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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

おかしな吟遊詩人編

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146 居候が増えました

「音楽やめるべきじゃないよ。続けなきゃ!」
 私はそう断言する。

「そりゃ、今は吟遊詩人として全然売れてないかもしれない。だけど、それでもかなり長い間、やってきたってことは、よほど好きじゃないとできないことのはず。それをあっさり封印しちゃうなんてもったいないし――多分結局、いつか後悔する」

 何かに打ち込むのって若い時が多い。だから、一時の熱狂でそのうち飽きてしまったり、ほかに興味が移ってしまうことだってある。
 しかし、スキファノイアというアーティストはそんな短時間で活動をやめた存在じゃない。下手の横好きって言葉があるけど、そういう意味では彼女と音楽はよく合っていたんだ。

 私は少し腰を浮かせて前のめりになると、ククの手をぎゅっととった
「あ、あう……」
 いきなりでびっくりさせてしまったかな。
 でも、私の気持ちも生半可なものじゃないって示さないと、赤の他人が安全なところから言いたいこと言ってるだけって思われる。

「前向きにほかの仕事に移るなら止めたりなんてしない。でも、今のあなたは後ろ向きにしょうがなくほかに移ろうとしてる。それなら今の活動を続けるべき!」

 前世で東京に住んでいたから、夢破れて地元に戻る人の声や顔に接することもあった。
 みんな、たいてい自分を誤魔化すような苦笑をしていた。
 本音を言えば、「納得はいっていない」と顔に書いてある。納得いってなくても、家庭の事情や経済的な事情で地元に帰るしかないことはあるんだ。

 それでも、人は決断しなきゃいけない。すべての可能性を同時に生きることはできない。だから、その決断は尊重する。

 だけど、ククは決断したんじゃなくて、消去法で音楽以外の道に進もうとしてる。これは止めるべきだ。

「まずは音楽のこと、もう一度しっかり考えて。売れてないことが問題なら、それについて考えてみて。それまでは、ここにいていいから! 三度のごはんなら出すから! それで将来のことを決めてから王都に帰って!」

「うえっ……そんなの、本当にいいんですか……? 私、家賃とか払えません……」
「それぐらいいいよ。音楽続けろって言っちゃった手前、私もやれる範囲で向き合うから! 胸を張って、王都に戻れるようになって!」

 私は私で一人で決めすぎちゃったかもしれないけど、このまま王都でよろしくやってねと手を振る気にはなれない。

「やっぱりご主人様はご主人様ですね」
「姐さんは姐さんです。うん、間違いねえな!」

 なんか、フラットルテとロザリーがやけに首肯していた。自分としては、割とナチュラルにやってるつもりなんだけどな……。



 こういった経緯で、私の家に、一時的に家族が増えました。
「アルミラージのククです……。よろしくお願いします……」

 夜、ククは家族に自己紹介をした。ククのほうもこの家族ってどういう人間関係の集団なんだとちょっと思っていたらしい。冷静に考えたら、よくわからない集団だよね。

「ここは近くに家もないから、夜でもリュートの練習もしていいよ。娘二人が眠る時間まではいくらでも弾いていいから」
「わ、わかりました……。それじゃ、お近づきのしるしに、演奏を……」

 みんなの前に出て、ククはリュートを持つ。
 くるっと後ろにターンして、また顔を前に向ける。

 すると、表情が自信なさそうなものと全然違っていた。
 あれ、キャラが変わってる!?

「ふははは! 吾輩の死と破滅の饗宴にようこそ! では一曲目だー! 毒毒毒、毒毒、毒毒毒毒、毒毒ウウウウウウウウウウウ~!」
 そっか、スキファノイアのキャラになってるんだな!
 リュートから金属的な轟音が発せられる。こんなギター的な音って出せるものなんだ……。

「ニガヨモギ、ニガヨモギイィィィィィィィ~~~~~~~~!」
 しかし、相変わらず、歌詞がよくわからない。

 ファルファはまったく受け付けないのか、耳をふさいで目も<× ×>みたいになっている。よほど、合わないんだろう。
 シャルシャはファルファとはある意味対照的で、椅子で寝ていた。マジで? この騒音の中で眠れるの? いや、音楽なんだから騒音って言うと失礼に当たるのか。

 上流階級っぽさのあるライカは首をかしげていて、ハルカラはつまんなさそうだ。とにかく、評判がよくないのはそのあたりの反応でもわかった。
 ロザリーは割と耐性があるのは本当らしく、まあまあ興味深そうに聞いている。
「今は化粧をあまりしてないからインパクトが弱いですね。髪の毛をいっそ逆立てたらどうでしょうか?」
 もっと過激にするつもりか……。

 家族の中でも、やっぱりフラットルテが異色で、腕組みをしながら確かめるような顔をしている。

「なるほど。一曲目は『毒の時代(魔神暦二十八年バージョン)』か」
「フラットルテ、その魔神暦って何なの?」
「スキファノイアはデビューしてからの期間を魔神暦という独自の暦で表現しているんです。つまり活動開始から二十八年目に作ったアレンジですね。原曲の『毒の時代』はデビュー二年目に作った初期の代表曲です。最初に演奏した王都の酒場『人生は夢亭』で十六人を動員しました」
 ほんとにフラットルテ、詳しいな。詳しすぎるだろ。それと、もうちょっとお客さんほしいよね……。
 そんな話をしていると、その曲が終わった。

「ふははははっ! 吾輩のテンションも高まっておるぞ! 二曲目は『車裂きの刑の下で咲いた一輪の花』だー!」
「そうか、頭を振れる系統の曲を畳みかけてきているのだな」

「フラットルテはどこでその情報、仕入れてるの? それと、あなた自身は頭を振ったりしないんだね」
「フラットルテは音楽を純粋に聞きたい派なので。暴れたりはしません。あと、ブルードラゴンが暴れると危険です」
 思った以上に実際的な理由だった。たしかに人の姿をとっているとはいえ、音楽で興奮してる間に、ドラゴンに戻ったりしたらシャレにならないよね……。

「よーし、次は『一億年戦争』『流血の聖人』『カラスの罪』と立て続けにいくぞー!」

 あっ、ヤバい。これ、意外と時間がかかるやつだ。一曲や二曲で終わってくれないんだ。
「うえ~ん! 曲と曲の違いがよくわからないよ~! 全部一緒に聞こえる!」
 ファルファ、それ、かなり本質的な批判だから言っちゃダメ!

「ごめん、クク、そのへんでやめてくれる?」
 あんまり聞きたくない人間が過半数以上いるので、終わりにしたほうがいい。
「だ、誰のことだ? わ、吾輩はスキファノイアである! ククなんてかわいらしい名前の存在ではない! お前らに真の絶望を届けに――」
「あっ、そういうのはもういいんで」
「…………はい、わかりました。……ごめんなさい」

 ククのキャラに戻った。
「いきなりの演奏でいいプレイができてなかったかもです……。二箇所ほどリュートのミスありましたし……」
「おそらく、そういう次元の問題じゃないんだよね」
 これ、思ったよりも問題解決に時間を要しそうだな……。
2巻、公式発売日は15日ですが、すでに都内近辺では売られているところもあるようです! 14日にはかなり多くの場所で売られているかと思います! なにとぞよろしくお願いします!

2巻のおまけエピソードでは本編では微妙に尺の長さ的に書きづらい、ハルカラのいい話を載せました。是非ともよろしくお願いします!

皆さんのおかげでコミカライズまでたどりつくことができました。どうせなら、次の夢(ライカやベルゼブブが動いてるところがもしも見れたらうれしいな……)も読者の皆さんと一緒に見ることができたら最高だなと思います。どうかご声援、よろしく願いいたします!

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