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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

アズサの体に異変が!?編

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138 百八階を目指せ

 私たちはそのあとも何度もエレベーターと野生動物エリアを潜り抜けて、なんとか三十八階までやってきた。そのあたりで日が暮れてきた。
 そのフロアはあからさまに宿屋がいくつも並んでいる。上を目指す人間はここで泊まれということだろう。

 宿の部屋からは外の景色が眺められた。三十八階だけあって、なかなかの絶景だ。しかも、各部屋に外を眺められる展望風呂まで用意されていた。

「私の考えていた世界樹とあまりにも違うんだけど」
 どうして子供になった体で、私はお風呂につかって景色を満喫しているのだろう。何もかもおかしい。
 お風呂は広いので、付き添いの二人も一緒に入っている。

「私のイメージしてた世界樹って、もっと一本だけ凛とした風貌で生えてて、もっと神聖な空気を発してるものだったんだよね」
「かつての世界樹はそうだったらしいです。しかし、観光地化の波には逆らえず、こういう形になってしまいました。当時、魔族の土地では空前の観光ブームが来ていまして、宿やエレベーターがいくつも作られたんです」
 ファートラは今も落ち着き払っている。あくまでも仕事という気持ちなんだろうか。他方、ヴァーニアはお風呂で寝ていた。

「なんというか、前世にいた世界の縮図を見てる気がするよ。そこもこんなふうに観光地化が進んだ場所がたくさんあった」
 知能を持った者が考えることはだいたい同じらしい。

「まあ、この三十八階は宿が立ち並んでいますが、そのうち、本当に本格的な冒険の空気が出てきますよ。八合目から先はエレベーターもありませんし」
 なんだ、その富士山みたいな概念……。

「あと、アズサさん、こんな言い方をするのはおかしいのですが」
 ファートラが外の景色からこちらに視線を向けた。
「こういう機会をくださってありがとうございます。妹と旅行に行くことなんて、長らくありませんでしたから」

 私は美しき姉妹愛を垣間見たと思った。
「そうだよね。仕事忙しいし、なかなか姉妹で旅行なんてこともできないよね」
 家族にとっての旅行って大事なものなんだよな。たまには私も家族でどこかに旅行に出かけてみようかな。ハレの空気だって吸うべきだ。

「すいません、あくまでこれも仕事なのですが」
「いいんだよ。こっちも変なことに付き合わせてごめんね」
 ファートラは少し笑みをのぞかせた。ああ、この子もいい子だな。

「ここから先はフロアも狭くなるので、上の階に進むペースも早くなります。明日は八十四階の宿に泊まりましょう。そこから先は本格的な宿もない、本格的な旅になります」
「うん、がしがし行くよ」

 私たち三人は二日目も本当にがしがし進んだ。
 とにかくお金をくように使えば、先へ先へと行ける。

 そして八十四階の宿に泊まって、目的の百八階にある薬屋さんを目指す。
 元の大人になったら、とりあえず家族旅行かな。これだと、私だけ旅行してるようなものだしね。

 八十五階からは獣もそれなりに凶暴でこちらに襲いかかってくる。ものすごく目つきの悪いナマケモノが世界樹の中に生えている別の木を伝ってやってきた。

「うわ、なんかよだれ垂らしながらやってくるよ!」
「あれは、ヨダレタラシナマケモノですね」
 敵が攻めてきているけど、やっぱりファートラはガイドブックに目を通している。名前のつけ方に尊厳とかないな。

「どうしますか? こちらで身を守りましょうか? あるいは妹を盾にしてもよいですが」
「いや、いいよ」
 私は自分から走って、間合いを詰めて、ワンパンでヨダレタラシナマケモノを吹き飛ばした。
「ステータス的には私はまだそれなりにやれるみたいだから」

「うわー、すごいですねー!」
 ヴァーニアがすごくあほっぽい褒め方をしてくれた……。

 そんなヴァーニアのところにも、ほかの獣がやってくる。こっちは足元の草みたいなのを弾き飛ばしながら爆走しているといった感じだ。
「ああ、これはハナタラシナマケモノでしたね。姉さんから聞きました」
 このあたりに生息する獣に悪感情でもあるのか……。でも、たしかに鼻水みたいなのを垂らしていた。ただし、全然怠けてないだろ。全力疾走だろ。

「あの鼻水には高い栄養価があって、このあたりの植物の生育を助けてるんです。それの代価に植物は木の実を作って、ハナタラシナマケモノにあげるんですよ」

 嫌な生態系だ……。

「でも、動物性の栄養もほしいのか、わたしたちも襲ってくるんですよねー。というわけで、軽くいなしておきましょうね」
 ヴァーニアが突進して回し蹴りを喰らわせた。
 鈍い音がそのフロアに響く。

 失神したらしいハナタラシナマケモノがぴくぴく伸びて、どうも鼻水以外のものも垂らしていた。汚い。

「言うまでもなく、あなたたちも強いよね。リヴァイアサンだもんね」
 私の周囲が強キャラばかりでたまに忘れるけど、みんな世の平均から比べれば、とんでもないメンバーなのだ。

「はい。妹もこの程度で不覚をとることはありません」
 ファートラもこの点は妹を信頼している。
「二人とも、どんどん行きましょう。薬屋が閉まってしまうと、また一日待つ必要が生じますので」
「それはよくないね。ファルファとシャルシャも退屈しちゃうだろうし」

「あっ、それはないですよ。むしろ、うちの上司はもっと帰ってくるの遅くてもいいぞってきっと思ってますよ~」
「そうかもしれないけど、ヴァーニア、そこは余計なこと言わなくていいの!」
 むしろ、娘二人がベルゼブブになつきすぎることのほうが怖い。

 ほとんど休憩もせずに私たちは先へと急いだ。
 ほかにも世界樹の頂上を目指す登山客(山じゃないけど、事実上の登山だ)を追い抜いていった。ほぼすべてが魔族だった。たまに魔族にエスコートされながら上を目指すエルフやドワーフもいる。おそらく、この世界樹にそのまま暮らしてる人たちだろう。

 そして十五時頃、私たちは百八階へと続く階段の前にまでたどりついた。
活動報告のほうに、4月14日発売の2巻で出る新キャラ、ロザリー、ヴァーニア、ペコラの挿絵をアップしました! 是非ご覧ください! ※なお、フラットルテは3巻にイラストがつくと思います。

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