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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

アンデッドを捜す編

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128 猫獣人のニート

 この発言、間違いない。アンデッドかはわからないけど、確実にニートだ……。
 それとね、パジャマにこう書いてあるんだよね。「働いたら魔法石になる」って。

 おばさんが出ていった後に、ベルゼブブがポンデリという人の家をノックした。
 しかし、反応がない。

「むむっ、誰かわからない場合は開けぬということか。防犯意識はあるようじゃの」
「大丈夫。ここは私に任せて」
 なんとなく、対処法が読める。

「すいません、お届け物で~す。サインお願いしま~す」

 いつもより、こころなしか高い声で言った。
「申しわけないですが、今のアイディアは雑なのでは……」
 ファートラが疑問の表情を浮かべたか、これはこれでいいのだ。

「『聖水が出る小型の魔法の泉が当たりました』とかのほうがいいんじゃないですかね?」
「ブッスラーさん、それ、なんか浄水器詐欺っぽい……」
「あっ、今思いついたんですが、それで月々の使用料を高く設定すると儲かりませんかね?」
「あなた、そのうち捕まることしそうだね……」

 さて、お届け物作戦は功を奏した。
 がちゃっとドアが開いたのだ。
「最近は本が届くのも早いですね~。助かりま――――ふぇっ!? にゃっ!?」

 私たちの顔を見て、これはまずいと直感的に気づいたらしい。猫の獣人らしく、猫っぽい声も聞こえた。
 ドアを閉めようとするが――その時にはもうベルゼブブがドアの間に手をねじこんで、無理矢理押し開けていた。偉い魔族の力を舐めてはいけない。

「ふっふっふ。お前がアンデッドであるな? そうじゃな?」
「ち、違います! ボクはただの墓場警備員です! 二十四時間墓場を警備しているだけです!」
「ほほう、ならば神殿に連れていって、聖職者に浄化の魔法をかけてもらうとするかのう。魔族の大臣であるわらわが頭を下げれば、神殿もすぐに浄化の魔法ぐらいかけてくれるぞ」
 魔族の権力で人間の神殿を利用しようとするなよと思ったけど、この発言は聞いたらしい。

「す、すいません! なんでもしますから、それだけは……。働くこと以外ならなんでもしますから……」
 この人、「なんでも」の中に労働を入れないんだな……。

「ベルゼブブ様、ここはこの方のお話を一度伺ってみましょう」
 いつも冷静沈着なファートラが淡々と言った。
「それと……私はあっちでオレンジの墓を見学してるバカ妹を引っ張ってきます……」

 奥のお墓で「すごくリアルにオレンジ作ってますよー!」とヴァーニアがはしゃいでいた。妹が変な子だと苦労しそうだな……。



 私たちはその狭い家に全員で上がり込んだ。
 部屋の中には本やゲームらしきものがいろんなところに積んである。
 テーブルはあるもののその上にもいろんなものがぐちゃぐちゃになっていて、ゴミ屋敷にまあまあ近い状態だ。

「ボクの名前は、ポンデリです……。アンデッドをやって四十年ほどになります」
「じゃあ、まだ新参じゃな」
 ベルゼブブが言った。四十年で新参って伝統工芸の世界みたいだな。
 ポンデリはまだ緊張してるのか猫の尻尾が左右にやたらと動いている。

「もともとボクは王都で一人暮らしをしていたんですが、働くのが嫌で家から出ずにずっとだらだらしてました。それで食べるのも面倒くさくなってきて気づいたら――」

 餓死してました、とポンデリは言った。
 そんな衝撃的な理由で餓死する人いるんだ……。人生っていろいろあるんだな……。

「ただ、どうも上手にミイラ化したらしく、体が腐り落ちたりしなかったんですよね。それで窓からの月の光をずっと浴びてるうちにアンデッドとして動き出したというわけです」

「死体が月の光を浴びたらそんなこと起こりうるものなの……?」
 魔法を使う人間が言うことではないけど、非科学的だ。

「月には特殊な力がありますからね。しかし、それだけで上手にアンデッドにはなれないので、おそらく死体になった時に魔法使いがやってきてアンデッド作りの実験でもしたんじゃないですか? そういう手助けがあれば、さほど不思議でもないです」
 ファートラの言葉に従えば、十分にありうることらしい。

「それで、アンデッドになってることを知ったボクは、これこそ真の働かなくても死なない生活だと思って、各地をぶらぶらしているという次第です。あっ、果物いりますか?」
「ほぼ腐ってるからいらないよ」

「いや、ここは、もらっておこうかの……。もしかするとぎりぎり腐っておらんかもしれんからの。もったいないからの」
 ベルゼブブが明らかに物ほしそうな顔をしていた。そうか、ハエの属性も持ってるんだった!

 結局、ベルゼブブの求めで、多分腐ってる果物が皿に盛られた。アンデッドらしい空間と言えばそうだ。
「話を戻しますと、今のボクはここで墓場警備員をやっています。しっかり、そこの窓から見ていますよ。先日の嵐の時なんか墓石が倒れるのも確認してましたからね」
「墓場警備員なんだから、倒れたら元に戻しなよ」
「いえ、倒れたとしても、そこにあることには違いないので、大丈夫ですよ。それに幽霊が化けて出てきても怖くないですし」
 そりゃ、まあ、アンデッドだからなあ……。

 今ではポンデリは集落に出てお小遣いをもらったりしているらしい。見た目は年頃の女の子だから、お金をくれる人もいるとか。
 それで小銭を稼いで、ゲームや本を買っているようだ。ゲームといっても、ボードゲームや数枚のカードでやるものだけど。

「ボク、憎めないキャラだから許されてるんじゃないですかね」
 自分で言うなよと思ったけど、言いたいことはわかる。このポンデリという子は恐ろしくマイペースなのだ。

 猫を飼ってる人は、猫を労働力にする目的など考えてない。猫がそこで自由に気ままにやってくれているのを見れればいいのだ。この子もそういう部分がある。

「この生活にボクは満足してます。まあ、ただ、足りないものがあるとすれば……」
 後ろにあるゲームの山にポンデリは視線をやった。

「大部分の時間が一人なので、遊び相手がいないことですかね。たまに来てくれる子もいるにはいるんですが……」

 一人でニートするのって、大変なところもあるんだな。
新キャラ、ポンデリが出てきました! よろしくお願いします!
点数も36000点突破しました! ありがとうございます!

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