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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

おかしな吟遊詩人編

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153 里帰りの話

 数日後、私の家に面識のないドラゴン系の種族が来た。
 後でライカに聞いたところ、これはワイヴァーンだという。ワイヴァーンとかドレイクとかそういった種族の微妙な違いって、どこで決まっているのか、いまだにわからない。
 タカとワシ、イルカとクジラとシャチに厳密に区別がないようなものだろうか。

 で、もちろんワイヴァーンが何の用事もなく、こんなところに来るわけがない。そのワイヴァーンは魔王からの招待状を持ってきたのだ。

=====
親愛なるお姉様、
魔王のプロヴァト・ペコラ・アリエースです。
音楽祭を今度やりますので、皆さんで来てくださいね。
=====

 情報量、少なっ! テキトーすぎるだろ!
 ちなみに二枚目の紙には日程が書いてある。また、ファートラとヴァーニアの姉妹が連れていってくれるらしい。国賓待遇というのは魔王の姉役である限り、ずっと続くのか。

 ちなみに、あれから先、ククは全力で新曲作りと練習を行っていた。部屋に気楽に入るのが申し訳ないぐらいだ。元空き部屋はすっかりスタジオに変貌した。

「クク、なかなかよくなってますね。やはり、全力で練習をしなければ、実力は身につかないので。あいつも全力を出すマインドになってきたんでしょう」

 ククの部屋から練習の音が漏れ聞こえてくるのを聞きながら、フラットルテが言った。
 私、フラットルテ、ライカでお茶の時間だ。娘二人はお茶だけだと興味がなくて来なかった。ハルカラは仕事に出ている。ロザリーは近くには見えないけど、どこかにいるのだろう。

「我は素人ですが、あの方が上達しているのはなんとなくわかります」
 ライカは自己研鑽じこけんさんを積む人間が大好きなのだ。なにせ、ライカ自身がそういう性格だからね。

「ククは同じことを続けるだけの忍耐力はあったのだ。その忍耐力を少し違う方向にずらしてやれば、伸びる可能性はこれまでもあった」
 音楽に関してはフラットルテは語る。
「世の中には効果の上がらない努力と、効果の上がりやすい努力があるのだ。ククはその点が下手だった。しかし、そこの修正ができた以上は、どんどんよくなっていくだろ」

 この言葉、音楽だけにとどまらず、多くの分野で当てはまると思う。
 世の中には、努力の効率が悪すぎたり、あまり意味のない努力をしすぎたりして、もったいないことになっている人がいる。

 中学時代、クラスメイトでものすごくノートを丁寧にきれいにとることに心血注いでる人がいたけど、成績はたいしてよくなかった。

 ノートの目的は授業で聞いたことを頭に忘れないようにすることだ。別にそれを商品みたいにきれいにする必要はない。わかりにくいよりはわかりやすいほうがいいに決まってるけど、自分の手で書いたものだから、だいたいわかるだろうし。

 あのクラスメイトはノートをきれいにまとめるということが目的になってしまっていた。あの目的を成績を上げることにスライドさせたら、絶対に伸びたのになと思う。

「そういう意味では、あなたは忍耐がなくて努力が長続きしないタイプですね」
 真顔でライカがフラットルテにぐさっとトゲを刺した。

「な、な、ななななな! どういうことだ!」
「だって、思い出した頃にレイラ姉さんに勝負を挑んだりしてたじゃないですか。もっと、姉さんに勝つためだけに時間を費やしていればよかったのでは?」

「それは、だってそうだろう……? そんな毎日、特定の誰かを倒すことしか考えてない人生って、ヤバい奴ではないか! だから、ああいうのは思いついた時にイヤガラセに行くぐらいでちょうどいいのだ!」

 なんか、首肯できるような、できないような微妙な話題だな……。
 たしかに常に「打倒○○だ!」とか言ってる人も問題あるけど、そもそもイヤガラセには行くな。

 とはいえ、レッドドラゴンとブルードラゴンの因縁は、なかば運動会でライバルの地域同士が争うみたいな、多少の愛があるようなものではないかと今は思っている。

 もっとも、そこはそれドラゴン同士の争いだから、規模がおかしなことになるし、若い衆の中にはガチで暴れるぜって奴もいるだろうから、やっぱり大問題だったんだろうけど。

「むっ、今日はやけに煽ってくるな。よし、ならば今日の星座占いでどっちが幸運かで勝負だ!」
「いいでしょう。受けて立ちます」
 平和的な対決すぎる。

 なんだかんだで同じドラゴンだから仲はいいんだよな……。
 多分、フラットルテ、ちょっかいかけてたレイラってドラゴンが結婚しちゃって、さすがに結婚後も結婚前のノリでいけないので、その妹のライカのほうにちょっかいの選択肢が移ろうとしていたんじゃないか。
 つるんでいた相手が結婚すると、急に疎遠になることあるよね。

 そんなタイミングで、ちょうど私がいたのでボコボコにブルードラゴン側を片付けて、今に至るということだと思う。
 また、ククの部屋からリュートの音が聞こえてきた。とはいえスキファノイア時代とは違って、静かな曲が多いので、そんなにうるさくはない。その音を聞いて、またフラットルテの意識はそちらに戻ったらしい。

「やはり、あれだな。ククも王都に出た以上は故郷にブロンズ像を建てたいのだろうな」
 この表現、過去にも似たのを聞いた気がする。どうやら「故郷に錦を飾る」的な意味らしい。

「芸事で王都に出た方はとくにそうなると言いますね。有名にならないと、実績を出したとわかりづらいからというのもあるかもしれませんが」
「ああいう吟遊詩人はたくさん見てきたのだ……。カエルジャンプも白雷のアルサケスもみんな今頃どうしておるのだろう……」
 やっぱり吟遊詩人の固有名詞は全部わからない。

「故郷にブロンズ像建てられるのなんて五十人に一人もいないからなあ。あっ……故郷……」
 ふと、フラットルテが何かを思い出したらしい。あれ、そういえば、フラットルテ、ずっと故郷に戻れてないような……。

「そ、そうなのだ! なんか帰るタイミングがなくて忘れていたのだ!」

「じゃあ、思い出せてよかったじゃない。帰っていいよ――ってわけにもいかないんだっけ?」
 ここに住んでる時点で、掟の関係で私から離れられないというのがあった気がする。

「はい……。実は、帰りたいような、帰りたくないような……微妙な気持ちです……」
「どういうこと?」
「だって、敗北したドラゴンとして故郷に戻るわけですから……周囲の視線が……」
 フラットルテの視線はすっかり下を向いている。そういうことか……。
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