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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

魔族の音楽祭編

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159 心が沈む曲

 高原の家に戻る途中、フラットルテと少し話をした。
「両親は理解してくれた? 本音を言うと、あまり心配してないけど」
「はい、最強の魔女様のところで、しっかり仕えてこいと言われました」
「そんな感じだよね。まあ、また帰省したくなったら教えてね」

 私にとっての故郷は高原の家そのものだけど、ほかのみんなにとっては、また別だからね。

「はい! その時はよろしくお願いします! ただ、行くと、多分またご主人様は力比べを挑まれますよ」
「うっ……それだと帰省の頻度は少し下げてほしいかな……」

 あれだけの数を相手すると、そりゃ、疲れもする。この体自体は十七歳ぐらいなので、回復も速いんだけどね。



 帰宅したら、すぐにリュートの音が聞こえてきた。

「一人だと、冬が余計寒い……♪ 布団に身をくるんで、自分の熱で寒さに耐える……♪ ああ、そうか、自分は自分をあっためてくれるって気づいた……♪」

 ククの陰鬱な歌が響いてるな……。ちょっと、呪いっぽい。

「あっ、ママ……おかえりなさい……」
 ファルファがやってきたけど、足取りがいつもより重く感じる。いつもはホップステップジャンプぐらいの調子で飛びついてくるのに。

「なんだか空気が澱んでるけど、大丈夫……? わっ! シャルシャ、どうしたの!」
 部屋の奥ではシャルシャが額を壁に当てて、斜めにじっとしていた。この姿勢、酔っ払い以外で初めて見たぞ……。

「絶望。光が見えない。何も感じられない。えんせい哲学……」
「シャルシャ! シャルシャ! 悩むのはいいけど、せめてその姿勢はやめて!」
 私はあわてて、シャルシャを椅子に座らせた。

 その間も「通り過ぎた人がみんな私を笑っている気がする、そんな日曜日……♪」といった歌がククの部屋から聞こえてくる。
「アズサ様、この曲をずっと聞いた皆さんがダークサイドに落ちているようです」

「なるほどね。暗い曲をずっと聞き続けてたファルファたちに影響が出たのか……」

 しかし、その中でフラットルテは楽しそうに腕組みしていた。
「うむ。独自の方向性を確立したな。自分の言葉で世界を語れているのだ」
 たしかにいい歌ではあるのだ。心に染み入るというか、わしづかみにしてくるようなパワーがある。

 しかし、常にわしづかみにされてたら精神に悪影響を与えてしまうのも、また当然なわけで……。
「待てよ。娘たちのほかもどうにかなってないかな……」
「ハルカラさんは工場に出勤されているはずです。なので影響も小さいはずかと」
 アズサの説は一理ある。でも、ハルカラの場合は最悪を想定したほうがいいのだ。

 私はハルカラの部屋を開けてみた。
 ベッドに力なくパジャマ姿で腰かけているハルカラがいた。

「ああ、会社行きたくないです……。サボっちゃいました……」
「ハルカラ、どうしたの? どうしちゃったの……?」
「あ~、世界、紅蓮の業火で燃え尽きませんかね……。エルフの森とか、すべて灰になっちゃえばいいんですよ……」

 ダメだ。目が死んでいる。会社にすら行けなくなるなんて! いや、サボりたくなる気持ちは私もわかるけど、これは仕事がきついとかとは全然違う原因だ。

「ほら、ひとまず立ち上がって水でも飲もう!」
「水を飲むのも面倒くさいです……」
「じゃあ、日光でも浴びよう! 二十分ぐらい太陽の光を浴びるといいらしいから!」
「外に出るのが面倒くさいです……」

 重症すぎる。そうだ、あれがある!
 私は『栄養酒』を一本、ハルカラに強引に飲ませた。

「あっ……なんかやる気が出てきました……」
「よかった! ハルカラのドリンク効き目抜群だね!」

「そうだ、効き目抜群と言えば、ククさんの歌ですよ。最初は気分がちょうどよく沈静化するんですが、だんだんと魂が地中に潜っていく感じなんです」
 ハルカラから事情を聞いて、だいたいのことはわかった。一言で言うと、ククは才能を開花させたのだが、開花させすぎた。

 天才は他人の人生をおかしな方向に進ませることがあるって言うけど、これがまさにそうだな。
「でも、ハルカラが復活してよかった。あとは……ロザリーだね……」
 少なくとも、ダイニングには浮いてなかったけど。

「はい、お呼びですか、姐さん」
 さっと、床からロザリーが出てきて、叫びそうになった。

「あなたね。もうちょっと普通に出現してよ……。あれ、あなたは平気みたいだね」
 どうも精神にダウナーな影響は見られない。

「やだなー。すでに死んでるんだから落ち込んでる生きてる人間の言葉なんて、子供だましですよ。五歳児が人生の厳しさを実感してるって言ってるようなもんでさー。ははは!」
 ロザリーに笑い飛ばされた。

「だって、つらいつらいって言っても自殺だってしてないんでしょ? こちとら自殺してるっつうの! それで悪霊やってたっつうの! はははっ! あんなの悩みのうちにも入らないですよ」
「ポジティブなのかネガティブなのか、全然わからん!」

 そのあと、ククに言って、日中は外で練習してもらうように伝えた。
「すいません、もっと上手くならないとなって……」
 ククも言われてやっと気づいたようで、かなり恐縮していた。

「うん、その気持ちはわかるし、日中は外で練習して」
「日が当たるところだと、気分が晴れ晴れとして練習に向かないんです……」
 それはそれで難儀だな!

 その時、私に名案が浮かんだ。

「それって暗いほうがいいの?」
「はい、じめじめして嫌な気分になるほうが向いています」
「それだったら、食物貯蔵庫の地下室があるから、そこに入って、やって」

 それから先、ククは地下室で延々と練習を続けました。
異常に暗い音楽性の人っていますよね。そういう人、結構十代の頃は聞いてました。GAノベル1・2巻ともよろしくお願いします! そのうち2巻重版分もお店に並ぶかと!

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