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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

おかしな吟遊詩人編

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149 ククとしてやっていく

「うん、じゃあ、ククはこの方向性でもう一度吟遊詩人をやってみようか」
「はい、わかりました!」
 これまで聞いた中で一番元気なククの声だった。

「この曲調ならスキファノイアって名前のままでやってもいいかもね。多分、破滅的な曲の中にも神話的モチーフとかあっただろうし」
「いえ、音楽ジャンルも実質変わりますから、ここはアーティスト名も変えます。個人的に『森羅万象の探索者エンサイクロペディカ』がいいかなと思います」

 中二病っぽい雰囲気は変わらず残ってる。
「ううん、私の趣味ではないけど、名前でも目立つほうがいいのかな……。最後はククが決めることだから、いっか」

 よし、これでククの将来の方向性が決定した。とてもいいことだ!

「待ってください、待ってください! まだアタシが歌詞を見せてません!」
 ロザリーがそこに出てきた。ああ、まだロザリーが残っていた!

「ごめん、ごめん。いつのまにか大団円ムードになってたよ。ロザリーの歌詞だね」
 なお、ロザリーは実体はないけど、ペンを操作して紙の上で動かすことはできるので文章も書ける。

「どういうものが正しいのかよくわからなかったので、とりあえず実体験を元にしてみました」
「うん、それでいいんだよ。本来、スキファノイアっていう吟遊詩人の幅を広げていこうっていうのが趣旨だし」

<虚無 作詞ロザリー 作曲クク>

「長く、一つのところに止まってると、昼でも真っ暗に感じる♪
 暗い、暗い、本当に何にもない♪
 死ぬんじゃなかったかな。でも生きててももう死んでるかな♪
 笑い方、もうわからないな♪
 死にたくても死ねない、そんな夜♪」

 静かなククのリュートが終わった。
 …………。
 歌詞にも書いてあるけど、暗すぎる。実体験とはいえ、これは……。
 重い歌詞の曲なんて日本にもたくさんあるだろうけど、自殺した人の歌詞っていうのは多分存在しなかったので、かなり強烈だ。

「あっ、姐さん、アタシは今は楽しく生きてますからね? こんな気持ちじゃないですからね?」
 これはまずいと思ったのか、ロザリーのほうからフォローを入れてきた。

「あのさ、ロザリー、もうちょっとだけ前向きに生きられる歌のほうが聞いた人としてはうれしいんじゃないかな……? ロザリーの経験を否定するわけじゃないんだけど……」

 いや、やっぱり否定なのかな。
 暗い曲があったってもちろんいいんだ。明るい曲しかダメというほうがよっぽど問題かもしれない。しかし、ククもこういう曲を歌い続けるのはきつい気はする。
 と、とにかくククの反応を見てみよう。まだ感想を聞いてない。

 ククはぼたぼた涙を流していた。
 声を上げて派手に泣いているわけじゃないけど、それでも何粒も涙を落として、静かに大泣きしているといった感じだった。

「クク、どうしたの……?」
「こういう……こういう示し方があるんですね……。私、破滅とか死とか、歌って……歌ってきましたけど……形だけで……。だって、本当に死んだこととかなくて……」
 うん、それはそうだろと思ったけど、そのツッコミは野暮なので、やめておく。

「死んでからも悩んでる人の……その、言葉の強さには……勝てないなって……。スキファノイアを長くやってきたけど、本当の言葉みたいなの伝えられてないなって……」

 そこでククはようやく顔を上げた。

「私……スキファノイアって名前は捨てます。それで、アーティスト名みたいなのも捨てます。もう、ククっていう自分の名前だけでやります!」

 困難に立ち向かっていくぞという強い意志をその瞳から感じた。
 もう、ククはきっと大丈夫だ。

「ファルファちゃんとシャルシャちゃんと、それとロザリーさんの方向性を足して、もっと深いことをしっかりとリスナーに届けていこうかなと……。でなきゃ、何十年何百年吟遊詩人をやっても意味がないなって……」

「そうだね、ククなりに次の一歩をどこに踏み出すか決められたのなら、すごく意味のあることだと思うよ」
 この道が楽かはわからない。茨だらけの道かもしれない。それでもその道を進むと本人が定められたのなら、問題なんてほんとにつまらない、くだらないものだ。

 なかなか感動的な空気になった。ライカとロザリーは泣いている。
「よし、これで今日はおひらき――」

 ぽんぽんとハルカラが私の肩を叩いた。
「お師匠様の歌詞をまだ見てないです。見せてください」

 げっ……。このまま司会進行のポジションで発表せずに逃げようとしたのに……。

「ダメですよ。ここは平等にお願いしますね」

<スペシャルなラブ 作詞アズサ 作曲クク>

「スペシャルなラブで、どこまでも、突き進めるよ~♪
 運命はこの手の中に~あ・る・か・ら~♪」

 冒頭ですぐに止めてもらいました。
 自分で書いた歌詞なので、ここはフラットルテにすべて解説をしてもらう。というか、勝手に解説された。

「ありきたりですね。テーマがベタベタですし、どこかで聞いたことのある歌詞をつぎはぎにして作った感じが強くします。歌詞の主人公の内面がまったく表現されていません。この歌詞の主人公は本当に恋愛をしてよかったと思っているんでしょうか」

「もういいから! 私も恥ずかしい歌詞だってことはわかってるから!」

 わかりやすい歌詞がいいなと思って恋愛の歌詞にしたら、コレジャナイ感が出たので封印しようとしたのだけど、許してもらえなかった。

 こんな調子で、ククが吟遊詩人として生きていくことと、どんな吟遊詩人になるかということとが、見事に決まりました。
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