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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

ブルードラゴンの里帰り編

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158 弟子の力

「アズサ様、我と勝負してください」

 ライカは悪ふざけなんかはしない、生真面目な性格だ。だから、それも本気で言っているのだとすぐにわかった。
 なにせ、表情も真剣そのものだしね。

「まずは理由を聞かせてもらえるかな?」

 それがわからないことには、何とも言えない。

「我はアズサ様の下で弟子として刻苦勉励して、己を磨いてまいりました。今こそ、その成果をアズサ様と戦うことで確認したいのです」

 刻苦勉励って、ちょっと表現が重いな。私はもっと気楽に生きてきたんだけどな。

「あなたが努力してきたことは、ずっと見てきたからわかるよ。けど、そういう努力って一年や二年じゃなくて、それこそ百年や二百年やってるうちに意味があることじゃないの?」
 なにせ、私自身が短期間で急成長する方法を知らないし。

「はい。急激に成長できているとは思っていません。勝てるとも思っていません。あくまでも、戦ってみたいというだけです。むしろ、それではっきりと敗北したいのです。敗北からしか前に進むことはできませんから」

 ライカらしい発言だ。ここまで思い詰めているようだったら、それは応えてあげるしかないな。

「はいはい。その代わり、ケガしても知らないからね。手加減したら意味がなくなっちゃうタイプの戦いっぽいし」
「よろしくお願いいたします!」
 その声だけで気合いの入りようはわかる。

「というわけだから、フラットルテ、審判続行で」
「あっ、わかりました……。でも、こう言っちゃなんですけど、審判するまでもないんじゃないですか? ご主人様の強さは、もう本物ですから」
 それはそうかもね。私自身、負ける気は一ミリもないから。余裕の勝利だと思う。

「正式な試合でないと、ライカに失礼だからね。審判にちゃんと勝ち負け宣言してほしいってことだよ」
「な、なるほど!」
 フラットルテも意図を理解してくれたらしい。

 また、周囲の聴衆から声が上がる。
 でも、またすぐに静まり返った。戦闘をしっかりと見届けようという気にみんななっているらしいのだ。
 それほどに私もライカもこの勝負に懸けるという顔をしてるからね。

 ライカの姿が立派な体躯のレッドドラゴンのものになる。
 ああ、最初に勝負を挑んできたあの時の記憶がよみがえった。
 今にして思えば、勝負を挑んできてくれてありがとうと思う。

 ライカと出会わなかったら、今みたいに家族を作っていくことも考えられなかったかもしれない。やってこられた時は迷惑そのものだったし、家もちょっと壊されちゃったし、さんざんだったけど――それでもお返しでたくさん幸せをもらった。

 幸せって意外なところからやってくるんだよね。
 だから、人生って面白い。

「全力で行きます」
「当たり前でしょうが。ここまで盛って、それで手を抜いてきたら、私も怒るよ」

 フラットルテが私とライカの顔を交互に見てから、「は、はじめ!」と振り上げた手を下ろした。

 まずライカはばたばたと空に飛び上がる。
 それから、顔を突き出して、真下に突っ込んでくる。

 なるほど。一撃を叩きこんでやろうということか。炎を吐いて攻撃みたいな悠長なことをしていても、どうしようもないからね。

 ライカの手がかすかに動く。あの手で私の体を吹き飛ばす作戦か。決まれば、それはそれは遠くまで飛ばされるだろうね。

 なので、私はその攻撃をかわすことなく、全力で受ける。

 両手を広げて、まるでハグでもするような体勢から、ばっと手を閉じてつかむ。
 かなりの衝撃が入ったけど、ちゃんと止めることができた。

 衝撃が入ったということは、今日、最初のダメージが来たということだ。うん、悪くない、悪くない。

 戦闘中だから、ライカも何もしゃべらない。まだ、気を抜いたりもしていない。
 うん、意欲は伝わってくる。足りないものは威力ぐらいだ。そこはまた私の下で成長していってくれればいい。

「じゃっ、こっちの反撃だね」
 私はライカの胴体にキックとパンチを繰り返す。
 単調な攻撃だけど、一発一発の威力は大きいから、確実にライカの体力を削っていく。

 そして、最後に空めがけて――
 サッカーボールみたいに蹴り上げる。

 これは飛行してるんじゃなくて、蹴られて空に上がっているんだ。

 かなり長い滞空時間の後、集落からちょっと離れた山のあたりにライカはドラゴンの姿で墜落した。どしんと振動がこのあたりまでやってきた。

 途端に聴衆からざわめきが起こる。
 私はフラットルテのほうを一瞥した。

「審判さん、結果は?」
「あっ……ええと、ライカ、ライカ? まだ立てるのか?」

 遠くから「立てません」という野太いドラゴン特有の声が響いた。

 すぐにフラットルテが私のところに来て、「勝者、ご主人様なのだ!」と手を掲げた。



 そのあと、私はやっと力比べから解放された。けど、ブルードラゴンからの質問攻めに遭ったので、そういう意味ではあまり解放されなかった……。ある意味、こっちのほうがしんどいかもしれない。

 でも、その間にフラットルテは家族水入らずの時間を過ごせていたみたいだから、そこはよしとしよう。たしかフラットルテは三百年生きてる私より余裕で長生きだったはずだけど、娘は何歳になっても娘だしね。

 一方で、ライカはちょっと下を向いていた。
「ねえ、ライカ、どうして落ち込んでるのかな~?」
 ブルードラゴンの質問攻撃が一段落した隙に、顔を下からのぞきこんだら、ライカは照れたように赤くなった。

「落ち込んではいません! ただ、しょうもないことをアズサ様にお願いして今になって恥ずかしくなってきたというか……」
 なるほど。顔を合わせづらいってことか。

 私はぎゅっとライカのほっぺたを両手ではさんだ。
「ひゃ、はふっ!」
 はさまれて上手くしゃべれないライカ。ちょっとだけ変顔になっている。

「その時、ライカがしっかり決断したことなんだから恥ずかしがる理由がありません。胸を張って生きなさい」
「わ、わはひまひた……」

 わかればよろしいと私はライカを解放する。

「私のところに来てまだちょっとの間だけど、強くなってるんじゃない? 気合いみたいなのは感じたよ」
 ちゃんと弟子にフォローは入れてあげないとね。

 すると、ぱっとライカの顔が明るくなった。

「ありがとうございます! これからも精進いたします!」

 ライカがこの旅についてきたのは突発的なことだったはずだけど、そこでも何かしら得るものはあったわけだ。
 やっぱり、人生って何があるかわからないし、だからこそ面白いな。

 ブルードラゴンの集落の旅、それなりの収穫はありました。
フラットルテの里帰り編はこれにておしまいです! 次回から新展開です!
また、編集部にスライム2巻の重版分見本が届いたようです。2巻初版もまだお店に置いてるかと思いますので、よろしくお願いいたします!!!

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