった。待ってて!」
 ものを熱するのは火炎の魔法があるし、すぐに適当な金属を加熱して、饅頭に押し当てて、目のようにした。

「はい、スライムっぽくしたよ!」
 すると、娘二人の顔が一段とキラキラした。スライムの顔がつくと、たしかにかわいい。これは子供受けもよさそうだ。

「スライムおいしいね!」
「スライムは美味」
 そのスライムから生まれた二人がぱくぱく食べるの、共食いっぽいけど、形状以外は何も成分は一致してないから大丈夫だろう。

 私の中に少しばかりハルカラっぽいひらめきが。
 これ、売れるよね。
 それで商売して儲けようって気まではないけど、フラタ村に持っていったら、喜ばれるのでは?

 名前はそうだな、マンジューだと地名と思われるようだし、『食べるスライム』にでもしようか。



 私は周囲の人間(ただし正確には人間じゃない存在のほうが多い)にモニターになってもらった。
 まず、家族のライカ、ハルカラに。

「ほっこりしますね、アズサ様!」
「これは売れますよ!」
 予想どおりの反応、ありがとう。参考にさせていただきます。

 続いて、多分この時間なら仕事もないだろうということで、ベルゼブブを魔法で召喚した。
 しかし、どうも残業をしていたらしく、羽ペンを手に持った状態で出てきた。げっ……。また文句言われる流れだ……。

「どうせ、またしょうもない話じゃろう? いい酒が入ったから付き合えとか、そういうのじゃろう? 気にしておらんから言うてみよ」
 ものすごく言いづらい前置きをされた。でも、言うぞ、言っていいって言われたからね。

「『食べるスライム』ってお菓子を作ったから試食してみて。今のところ、大好評だから!」
 ベルゼブブは案の定、まだ納得いってない顔をしていたが(ベルゼブブからはいきなり押しかけてくるので、おあいこだと思う)、ぱくりとそれを口に入れた。

「これは、かなりいい線いっているではないかっ!」
「でしょ? 私としては頑張ったほうでしょ?」
「おぬし、薬作るより、こっち作るほうが向いておるぞ!」
「それは魔女に対して失礼だから撤回しろ!」

 モニター調査はひとまず、これぐらいでいいだろう。

「よし、試験的にフラタ村で売りに行こう!」
 その声を娘二人が聞いていた。

「お店屋さんごっこやりたーい!」「地道な労働からも得るものはある」
 ごっこじゃないけど、商品の数も一つしかないし、二人でもできるか。よし、手伝ってもらおう。
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