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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

おかしな吟遊詩人編

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144 売れない吟遊詩人クク

2巻発売日(4月15日)が近づいてきたので、どこまでできるかわかりませんが、しばらく毎日更新をやります! (ひとまず今日の更新分は4月12日という扱いです) また点数39000点突破ありがとうございます! 4万点を目指します!
 これ、マジで倒れてるんじゃないか!?
「ご主人様、大変なことになりました! スキファノイアが気を失っているようです!」
「やっぱり、そうだよね! 助けるしかないな!」

 ちゃんとしたライブのイベントならツアー関係者とかいるだろうけど、絶対に個人で活動しているからそういう事務所の助け的なのもないはずだ。たった二人の客の私たちで面倒を見るしかない。

 これは穏やかじゃないな。
 なにせ、私は前世、倒れて過労死しているからね。他人事として扱うには似すぎている。

 私は近づくと回復魔法をかけることにした。
 基本的にこれでどうとでもなるはずなんだけど。ちょっと顔色がよくなったぐらいで、苦しそうな表情は変わらない。もしかして重い病気なのか……?

「か、かたじけない……。信奉者に助けられるとは……。吾輩一生の不覚……」
 よかった。意識は戻ってきているようだ。
「あの、そういうキャラ作りとかもういいんで、普通にしといてください。どこか悪いところありますか? あったら言ってください!」
「わ、吾輩は……」
「その吾輩って一人称もキャラ用のだったらやめてね」

 しばらく、スキファノイアの言葉が途切れた。

「私……健康です……。アルミラージとして八十年間、病気したことないです……」
 あっ、やっぱりキャラの要素を外したら普通にしゃべるんだ。
「おなかすいてるんです……。ツアー中でお金なくてほとんど食べてなくて……」

「なるほどね。わかったよ。だいたい、事情はわかった」
 この子、異様に軽い。いくらなんでも軽すぎる。

 これはお医者さんのところに運んで解決する問題でもないな。絶対にずっと無理をしている。少しだけ面倒を見るか。業界?に詳しそうなフラットルテもいるわけだし。

「フラットルテ、ライカたちを集めてきて。少し家に泊めて太らせる」
「ご主人様、いいんですか? 無茶苦茶面倒くさがってたのに」

「乗りかかった船だと思うことにするよ。私もこうやって倒れたことがあってね。慢性的な問題だろうから、きっちり解決してあげたいの」
 もちろん、吟遊詩人に拒否られるなら、どうしようもないけど。

「ありがとうございます……本名はククと言います……」
 どうやら避けられてはいないらしい。
 それにしても、アーティスト名と比べるとかなりかわいらしい名前だな……。

「ライブをキャンセルして都合悪いとかそういうことはある?」
「日程とか何も事前告知してないので大丈夫です」
 やっぱりフリースタイルか。



 私は家族を集めると、事情を話して、ククを高原の家に連れていった。

 ライカが料理を作って持ってくると、お皿があっという間に空っぽになる。食べられる時に食べておかないといけないぞと思ってるのか。冬眠前のクマみたいだ。

「おいしい! おいしい!」
 がつがつ食べていくので、それを見ていたハルカラやフラットルテも口を空けていた。ライカは「ここまでうれしそうに食べてもらえると作りがいがあります!」と言っていた。それももっともだと思う。
 料理が胃袋に入るにしたがって、ククの顔色もよくなってきた。

 回復アイテムが料理になってるゲームを見ているみたいだ。ピザをとった瞬間、ライフゲージが回復的なやつね。昔、ゲームしてた頃は幼心に、すぐさま食べてすぐさま回復って、体の構造おかしいのではと思った。

 結局、五人前ぐらいの料理をたいらげたクク。そのあと、お風呂にも入らせた。ちなみに、濃い目の化粧が落ちたら、元のイメージより三割ぐらい華奢で気弱そうなウサ耳の女の子になった。

 やっとククが一息ついたところで話をすることに。
 遍歴型吟遊詩人に無茶苦茶詳しいということでフラットルテと、そこそこ詳しそうなロザリーも同席させている。

「余計なお世話かもしれないけど、あなた、継続性のある生活が送れてないよね? 過去にもこんなふうに倒れたこととかあったりしない?」
 私に聞かれて、途端に彼女は詰問でもされてるような表情になった。あっ、これはそんな人付き合いが得意なタイプじゃないなとわかった。これまでは食事に意識がいっていて、私たちのことはあんまり意識せずにいたらしい。

「倒れたことは……あ、あります……。何度か……」
 声もやたらと小さくて、かわいらしい。一人称吾輩でやってた吟遊詩人のキャラと全然別物だ。

「吟遊詩人だけでは全然食べていけないので、いろんなアルバイトをやってて……。吟遊詩人とかぶらないように、深夜のものが多くて……。それで寝不足の時とかも……」
「あ~、それな。そういうやつな」

 夢追いかけて、無理をしちゃう人っているんだよね。
「今回の全国行脚ツアーも、もうちょっとチップが入るかなと思ったんですが……その……一ゴールドも入らない時も多くて……食費をできるだけ削って回ってました」
 そりゃ、倒れるわ。むしろ、倒れるために活動してるんじゃないかという気にすらなってくる。

「まともに利益が出せてる遍歴型吟遊詩人はほんの一部と言いますからね。フラットルテの知ってる範囲だと、儲かってるってはっきりわかるのは、パイロットフィッシュとアンデルセンとスノーホワイトと冷たい紅茶楽団と……」
 フラットルテが出しているアーティスト名を出されてもよくわからないけど、大変な世界だということはわかった。

「でも、そういう吟遊詩人はかなりとんでもない額のお金を集めてたりしてますからね。一日で三百万ゴールドは稼げるだなんて話もフラットルテは聞いています」
「一日で三百万か……。理論上は年に一日働くだけで食っていけるってことだね」

 小さく、ククが相槌を打った。
「私も……そういう人たちにあこがれて……六十三年前にアルミラージの村を出たんです……。吟遊詩人としてビッグになるぞって……。偉大なデス系の吟遊詩人になるんだ、弱い自分も捨てて強いデス系の吟遊詩人として生きるんだって……」

 地方から有名なアーティストになろうとして東京に出てくる子と同じ感覚だ……。
 あのキャラも素が内気だからこそ望んでたものなんだな。

「でも……」
 そこでククの言葉が途切れた。
 涙がテーブルに落ちる。泣いているらしい。
「な、鳴かず飛ばずで……全然お客さんも集まらなくて……。何度もやめようと思ったんですけど、あと一年だけ頑張ろうって……」

 あああああ! なんか聞いてるこっちも切なくなってきた!
 たしかに諦めようにも諦めるタイミングがわからないよね!

「うあああああああああああ! なんて悲しい話なんだ!」
 ロザリーが号泣している!
 涙がぼたぼた落ちている。実体ない涙だから何もぬれたりしないけど。

「きついですよね、つらいですよね! アタシもわかります。ナスクーテの町に来てた吟遊詩人もそんなつらい状況で、なんとか笑顔を作ってやってる人がたくさんいたはずなんです!」
 ロザリーも苦労人だから、共感できるんだな。
2巻の情報はちょっとずつ活動報告にアップしておりますので、またご覧ください! 新規の案件があったら、ここに書いておきます!

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