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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

アズサの体に異変が!?編

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139 世界樹の薬屋さん

 そして十五時頃、私たちは百八階へと続く階段の前にまでたどりついた。

 やっと、やっと来たんだ。

 私たちは互いに目を見て、うなずきあって、ゆっくりとその階段をのぼっていった。
 階段の上にある扉を開けると、私たちはついに世界樹の外側に出た。
 その景色はこれまでホテルで見た景色よりさらに素晴らしかった。すべてが豆粒のように見える。

「いやあ、ここまで来れた、来れた。ほんとよかった」
 惜しむらくは背が低すぎて、落下防止の策が邪魔になって景色を見づらいことだけだ。

 そしたら、ファートラがひょいっと私を持ち上げてくれた。

「まだ何も言ってないんだけど」
「それぐらいわかります。一緒に登ったんですから」
 そっか。世界樹を登るうちに、心のつながりみたいなものが私たちの中に生まれたんだ。

 私のすぐ横ではヴァーニアが鼻声になっていた。
「あれ、なんか、わたし……おかしいですね……泣くようなキャラじゃ…うぅ……ないのに……」
 最上階層に来たら、緊張感がふっと解けて、心がなんとも言えない気持ちに満たされてしまうのだ。私も似た感覚は味わってるからわかる。

「ダメよ。まだ仕事中だから」
 ファートラはそう言って、ハンカチを妹に渡した。でも、ファートラのほうも顔がゆがみそうになっていた。

 絶景に感動したとかじゃないだろう。
 この姉妹はものすごく久しぶりに二人で一緒に何かをやり遂げたんだ。
 それが世界樹の一番上まで来るということだったわけだ。

「しばらく休憩にしよっか。降ろしてもらって、いいよ」
 ここは姉妹水入らずの時間を作ってあげよう。

「はい、ありがとうございます」
 私が気を利かせたのはすぐにわかっちゃったな。知られて困ることじゃないから、いいか。

 公約通り、私はちょっと席をはずして、休憩をした。二人は柵の手すりに手を重ねながら、昔語りをしていた。火山に登った時の話らしい。

「子供の頃だったら、ヴァーニア、ここでジャンプして落ちそうになってたところね」
「そんな、おっちょこちょいしないですよ。姉さんのほうこそ、途中からしんどい、しんどいって文句が増えてたと思いますよ。それで、父さんにファートラは連れてくるんじゃなかったなって言われるんです」

「だって、火山登った時は本当に疲れたんだもの。予定より時間かかったし」
「そんな、なんでもかんでもスケジュールに正確にはいきませんって」
「あなたが適当なだけでしょ」

 二人ともすがすがしい顔をしている。ああ、いいな。こういう姉妹っていいよね。

 わざわざ世界樹まで来るのは大変だったけど、その価値はあったな。高原の家じゃ見れないことがたくさんあった。本当に、本当にたくさんあった。

 やがて、ファートラとヴァーニアがこちらにやってきた。

「休憩、こちらはファートラも含めてけっこうです。アズサさんも大丈夫ですね?」
「うん、お店に行こう」

 最上階層にある薬屋さんへ向けて、私たちはラストスパートをかける。
 といっても木の外周を五分も歩けば目的地に着く。

 そこはちょっとした広場になっている。こここそ、世界樹の完璧な終点だ。
 厳密にはさらに上にまで木は続いていて、細い階段で頂上まで進むことができる。記念にやってもいいけど、その前に私の目的を達成しないとね。

 広場の横にお店がある。あらゆる薬が置いてあるという薬屋さんだ。
 お店に入ると、すぐにカウンター越しに仕事をしているエルフの女子店員さんが見つかった。
 棚という棚に薬が置いてある。もう、薬のデパートと言っていいだろう。

「すいません。こういうキノコ食べて小さくなっちゃったんですけど、元の大きさに戻れる薬ありませんかね……?」

 私は症状を詳しく述べた。相手の店員さんも、うんうんとしきりにあいづちを打っていた。表情から見て、これは大丈夫そうだ。

「なるほど。それでしたら、とある薬がその症状にも有効だということが最近わかりましてね。すぐに治すことができるかと思いますよ!」
「えっ、ほんとですか! よかった~!」
 私はほっと胸を撫でおろす。どうやら、大人に戻れそうだ。

「最近、大ヒットしている薬で、それも治ることがわかったんですよ。それまでは治すのが面倒なキノコだったんですけど、よかったですね」
「へえ。ちなみに、なんて名前のものですか?」
「これです」と、エルフの店員さんが薬のビンをどんと置いた。

『マンドラゴラ錠』

 …………。
 はて、どこかで聞いたことがあるような……。むしろ、常備薬として、家にも置いていたような……。

「洞窟の魔女として名高いエノさんが作ったこの薬で治りますから! 十錠ほど飲んでいただければそれで効きます。毒になるような成分はないので、それだけ飲んでも問題ないですから~!」
「ああ、うん、はい……」

 幸せの青い鳥はすぐ近くにいたというお話を思い出した。
 まさか、自分の家で解決するような事柄だったなんて……。

 ドアが開いて、からんからんとドアのベルが鳴った。誰か入ってきたらしい。

「こんにちは~、洞窟の魔女エノです~。追加発注分の薬三ケースお持ちしました~」
 エノがごく普通に木の箱持って立っていた。

「エノ、なんでここにいるの!?」
「ん? どこの子ですか? …………あっ、高原の魔女様!」
 そりゃ、エノもびっくりするよな。私は簡単に毒キノコのことを説明した。ただ、こっちとしてはエノがここにいることのほうがびっくりする。

「だって、ここの薬屋さんは伝説的に有名ですから。『マンドラゴラ錠』を置いてもらえること自体がステータスなんですよ。はっはっは、もう『マンドラゴラ錠』のおかげで儲かって、儲かって、今度洞窟を改造してワインセラーとビリヤード場を作ろうかなと思ってるんです。笑いが止まりませんよ~」

 なんか、キャラが変わってる気がするぞ。あがり症だったとかいう話はどうなった……。

「だからって、ここまで来るの、とんでもなく大変でしょ。効率悪すぎるじゃない……」
「えっ? ここのお店なら輸送用に雇っているワイヴァーンですぐに来れますよ」
 おい、すぐ来れるってどういうことだ……?
次回は4月4日の更新予定です! 4月14日の2巻発売前後は少し更新頻度を上げれればと思っております! また4日は本編とは別のSSを活動報告にアップ予定です!

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