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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

おかしな吟遊詩人編

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145 バニーガール(ウソは言ってない)

 ククの話は私もそれなりにわかった。実体験ではないけど、友達の弟に役者を目指して上京したものの、芽が出ずに苦しんでいる人がいた。収入の大半はバイトだって言ってたな……。
 ちょくちょく映画やドラマに出てる人も生活がギリギリの人もいるそうだし、こういうのは有名になるまではきついものらしい。

「倒れるぐらい、栄養が足りてなかったってことだし、しばらくはここでゆっくりしてたらいいよ」
 ククが驚いた顔になったが、そこで取ってつけたように顔を曇らせた。
「うれしいです。ただ、でも…………」
「でも?」
「じ、事務所の了解を得ないと……ダメかな、なんて……」

「あなた、事務所とか所属してるの?」
 なんかうさんくさかった。
「ご主人様、スキファノイアは事務所に所属していた時期はないです。個人の活動です」
 吟遊詩人マニアのフラットルテが教えてくれた。

「す、すいません……。はったりです……。いいかっこしようとしてました……」
 なぜ、今更いいかっこしようとするのか。まあ、人によって守らないといけないプライドのラインってあるし、そういうものなのかな。

「最低五日はここにいて、体力でもつけて。ここは高原だから空気はおいしいし、静養するに悪いところじゃないよ」
「さすが、ご主人様! 太っ腹です! いよっ、トロール腹!」

 フラットルテが褒めてくれてるようだけど、ちょっとバカにされてるように聞こえる……。この世界では太ってるということは金持ちの象徴だからプラスのイメージという部分もあるのだ。個人的にはあまりおなかが出ないほうがうれしい。

 ロザリーがククの前に立った。浮いてるので厳密には立ってはないが。
「そんじゃ、空いてる部屋に案内しやすぜ。ここはきっと創作活動にも精が出ると思いますよ。がつがつ新曲作ってくださいね!」

 ククは幸薄そうな半笑いで対応していたが、伏し目がちになってしまう。

「ありがとうございます……。ただ、その……そろそろ音楽活動をやめようかなと……。スキファノイアを解散しようかなと……」

「個人でも解散って言うのか?」とフラットルテが指摘した。

「それは……すいません、かっこつけました……」
 体面にこだわる傾向にあるけど、アーティストなのでそういうものなのかもしれない。
「スキファノイアの長い活動にもそろそろピリオドを打って、終幕宣言をしようかなと……。それで第二の人生を歩もうかなと……」

 まだ、大物感出してる気もするけど、言いたいことはわかる。そりゃ、どんな物事にも終わりはあるからね。それ自体は悪いことじゃない。そんなの個人の勝手だし、ククってこの子が決めればいいことだ。

 しかし、私はククの表情を見ていて、かなり引っかかるものがあった。

「ねえ、クク、あなた、第二の人生についての計画とか夢とかはあるの?」
 ずばり、私は聞いた。
「富くじを買って、一等の一億ゴールドが当たって、一生だらだら暮らす――というのが第一希望です」
「ボケとかいらないんで、真面目に答えてね」
 想像以上に人生を舐めているので、少しイラッとした。

「そうですね……なんかアルバイト的なことをしていけば……そのうち本当の自分に出会えるかなと……」
「予想はついてたけど、完璧にノープランだね、それ!」
 この子、音楽活動を休止したとしても、それからの人生設計がない。

「いえ、ご主人様、スキファノイアを続けてもお金は増えないでしょうから、アルバイトの時間が増えれば結果的に裕福になりますよ」
「フラットルテ、皮肉でも何でもなくナチュラルに辛口コメントをしてくるね」
 そりゃ、この音楽活動を続けて儲かるようにはお世辞にもまったく見えないけど。

 だが、そこでククは顔を赤らめて右手で口元を押さえた。なんだろう、今になって素のキャラがNGなんてこともないだろうし。
「じ、実は……王都のこういうところから何箇所かオファーはいただいていて……」

 チラシ的なものをククは数枚、テーブルに置いた。

=====
バニーガール・スタッフ募集
『紳士の社交場 ウサギの館』ではバニーガールを探しています。
月給 三十万ゴールド~六十万ゴールド
※ごひいきのお客様がつけば百万ゴールド超えのスタッフも!
※アルミラージの方はアルミラージ枠でさらに月給プラスも!
=====

=====
給仕役が獣人だけの健全な喫茶店『たのしいけもの』
月給 五十万~八十万ゴールド
給仕役随時募集中 詳しくは東八番街、居酒屋『キツツキ村』隣地下一階のお店まで
=====

「…………」
 ほかにも何枚かあったけど、おおかたそういう感じのものだった。
 全体的にいかがわしい空気があるな。

「ああ、獣人はこういうの、一定の需要がありますからね……。フラットルテも王都を歩いていて、スカウトされたことがあります。こんな低俗な店で働けるか、ブルードラゴンを愚弄するなと冷気を吐きましたが」
 冷気を吐くのもダメだぞ。けど、気持ちはわかる。

「とくに、アルミラージって人気があるんです。ただでさえ、バニーガールという服装があるぐらいですから。スキファノイアをスカウトする奴がいてもおかしくないかと」
 ていうか、バニーガールってこの世界にもあったんだな。むしろ、角やら耳やらついてる人間が暮らしてる世界だからこそ、誰でも思いつくことなのか。

「こっちの業界だったらいくらでも稼げる、しかも若い期間もすごく長いからいいって、かなり言われます……」
 肩を落として、儚げにククは笑う。
「最初は音楽でずっとやっていくぞと突っぱねていたんですが、ここまで伸びないのなら、こういう求められてるところで働くのもいいのかなって……」

 いや、職業に貴賤はないとはいえ、こういうのってよくないんじゃ……。
「あのさ、もう一度聞くよ。ククは納得してるの? 音楽はもう面白くないって思ってるの?」

 ククはすぐに首を横に振った。
 さっきと比べると目に意志の力が宿ったと思った。

「そんなことありません。私は音楽を愛してます!」

「なんだ。じゃあ、迷うことなんて何もないじゃない」
 私はうんうんとうなずいた。

「音楽やめるべきじゃないよ。続けなきゃ!」
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