挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

おかしな吟遊詩人編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

153/280

151 音楽祭の話

 飲み会というか、ベルゼブブを交えてのたんなる食事会になった。お酒は出ているので文句はないだろう。
 ちなみに、ベルゼブブの酒はかなりきつかった。軽く飲んでみたけど、相当なものだ。

「これ、度数高すぎるんじゃない……? しかも火みたいにからい……」
「度数という概念はよくわからぬが、火のほうはよくわかったのう。これは炎の山という、火が絶えずあがっておるところでリザードマンの職人が作ったものじゃ。名前は『グレート・サラマンダー』と言う」
「そりゃ、辛いわ……。ハルカラはまた悪酔いんするんじゃないかな?」

 ハルカラが手を横に振って拒否していた。
「お師匠様、こんなの、どっちみち飲めないです!」
「ということらしいね。ベルゼブブ、もうちょっとライトなのはないの?」

「だいたい辛いのばっかりじゃな。ほぼ水みたいなのが一本だけある。名前は『ほとんど水の酒』と言う」
 魔族の性格なのか、ベルゼブブの性格なのか、両極端なんだよなあ。
 弱いお酒のほうはライカも少し飲んでいた。これなら大丈夫ということだろう。年齢的にはセーフだろうし、ドラゴンのサイズならいくらなんでも酔わないと思う。

「うん、フラットルテはこれぐらいのほうが行けるのだ」
 この家では、フラットルテが最強にお酒は強い。水かというような勢いでごくごく飲んでいく。それなりにいい酒ではあると思うので、なんかもったいないな。

「ママー、ファルファもお酒って飲める?」
 お酒に関しては姉妹で反応の違いがあるらしく、シャルシャは見向きもしないが、ファルファは興味があるようだ。
「ダメー。ファルファ、それは絶対にダメだからね。大人になるまで飲まないでね」
「えー、ファルファも大人になりたいー」

 この言葉がベルゼブブはお気に召さなかったようだ。
「ファルファよ、ファルファは大人にならなくてよいのじゃぞ。そのままでおれ。大人なんてつまらぬ。そのままのほうがよいのじゃ」
 すごく真剣な顔で、ベルゼブブは言っていた。
 これはこれで教育に問題がある気がするな……。

「えー、だってファルファ、あんまりお姉ちゃんぽくないもん。シャルシャと大きさ変わらないし……」
 しょぼんとしながらファルファが理由を話す。なるほど、そういうファルファなりの切実な理由があるんだな。

「お姉ちゃんのなり方ってよくわからないし……かけっこの速さも変わらないし、シャルシャも違う分野で頭いいし、お酒だったらリードできるかなって……」

 ベルゼブブが「くぅー! かわいすぎる! 養女になってほしいのじゃー!」と騒いでるが、無視する。養女になんて出しません。
「心配しないで。ちゃんとファルファはお姉ちゃんらしいことしてる時あるから」
 ここは私がしっかり慰めてあげないとね。
「うん……」

「あとね、お酒を飲むとああいう感じになっちゃうからね」
 部屋の奥でハルカラがいつのまにか倒れていた。おなかも出てるし、だらしない。

「ほぼ水だと思って、がぶがぶ飲みすぎて、酔いが十万の大軍みたいに一気にやってきました……吐きそうで吐けない一番きつい状態です……うぅ……」
 そのおでこにロザりーが濡れたタオルを置いてあげていたが、設置場所がずれてご臨終みたいになっていた。

「ファルファ、お酒はやめとこうかな……」
 反面教師も子供にはそれなりの威力を持つんだな……。結果的にハルカラがいい仕事をした。でも、教師のハルカラも少しは学習しろ。毎回、ぐだぐだになるまで飲んでしまう人っているよね……。

「あの、歓談中申し訳ないのだが……いいかげんククに演奏させてやってほしいのだ……」
 フラットルテの言葉で思い出した! しまった! すっかり忘れてた!

 ククは遠慮がちにいかにも「どこで言い出そうかな、まだ待ったほうがいいかな……。話題途切れたところで言い出そうと思ったけど、なかなか途切れないな……」みたいな顔をしていた。
 ああ、ククは気が小さいもんね! 自分からはじめるぞとか言えないよね!

「すまぬ、すまぬ。それでは歌を聞かせてほしいのじゃ。わらわの評価次第では、魔族の音楽祭に呼んでやってもよいぞ」
「なんだ、その音楽祭って」
 聞いたことのない固有名詞が出てきた。意味はだいたいわかるけど。

「あなたたちって、演奏会までやってるのか。文化的に高水準だもんね。それぐらいやるよね」
「演奏会ではない。音楽祭じゃ。演奏会だなんてしょんぼりしたイベントではない。ヴァンゼルド城下全体で行われる一大イベントじゃ」
 私の表現に少しベルゼブブはむくれた。

「ああ、演奏会みたいなのを同時多発的にいくつもやったり、楽団の野外マーチが出たりするのか」
「むっ、そういうこともしはするが、根本的に理解されておらん気がするな。音楽祭とは魔王様が魔族を代表して音を支配していることを確認する祭礼であるぞ」
 その説明で急に雰囲気が変わってきたな。

「よいか? 音とはこの世界のあらゆるところに広がっておるものじゃ。町を歩けば物を売る声があり、森の中でも獣が茂みを行き交う音があり、静かな部屋で瞑想をしていても、逆に音がないことを意味するシーンというような音がする。音のない場所はない」

 シーンというのも音とみなすというのは魔族特有の価値観だな。

「つまり、音とはこの世界の四大元素に匹敵する重要な要素なのじゃ。この音を魔族の長として魔王様が正しく管理できておることを確認するのが音楽祭じゃ」

 なるほど……。音そのものをかなり重要視しているんだな。そういや、ヨーロッパ中世の大学でも音楽って芸術じゃなくて主要な学問の一つって扱いだったような……。

「なので、お前の言うような演奏会を一つや二つ並べたものではないのじゃ。もっと根源的な意味を持つ祝祭なのじゃ。わかったか?」
「はい、わかりました。宗教的な意味合いが強いんだね」
「メインイベントでは魔王様が音楽を披露することが恒例になっておる。ああ、今回はおぬしらも招待されるやもしれんな」

 たしかにペコラなら招待してくるだろうな。なかばイタズラの延長線上な感じで。

「あの、そろそろククの演奏をやらせてほしいのだ……」
「ほんとだ! ククもフラットルテもごめん!」

 ククがリュートを持って、テーブルの横に立つ。
 さあ、新生ククのステージだ。
15日にGAノベル2巻が発売になりました! 何卒よろしくお願いします!

20161213_slaim_syoei01.jpg
GAノベルさんより発売中です! 5巻は2018年1月15日発売! 1巻は10刷を達成いたしました! ↑をクリックしていただければ紹介ページに飛びます!
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ