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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

おかしな吟遊詩人編

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152/279

150 成果を見せる

今回で150話を迎えました!!! ここまで来れたのはひとえに皆さんのおかげです!!! これからもスライム倒して300年をよろしくお願いします!
 その後、ククは高原の家にしばらく留まって、曲作りを行った。

 ククいわく、曲作りはできない時は全然できないものだが、ここだとすらすら出てきて、我ながら驚いたという。
 そんな話をおやつ時のテーブルで聞いた。

「ああ、それ、なんとなくわかるよ。ここ、いわゆる娯楽は全然ないからね。少なくとも、王都と比べたら、天と地の差でしょ」

 なにせ周囲には一軒の家もないし、村まで出ても、生活必需品ぐらいしか売ってない。ということは誘惑が少ないので、自分のやるべきことをやるしかない。

「そういうこともあるんですが……あっ、この土地を悪く言ってすいません!」
「そんなところで謝らなくていいよ」
 ククはかなり小心者の部類に入る。けど、音楽やってる人の中にはこういう内向的な人は一定数いるらしいので、そこまでおかしなことじゃない。
 内向的ということは、普通の人なら気にしないことまで気にしてしまうことでもある。それっていい意味でとらえれば感性が豊かということだ。

 そこでスキファノイアという攻撃的な方向性に行ってしまったのが問題だったんだけど……。

「ちょっと詰まったら、高原を散歩するんです。すると、詰まってるところが消えるんです。そんなことが何度もあって、まったく手が止まる時が全然生まれませんでした」
「わかる気がする。何の変哲もない高原なんだけど、歩いてるとなんかいい感じに気分が上向きになるんだよね」

 そもそも、高原の家で気楽に暮らしてると、ほぼ気落ちすることもないんだけど、それでもたまに嫌な気分になった時とかは、高原を散歩していた。
 すると、不思議とまたやるぞって意気込みになる。

「どれぐらい、曲できたの?」
「十七曲ですね。あんまり満足できてない曲も少しありますけど」

 同席していたフラットルテが「それなら一人でのライブもやれるな」と言った。吟遊詩人の演奏って長いものなんだな。

「あの、本当に皆さん……ありがとうございました……」
 顔の前で手をちょこんと握って、ククが言った。やさしい性格が端々からにじみ出ている。破滅とか叫んでたとは思えない。

 でも、その言葉を聞いて、ちょっと胸が痛くなった。

「ずっと、ここにいると迷惑ですし、そろそろ王都に帰ろうかなと……」
 そうなっちゃうよな。最初からそういう約束だった。
 ククは吟遊詩人だから田舎にずっと住むということはできない。ここにはお客さんが足りないからだ。

「わかった。でも、またツアーでこのへんに来た時は、高原の家に寄ってね。むしろ帰ってくるつもりでここに来て」
 大きく目を開いて、また泣きそうな顔でククは「はい。絶対に!」と言った。

「いいライブをやるのだぞ。いいライブをやれば、なんとかなる」
 フラットルテが師匠のような空気を出して言う。

「はい、フラットルテさんにもお世話になりました!」
「うん。お前ははっきり言って音楽の才能はない」
 ずてっと私は椅子からひっくり返りそうになった。ククも別の意味で泣きそうになっていた。

「しかし、世の中は才能の順に成功するものではない」
 だが、しゃべっているフラットルテにふざけた様子はない。

「だから、お前が成功することだってあるかもしれないのだ。まずは戦うのだ! 使う武器は違っても戦いは続いていくのだ!」

「はい! これからも吟遊詩人として戦います!」
 あっ、こんなところにも友情がちゃんと生まれていたんだ。

「王都に帰る時は言うといい。このフラットルテが送り届けてやる」
 少しフラットルテの表情も寂しそうなのがわかった。
 別れがつらいのはみんな、同じだよね。

「そうですね。よろしくお願いしま――」
 どんどん、どんどん。

 扉が叩かれている。
 この遠慮のない叩き方をするのは、だいたい誰かわかる。

 私がドアのところに行って開ける。
 ベルゼブブが立っていた。今日はやたらと荷物が多い。

「いい酒が手に入ったので、持ってきてやったのじゃ。今日はみんなで飲むのじゃ」
「ああ、はいはい。ちなみに仕事はいいの?」
「しっかりと部下に丸投げ……終わらせてやってきたのじゃ」

「あんまり部下に押し付けるなよと言いたいところだけど、あなた、農相だもんね。農相がばりばりやるよりは、しっかり仕事を割り当てられるほうがいいのか」
「わらわもそれなりに働いておるからのう。休日ぐらい、休ませるのじゃ。ファルファとシャルシャと一緒に過ごすぞ」
 それが目当てか。まあ、わかってはいた。

 追い返すわけもないので、ベルゼブブを入れる。無論、そこにはククがいるわけで、簡単に私が紹介をした。

「ほう、吟遊詩人か。それじゃ、酒の席で何曲かやってみてくれ」
 当たり前のようにベルゼブブが言った。たしかに偉いんだろうけど、偉そうだぞ。
「ちょっと! 無茶振りはやめてくれる? 我が家で暮らしてる人はみんな家族なんだからね。街の中で大道芸人見つけたみたいな扱いは困るんだけど?」

「吟遊詩人というのは、酒宴を盛り上げるためのものではないか。まっとうな理由で仕事を要求して何が悪い。金ぐらいなら出すのじゃ」
 たしかに宮廷などでそういうことをやるタイプの人もいるはずなので、なかなか難しいところだけど。

「アズサさん、私、やります。むしろ、やらせてください」
 ククがかなりやる気のある顔をしていた。

「自分が新しく生まれ変わってやっていけるのか、私の歌を聞いたことのない人に聞いてもらって、判断したいんです」

 本人がそう言ってるなら止める理由もないな。
「ベルゼブブ、今すぐククがあなたを泣かしてみせるからね!」
「えっ? 今すぐじゃなくて、酒の席でお願いしたのじゃが。わらわはまずは娘二人にお土産を持っていくのじゃ」

 なんか、出鼻くじかれた感じだなあ……。
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