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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

魔族の音楽祭編

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160 音楽祭へ向かう

 そして、ついに音楽祭に向かう日がやってきた。

 また、例によって、空に巨大すぎる生物が飛来する。
 ククは衝撃を受けていたけど、私たちは慣れた。リヴァイアサンだ。この色合いはヴァーニアのほうだな。

 しばらくすると、ファートラが降りてきた。
「皆様を国賓として招待いたします。上まで上がってきてもらえますか?」
「いつもお疲れ様、ファートラ」
「いえ、これもお仕事ですので。ちなみにベルゼブブ様は会議でここにはいらっしゃいません。娘さんお二人と旅ができないことを泣いて悲しんでいました」

 気にしすぎかもしれないけど、娘さんという表現が気にかかった。ベルゼブブのやつ、自分の娘だと考えはじめてるんじゃないだろうな……。

 ヴァーニアの上に上がって、これまでと同じような説明を受ける。

「前回から新しい棟が増えたので、そこもご案内しますね」
 へえ、いったい何だろう。

 入ってみると、元スライムの武闘家ブッスラーさんが天井から垂れてくるボール状のものをパンチしていた。
 周囲もトレーニング器具だか拷問器具だか、判別が難しいような代物がいくつか置いてある。

「ここはトレーニングルームで、今日はブッスラーさんが使っています」
「あっ、お疲れ様です! ブッスラー流スライム拳を極めるため練習しています! 皆さんも一緒にどうですか?」
「私はとくにいいです」

 ただ、ライカが「我はここで汗を流します!」と言って、参加した。

 そのあとはラウンジ的な部屋でくつろいだ。音楽祭のプログラムがあるので、それを眺めている。
 ククもしばらくはそこでじっとしていたが、やがて席を立った。

「私……練習してきます……」
「まっ、舞台に立つ側の人はそうなるよね。悔いがなくるまで、練習してきたらいいよ」

 残りのメンバーはプログラムをぱらぱらめくっていた(私たち用に魔族語から読めるように翻訳されている)。

 音楽祭は三日間にわたって行われる。
 会場はヴァンゼルド城下全域とその外側でも行われ、大きなステージだけでも大競技場・墓地ステージ・旧処刑場の原っぱステージ・瘴気の沼埋め立て地ステージの四か所がある。
 フェス形式に近いけど、ステージが全体的に薄気味悪い。

「前にベルゼブブさんにもらった本によると、かつては祝祭の日にたくさん処刑を行って、祭りを盛り上げていたらしく、その名残らしい」
 物知りなシャルシャが教えてくれた。
「なるほど……。生贄みたいな感じなのかな」

「祭りの最中は城下でもパレードを行ったり、出店もたくさん出ていて、大変にぎやからしい」
「ふうん。まあ、魔族がやることだから本当に派手なんだろうな」

 ククの出番は二日目の、墓地ステージ。基本はスタンディングだが、後ろには席も用意されている。って、この席、どうも墓石なんじゃ……。

「そして、最終日、大競技場に出てきた魔王が音の神と音を支配する契約を結びなおし、幕になる。あくまでも本来はそういう宗教的意義があるもの」
「そのあたりの祭りの起源はどこの世界でもだいたい同じかも」

 ちょうど、そこにファートラがハチミツ水を持ってきてくれた。この子は本当によく働く。

「基本的に、音楽も交えた大規模なお祭りとお考えください。国賓の方は最終日の魔王様が出演なされる行事には参加していただきますが、それ以外はご自由です」
「じゃあ、初日は城下を巡ろうかな。ちょっと寄りたいところもあるし」

「寄りたいところと言いますと?」
 ファートラにとっては私にめあての場所があるのが意外だったらしい。

「ほら、今ってポンデリは城下に住んでるはずでしょ。少し、顔を出そうかなと思って」
 ポンデリは餓死してアンデッドになった猫獣人で、今はヴァンゼルド城の城下町で『ゲームをしてあげる屋』を開いているはずだ。長らくニートをしていたので、ニートでもできそうな仕事ということで、人と一緒にゲームをする職業をしている。

 彼女の人生に少なからず、私もかかわってしまったし、様子を見るのは義務かなと。それに、あの子がちゃんと働いてるか確認したくもあったしね……。筋金入りのニートと言えなくもないし……。

「ポンデリさんはしっかりやっていますよ。少なくとも住民税は欠かさず納めていますし」
「基準、そこか」
 住民税を払える程度にお金があるということは、悪いことではないのだろう。

「けど、それだけにぎわっているお祭りなら、わたしのハルカラ製薬も何かお店を出せばよかったかもしれないですね」
 ハルカラは相変わらず、商魂がたくましい。この商魂で生き抜いてきたようなところさえある。

「はい。全国各地からPRのためにお店を出す会社もありますよ。今年、観察していけそうと思えば、出店申込書を提出してください」
「はい、わかりました!」

「ちなみに出店申込書は今年の会場でも売っていまして、音楽祭最終日の翌日から次回の分を受け付けています。書類不備があると、落選する可能性が高くなりますので、記入内容は重点的にご確認ください」
 なんか、この世界、同人誌即売会みたいなルールがいろんなところで適当されているな。いや、事務的な作業だとどこでも同じようになるのかな……。

「ちなみに仮装参加の方も仮装許可証がいりますので、申請してくださいね」
 やっぱり即売会っぽいな!

 同人誌文化は普遍的なものだったんだ。うん、そうだ、そうだ。

 しばらくすると、ククとライカがどちらも汗をかいて戻ってきた。
「なかなかいい練習がなりました」「なかなかいい練習ができました」

 ここで練習がかぶるとは思わなかった。
 ククはやるべきことはやったという顔をしていた。心なしかこれまでよりウサギの耳もぴんと伸びている。

 ライカはあとからやってきたブッスラーさんと何やら楽しそうに談笑していた。
「ブッスラー流スライム拳、なかなか奥深いですね。取り入れるとさらに機能的になりそうです」「そうですね。効率を重視したものですから」「これでスライムをしっかり倒していきます!」「ええ、どんどんやっつけてください」

 スライムにスライム倒しますと発言するのって、どうなんだろう……。ブッスラーさん本人は気にしてないみたいだけど……。

 その日は、ファートラの料理に舌鼓を打ちつつ、私たちはお城を目指した。

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