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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

おかしな吟遊詩人編

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152 音楽祭に招待された

 ククがリュートを持って、テーブルの横に立つ。
 さあ、新生ククのステージだ。

「では、何曲かやらせていただきます」

 デス系だったっけ、最初にククがやっていた激しいジャンルのものと比べるとまったく違う。
 もっと、静かで、心の中にゆっくりと染み込んでくるような曲だった。

 しみじみとした空気に部屋が包まれる。

 食事をしながら聞くものかもしれないけど、誰もが聞き入っていた。聞き入っているので、曲と曲の合間に拍手する面子も、声を出す面子もいなかった。ただ、聞いていた。

 フラットルテが「上手いだけが吟遊詩人じゃない(意訳)」みたいなことを言っていたけど、あの言葉の意味がわかる。
 今回のククがやってる曲は一つずつちゃんと自分で考えて言葉を編んでいったものだった。だから感動しやすいというか、心にすっと入ってくる。

 もとのククのやっていた音楽ってそのジャンルの中でくくられたものだったのかもな。そうなると、ジャンルの中でものすごく上に行かないと価値がなくなってしまう。

 けど、歌手である前に「詩人」なわけだから、自分の言葉でしっかり語れないとダメなんだよね。それが詩人っていうものなんだもんね。

 その詩は時として文字数が多すぎて、メロディに乗らないが、そこが日本で聞いたフォークソングぽい感じにもなっていて、独特のよさになっていた。

 連続して五曲がたて続けに演奏され、最後にククがゆっくりとおじぎをする。
「ご清聴ありがとうございました」
 ミスも少しはあったかもしれないけど、本人なりにやりきったという顔をしていた。

 私たち家族ははっと我に返ったように、ぱちぱちと拍手をする。

 さて、ベルゼブブはどういう感想を抱いたのかな。喜んでくれたならいいんだけどな。

 いきなり、ベルゼブブが席を立った。

「素晴らしいのじゃっっっ! これはよいのじゃっっっ!」
 おお! ものすごく心に突き刺さったらしい!

「正直なところ、どうせたいしたレベルじゃないから余興程度に聞けばよいじゃろうと思っておったが、ここまでよいものじゃったとは……」
 正直に失礼なことを言いすぎだ。

「うむ、よかった。よかった。まずは五万コイーヌを渡そう」
 ベルゼブブはさっと魔族の通貨単位コイーヌの金貨を出してきた。
「あの、できれば、単位はゴールドでお願い。それ、多分換金が必要だから」
 ゴールドとだいたい価値は一緒らしいので、もう全部ゴールドにしてほしい。

「わかったのじゃ。ほれ、五万ゴールドじゃな」
 ちゃんと払ってくれた。やはり、金払いは割といいな。

「ありがとうございます……。月十日、五万ゴールドずつ稼げれば安定して暮らしていけるのですが……」
 ククもお金をもらってかなり感動している。スキファノイア時代はそりゃ、大変だったろうな。あれを聞いて、お金払おうって気にはあまりならないからな……。

「それと、ぜひとも音楽祭にも来てほしいのじゃ。上手く、そこで成功すればひと財産築くことも可能じゃぞ」
 ベルゼブブがどうもうさんくさそうなことを言ったが、魔族は豪快なので一気に儲かるようなことは本当にあるのかもしれない。荷物の中から音楽祭の資料を出して、ククに渡している。

「あの、魔族の城ってどうやっていけばいいんでしょうか……?」
「参加してくれるなら、こちらから迎えに行くのじゃ」
 多分、リヴァイアサンか、もっと移動重視の速いのが来るんだろう。

「私でいいんですか……? 無名な人間ですけど……」
 ここで途端に弱気になるクク。
「人間の世界で有名か無名かはどうでもよいのじゃ。大半の魔族は人間世界の評判なんて知らぬからな」
「わかりました、こんな私でよければ行きます……」
 ククも人前で演奏してきた人間だ。ここは引かずに進む。

「うむ、まだどの会場を使うかはわからぬが、だいたい一万人から二万人ほどの観客の前でやってもらうことになるじゃろう」
「うえぇ!? その規模ですか!?」

 劇的な変化にもほどがある。観客数からいくと、百倍しても絶対に足らないよね……。

「あの、もうちょっと……小さめの会場で三百人ぐらいのところからはできないでしょうか……?」
 あっ、ククがプレッシャーに耐えきれず、また卑屈な発言をしてしまっている!

「音楽祭といえば、どこの会場も大盛況じゃ。三百人みたいな規模のところはどこにもない。しっかりとやるのじゃぞ。今のものを二十曲ほどやればよいのではないか」
 ぽんぽんとベルゼブブはククの肩を叩いた。

「自分を信じよ。おぬしの気持ちは聞いた者の心にも届いておる。おぬしの真剣さはしっかりわかる。問題はない!」
「は、はい!」
 ベルゼブブの勢いにされて、ククは答えた。

「よーし、よし! 頑張るのじゃぞ。さて、風呂に入るのじゃ」
 客人なので一番風呂は遠慮なくもらっていくスタイル。そのうち、ここに住むとか言いそうだな……。
「ファルファとシャルシャ、一緒に入るのじゃ」
「はーい!」「うん」

 そして、ベルゼブブは部屋を出ていってしまった。はっきり言って、娘と戯れるのが目的なので、これは邪魔するわけにはいかない。

 一方、ベルゼブブがいなくなったあと、ククが部屋でぶるぶるふるえていた。

「お客さんが一万から二万……。そ、そんなの……逆立ちしながら演奏しても無理です……桁が大きすぎてよくわかりません……」
「気持ちはわかるけど、これはチャンスだよ。いい結果を出そう!」

 私としては背中を押していくしかない。
「あの……猛烈に練習するので、まだこの家には置いていただけませんか……? 王都に帰るとバイトしながらになるので、練習時間が捻出できなくて……」

 生々しい理由だ。この子、本当にお金なかったみたいだからね。日本時代も、売れないバンドマンはきついって聞いたことがある気がしたけど、どこでもそうらしい。

「はいはい。料理ぐらいならいくらでも作ってあげるから、練習に励んでね」
 リュートを握り締めて、ククは言った。

「はいっ!」
(ほんとギリギリなのでまた落ちるかもですが……)4万点を突破しました!!! こつこつ点数を積み重ねてついにここまで来ました! 本当に皆さんのおかげです! ありがとうございます! GAノベルも2巻まで出ておりますので、なにとぞよろしくお願いいたします!

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