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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

ブルードラゴンの里帰り編

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154 里帰り決行

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「だって、敗北したドラゴンとして故郷に戻るわけですから……周囲の視線が……」
 フラットルテの視線はすっかり下を向いている。そういうことか……。

 たしかにこのあたりの気持ちは本人にしかわからないだろうしなあ。

 私だって東京で何かの夢に破れて郷里に戻るとなったら、大手を振って凱旋ってことはできないだろう。
 私の場合は会社員だったから、日々の疲れを癒すって感じでそこは抵抗なく戻れたけど、それは定職だったからだし。定職だろうと、過労死したからなんにもならないけどね……。

「あのさ、仮にあなたが戻ったら、白い目で見られたりするのかな……?」
 その原因を作ってしまったのは私なので、遠慮がちに尋ねる。

「少なくとも、レッドドラゴンの集落を攻撃して、負けた後はとくに変な空気はなかったです。なにせ、ブルードラゴン全体が敗者ですからね。敗者という点では平等だったんで」

「そこでフラットルテが全責任を押しつけられることにはならなかったのか。割と風通しのいい社会だね。少なくとも、私がかつていた会社より風通しがいい気がする」
 こういうのって、だいたいスケープゴートが用意されるものだからな。それがないのはありがたい。

「アズサ様、我の知っている範囲では、ブルードラゴンの中では力こそすべてというのが掟なので、弱者と部族全体が認定された以上は、そこは悔しくても耐えていくという意識だったのだと思います」

 ライカの発言にフラットルテが力なくうなずいたので、そういうことらしい。それからフラットルテは私に上目づかいになって、こう続けた。

「ただ、今のフラットルテはご主人様に絶対服従ということになっています……。それを恥ずべきことと考える者がブルードラゴンに一定数いてもおかしくはないんです……」
「うっ! それは知らなかったとはいえ、私も胸が痛い……」

 私がフラットルテの角をべたべた触ってしまったことで、フラットルテは私のところで暮らすしかなくなってしまった。
 これに関しては諸悪の根源はイタズラ大好き魔王のペコラだけど……それでフラットルテが家族に加わったことはうれしいし、私としてもいろんな感情が渦巻いている。

「それで、あなたは帰りたいのか、帰りたくないのか、つまるところ、いずれなのですか?」
 ライカがストレートに質問した。

「あのな、これは単純な問題ではないのだ。それはそれは悩んで悩んで、悩みぬいても、まだまだ難しいことなのだ……」
「だとしても、帰るなら帰る、帰らないなら帰らないとはっきり決めないと、いつまでたっても帰れないですよ。こういうものは、あわよくばと思っているうちは永久に大成しないのです。あなただってククさんが昔のままで、あわよくば有名になれるかもと思っていたらそれじゃダメだと言ったはずです」

 ライカの正論が胸に痛い。
 けど、ここはその真面目さがフラットルテにも効いたらしい。きっと、ライカが同じドラゴンとしてフラットルテのことを真剣に考えているのが伝わったんだろう。

「か、帰りたいかな……。少なくとも、今はご主人様のところで幸せに暮らしてると親には伝えておきたい」
 結論が出た。フラットルテが悩みながらも結論を出したんだ。

「うん、わかった! じゃあ、私もそれについていくよ。でないと、帰れないんだよね?」

「はい、それでなのですが……ご主人様の強さを直接知らないブルードラゴンもそれなりに多いので、とてつもなく強いオーラを出して、いらしてくださいませんか?」

 フラットルテの言っている意味がよくわからない。

「ご主人様が誰もかなわないほどに強いということをブルードラゴン全体が知れば、このフラットルテがここで暮らしてるのもやむなしという空気になると思うんです。そしたら、風当たりも小さくなるな~と」

 あまり堂々と言える内容でもないので、フラットルテの声も小さめだけど、意図はわかった。

 私がどんなブルードラゴンが戦ってもかなわない存在だと認識されれば、フラットルテが弱かったからみたいな気持ちも誰も抱かないということだ。

「けど、それ、思いっきり私が悪役にならないかな……?」
「そこは大丈夫です。力こそ正義というのがアタシたちブルードラゴンの価値観ですので。レッドドラゴンと抗争してたのも努力すればなんとかなるかもってほどの差だったというのがあります」

 なんで、そんな覇王みたいな価値観なんだという気もするが、ドラゴンなら覇王みたいなものか。

「了承したよ。じゃ、都合がいい日に行こうか」
「では、今から行きましょう」
 え、マジ? 善は急げにもほどがある!

「アズサ様、我も行きます」
 そこにライカが同行を表明した。

「私はいいけど、ライカにとってまさに敵地じゃないの?」
「それはそうですが、この方がアズサ様と一緒に旅をするのが、その、ずるいというか……」
 もじもじしながら、ライカがつぶやいた。
 く~! かわいい! さすが私の妹ポジション!

「別に来てもいいけど、お前は乗せないからな」
 フラットルテはモロに不満そうだった。
「いいですよ。飛んでいきますので」



 私はフラットルテのほうに乗って、ブルードラゴンの集落を目指した。
 今すぐ飛び立てば、だいたい夕食頃には到着するらしい。

 たしかにこういうの、思い立った時に行くべきなんだろうな。たとえば、日本でも新幹線や飛行機を使えば、たいてい同じ日のうちに日本のどこかに行けた。移動時間に四時間も使えば里帰りできますって人も多いと思う。

 けど、やっぱり里帰りしないんだよな。旅費がかかるというのもあるけど、戻るふんぎりみたいなのがつかなくて、延び延びになることもある。
 帰ろうと思えばいつでも帰れるからこそ、一年や二年、戻らないということってあるんだよね。

 そして、私たちはブルードラゴンの集落手前で着陸した。
 着いて、まず思った。
「寒い! 寒いというか、雪が積もりまくってるし!」

「はい、この土地はちっとも雪が解けないんです」
 人の姿に戻ったフラットルテは平気な顔をしている。他方、ライカは私みたいに両手で自分を抱き締めるようにして、寒さに耐えていた。

「それじゃ、集落に行きましょう。普段はみんな人の姿なんで、違和感もないはずです」
ククが練習している間に里帰りします(一応新編という扱いです)。よろしくお願いいたします!

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