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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

おかしな吟遊詩人編

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143 帰るタイミングが難しい

39000点突破しました! ありがとうございます! 4万点目指してこれからも更新します!
「はははっ、この吾輩の破滅の歌声はいかがであったか?」
 あっ、スキファノイアのMCがはじまってしまい、帰りづらくなった……。
「ツアーでフラタ村に来たのは初のことであったが、お前たちの熱気を感じるぞ!」
 いやいやいや、一曲目が終わっても誰も拍手すらしてなかったよ!

「地方であるし、今回やる曲は有名どころで構成してやっておるのだ。次も吾輩の代表曲、『灰色の夢』だ!」
 代表らしいけど、当然聞いたこともない!

「黒と白をうおおおおおおおおおおお! あああああああああ! 足したらあああああああああああああ、灰色おおおおおおおおお! 黒をもっと足したらあああああああああ、濁るうううううううう!」
 歌詞が雑。もうちょっとメッセージ性を入れてほしい。

 フラットルテは腕組みを続けたまま、時折うなずいている。
「ああ、いかにも巻き込み系ですね。これだけ客に暴れるように仕向けるとか」
「ごめん、何一つよくわからない」

「ほら、クライム系はリュートを歌声よりも中心に据えるところがありますけど、とくにデス系は耳をつんざくような音を出しますよね。そして孤独系はその名のとおり、孤独を熱唱する傾向があり、巻き込み系は客と一体になるライヴパフォーマンスを心情としています」
 私の知らない魔法体系の呪文についてずっと話をされているような印象。

 ちょんちょんとライカに肩をつつかれた。
「すいません、ハルカラさんの体調が悪くなったので、我は抜けます。あと、ロザリーさんが興味ないので抜けるそうです」
「あっ、うん、どうぞ……」
 ハルカラが「靴の中のかかとがかゆくて、かけそうでかけないので離脱します」と言った。そういう、かゆくてもかけないのつらいけれども、仮病ですらない。

 むしろ、こっちから帰るって言い出すべきだったかな……。これだと私も帰るってちょっと言いづらいぞ。フラットルテは聞いてるし。
 そんな中、二曲目が終わった。

「おっと、吾輩のパワーで酸欠で退場する者が続出しておるようだな!」
 野外なんだから酸欠は起きないだろ……。ライブハウスじゃないぞ……。それと、この人、一人称、ずっと吾輩なんだな……。

「三曲目も王都の会場を熱狂の渦に巻き込んだ『月デ溺レル』をやるぞ!」
 そう言いながら、弦の調整をはじめた。少し時間がかかるらしい。

 気にかかることがあったので、この隙にフラットルテに聞いてみた。
 むしろ、私とフラットルテしかもう客がいない。

「王都って、こんな音楽で盛り上がってるの?」
「そうですね、スキファノイアぐらいだと三十人ほどは動員してるんじゃないでしょうか」
「また、微妙な数だね……」
 まったく誰も聞いてないわけじゃないけど、多いとも言えない。

「三十人中、十五人ぐらいは同業者の吟遊詩人だとは思いますが」
 半分を占めてる!
「もちろん、こんな人数だと飯は食っていけないのでスキファノイアもバイトで食いつないでるんだと思います」
 売れないバンドマンそのものだ……。でも、その動員だと売れてなさすぎるから、諦めたほうがいいとは思う。

「むしろ、そんなマニアックな吟遊詩人を知ってるあなたは何者なの……?」
「いえ、こういうファンは全国規模だとけっこういますよ。大半は王都在住ですが。王都ぐらいでしか活動してない吟遊詩人も多いので」

「その中でスキファノイアを知ってるってことは、この人は上手いほうなの?」
「中の下です。もっと実力ある吟遊詩人はいくらでもいます。世界観もありきたりで、オリジナリティに乏しいですね」
 あっさりとフラットルテが切り捨てた。
「じゃあ、なんでフラットルテは聞いてるの? そんなに上手くないんでしょ?」

 フラットルテが少し苦笑いした。よく聞かれる質問だったらしい。
「上手いから聞くとか、下手だから聞かないとかじゃないんです。吟遊詩人だからとりあえず全部聞くんです。吟遊詩人ファンというのはそういうものです」
 沼にはまってるタイプの人の発言だ。
 私はそういうガチのファンになったことがないので、よくわからない。

「むしろ、コテコテだったり、下手だったりすると、うわあコテコテだな、下手だなとかテンション上がるぐらいなんですよ」
「それはそれでどうなのかなと思うな……」

 私は社畜時代、夜に路上ライブをしている人のことを思い出した。一人や二人しか聞いてない状態でずっと弾き語りをしている人とかいたんだよね……。
 あれ、とてもじゃないけど立ち止まって聞けない空気だから、常に横を素通りしていたけど、ああいう人をじっくり聞いてる人も存在してるんだよね。フラットルテはそういう人なんだ。

 まあ、フラットルテが聞いているみたいだし、私もここは失礼させてもらおうかな。この空気がずっと続くのは痛々しいし、興味もあまりない。

 ――と、顔を上げた吟遊詩人と目が合ってしまった。

「こんな田舎でも、これだけの吾輩の信奉者がいてくれるのはありがたい! 二……二千人の信奉者がいるとはな!」
 単位を「千人」にしたな!
 ていうか、それ、私も完全に客として認識されてるじゃん……。去りづらい!
「悲鳴にも似た大歓声が聞こえるぞ!」
 あなたしかしゃべってないよ!

「ここからは四曲連続で行く!」
 げっ! 帰るタイミングが難しくなったぞ!
「さあ、吾輩に負けずについて来い!」
 むしろ、ついていけてない!

 そのあとフラットルテいわくリュートの速弾きという演奏法を使った曲が続いたが、だいたい歌詞は叫んでいるだけなのでどれがどれかすでによくわからなくなってきた。今、何曲目だろう……。

「道化師があああああああ、夜にいいいい、笑ううううううう! うああああああ!」
 私はぼうっと突っ立っていたが、演奏している側はかなり大変らしく、汗をかいて疲弊していた。

「ふははは……よくぞついてきたな……。ここでグッズの販売について説明だ……。スキファノイアのオリジナルタオル、一枚千ゴールドだ……。水をよく吸うから、こんなふうに汗をかいた時でも便利だ……」
 なんか宣伝の時間になった。ちなみにタオルはかわいいウサギの柄のもので、急にファンシーだった。タオルのほうはまあまあほしい。

 しかし完全に帰るタイミングを見失ったなあ。でも、そろそろライブも終わるんじゃないかな。

「で、では……次は最後の曲だ……。『ネクロマンシー』……うっ、体が……」
 そのまま吟遊詩人は倒れた。

 タイトルが『ネクロマンシー』だから、倒れた死体が復活するとかいうような演出をするんだろう。手の込んだことをやるんだな。

 …………。
 二十秒は立ってるけど、反応がない。これ、テレビやラジオだったら放送事故だぞ。

 …………あれ?
 これ、マジで倒れてるんじゃないか!?
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