挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

おかしな吟遊詩人編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

149/282

147 イメチェンを狙う

 音楽にあまり興味のないメンバーの声を聞いても意味もないだろうし、言う側も何を言っていいかわからないだろうから、指導はフラットルテにやってもらうことにした。

 フラットルテの部屋に移って、反省会を開く。私もそこに参加した。私がここに逗留させると決めた以上は部外者として振る舞うのもおかしいからね。

「ええと、まず、リスナー視点で言わせてもらうと――今の時代、孤独系寄りのデス系は売れないぞ。客がつかないジャンルだからきつい」
「そ、そうですよね……」
 ククのキャラの時は、この子、すごく素直というかネガティブで、だから相手の言葉をあっさり聞く。
 やっぱり、あのジャンルではウケないんだな。こう言うと失礼だけど、うるさいだけという印象はあった。

「そこで、スキファノイアを過剰系の花系寄りの音楽性に変えてみたらどうなのだ? ほら、過剰系の花系なら、クライム系との親和性も高いではないか」
 また知らない専門用語出た! 吟遊詩人業界ってややこしいな!
「あ、あくまで……私はクライム系の中の吟遊詩人としてやってます……。むしろ過剰系とは違うというところにプライドがあるというか……。そりゃ、過剰系のほうが売れてますけど……」

 どうしよう。来てしまったはいいが、私にはまったく理解できないので、発言のしようがない。

「スキファノイアが言いたいこともわかる。フラットルテも昨今の過剰系ばかりが評価される吟遊詩人シーンに疑問符を感じはする。しかし、よいところを取り入れるのは悪いことではない。たとえば『せいるい教団』などはクライム系の吟遊詩人たちが過剰系に鞍替えして、ヒットしたではないか」
「それもわかります。が……だからこそ、技術で勝負できるデス系がいいというか……」

 作り手側のこだわりみたいなのは、どこの世界でもあるらしい。
「ふうん、スキファノイアよ、お前、売れ線を作るのが怖いだけだろ」
 フラットルテが冷めた瞳で言った。

「ち、違います……。そういうわけじゃないです……。ただ、私は技術重視のデス系に愛着があって……」
「フラットルテから見れば、それも言い訳だ。ファンがたくさんつく系統の吟遊詩人をちょっとダサいと見下している部分があるのだ」

 これ、本当にファンタジー世界の会話だろうか……。
 やけに生々しいというか、日本の出来事っぽいな……。日本の若手バンドマンとかも絶対こういう話をしてるよね……。若手バンドマンと仲が良かったわけじゃないから憶測だけど……。

「だいたい、技術で勝負も何も、お前、『聖涙教団』より下手だからな。あっちのが技術力あるからな」
「そ、それは、あくまでもフラットルテさんの意見なだけというか……。こう、音楽って魂を感じるかどうかが大事っていうか……」

「はぁ……わかった、それでは実際に見せてやる。そのリュートを貸してくれ」
 商売道具だからククはちょっと戸惑ったけど、楽器を渡した。いきなり膝で折るとかはしないでね。

「よいか、見てろよ」
 いきなりフラットルテはそのリュートをものすごく華麗に弾きはじめた。
 高速で手が弦を押さえていく! なんだ、この超絶技巧! しかも、技巧だけじゃなくて、しっかりメロディもいい!
 そこにフラットルテは歌も入れていった。

「よく晴れたせいでかえって寒い安息日~♪ あくびをしながら君が来るの待ってる~♪
手袋は片方だけ落としてしまったみたいで~♪ 余った右手は君とつないでいたいな~♪
雲よりも高く 雑音のないところまで 飛んで 飛んで 飛んでいこう~♪ イェイ、イエイ~♪」

 なんか、まともな歌! すごく、ちゃんとした歌!
 しかも、歌も上手い! 声の伸びがすごい!
 テレビつけてこんな曲、流れてても全然違和感ない!

 私はフラットルテの背後にドラムとかベースの人が立ってるような幻が見えた気がした。
 やっぱり、このリュートって楽器、ギターそのものだな。ギターにしか聞こえない音が出てる。

 演奏が終わって、リュートの音色がぱっと止まる。
 私は思わず、拍手をしていた。
「フラットルテ、こんな才能、あったんだね! 涙出るかと思った!」

「実は、若い頃、仲間内でちょっとだけやっていたんです……。でも、たいした技量じゃないんで恥ずかしいですけどね……。あくまでも上手な素人です」
 言いたいことはわからなくもない。それを職業にするかどうかはまた別だ。

 一方で、ククは呆然としていた。まるで、まだククの頭の中でだけ違う曲が流れているようだ。現実に戻ってきてない。

「ほら、このフラットルテ様でもこれぐらいは演奏できちゃうのだ。お前は技量で押すとか言っておいて、フラットルテより下手なのだ。デス系でやるなら、せめてもっと演奏水準を高めるんだな。これでよくわかっただろ」

 ククは青くなっていた。凍死したみたいだな……。

「ご、ごめんなさい……。いろいろ試してみたいと思います……。デス系にこだわるのはやめます……」

「あのさ、部外者の意見なんだけど、世界観が特殊すぎてお客さんが来ないと思うんだよね。もうちょっとわかりやすい歌詞を書いてみたらどうかな?」
「で、ですが……長らくこういう芸風でやってきたので、血とか毒とか破滅とか終焉とか刹那とか悪魔とかナイフとか溺れる魚とかいった言葉が入ってる歌詞のものしか書けません……」
「溺れる魚ってワードはそんなに出てこないでしょ」
「過去、六曲で使っています」
 気に入った表現を何度も使うやつだ!

 ほかは、だいたい同じ世界観の言葉だ。幅が狭い。むしろ、それでよく長らくやってこれたな。どっかで枯渇するだろ。
 その時、いいアイディアが浮かんだ。

「わかった。ここはこの環境の強みを生かそう」
 少なくとも、自分の中ではいいアイディアなんだけど、いけるよね?
「せっかく家族が多いんだし、みんなに歌詞を作らせてみるの!」



 二日後、家族がそれぞれ歌詞にあたるものを書いて持ってきた。
 ただし、フラットルテはすでに一曲聞かせてもらったので、今回はパスしてもらって、解説役をお願いした。本気を出されると、フラットルテの独り勝ちになる危険も高かったし。

 各人が作った歌詞に即興でククがメロディをつけて歌う。こうすれば、まったく新しい世界観のものを生み出すことができるんじゃないだろうか。

「はい、それじゃ、一曲目から。ライカの歌詞だね」
「ふははは、吾輩スキファノイアがあらゆる歌詞を美声で歌い上げてやるわ!」
「あ、そのキャラも封印していこうね」
「…………はい。わかりました」

 では一曲目。
 ククがリュートを弾き出した。

<嗚呼、精進 作詞ライカ 作曲クク>

「一歩一歩精進していくことでしか、大成は~ない~♪ そして何かを成し遂げてもそれもまた通過点でしかない~♪」
 私は手で「×」印を作った。ここで止めてねということだ。

「ライカ、これは歌詞としてはメッセージ性が直接的すぎるね」
「ダメでしたか……」

「ダメだ。歌詞はあくまで詩なのだ。お前は詩を理解してないのだ。出直せ」
 容赦なく解説役が否定してきた。
 ライカ、まあまあショック受けてるな……。悪いメッセージではないけど、歌詞にはあってないね。
本日(15日)、「スライム倒して300年」2巻公式発売日です! 地域によって前後していますが、だいたい売っているかと! また、活動報告に2巻のことと、コミカライズのキャララフについて書いております! ご覧ください!

20161213_slaim_syoei01.jpg
GAノベルさんより発売中です! 5巻は2018年1月15日発売! 1巻は10刷を達成いたしました! ↑をクリックしていただければ紹介ページに飛びます!
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ