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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

高原の魔女の偽物出現編

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123 薬がブレイクした

 そして、その日の市が終了の時間となった。

『マンドラゴラ錠』の売り上げ、七十三ビン。
 こういうのの相場はよくわからないけど、初回としてはまだ健闘したほうじゃないだろうか。

 でも、エノは在庫の四百以上のビンを眺めて呆然としていたが。

「このビン、どこに置けばいいんでしょうか……」
「それはどうにか収納するしかないね」

「おかしいですね……。ものすごく宣伝したのに……」
 むしろ宣伝が過剰で人が集まりづらくなってたと思う。「なんだ、あの格好……」なんて声も聞こえてきたし。

「これはこれでよかったんですよ。話題性自体はありましたし、そういうのが目当ての悪食なお客さんは来ていたと思いますよ。まったく宣伝しないよりはマシだったかもしれません」
 ライカが客観的なコメントをくれた。そう、やって失敗するなら、やらずに失敗するよりはマシだ。失敗という蓄積ができる。

「まずはこの在庫をどうにかすることを考えたいと思います……。地下室をもう一つ掘りましょうかね……」
「そういう力仕事なら手伝うよ。高原の家の横にも室作ってるし」

 しばらくは負け戦という顔をしていたエノだったけど、撤収作業の荷造りが終わる頃には、晴れ晴れとした顔をしていた。

「人前に出て、物を売るって楽しいですね。お金をもらう瞬間、やっててよかったと思えました」
「それはね、エノ、承認欲求がまっとうな方法で満たされてるからだよ」
「え?」
「人に自分が作ったものを買ってもらってお金を手に入れる、それってエノが認められたってことだからね。あとはそれを繰り返すだけだよ」

「は、はい、わかりました! 私、やります!」
 エノの瞳がきらきら輝いている。うん、精進したまえ、後輩魔女。

「私、次回はもっとクオリティの高い衣装を作って参戦します!」
「待て。目的はそこじゃない」

 高原の魔女の偽物をやってたのも、もとはといえば、この子が変装好きだからじゃないだろうか。
 仮装をする祭りなんて大昔から全世界であったはずだし、人間の根源的な楽しみに訴えかけるものなのかもしれない。

 私とライカはビンの在庫を片付ける作業を手伝った。どうにか余ってる部屋にビンは全部入った。

「今度からは工房に引きこもらずにどんどん町にも出ていこうと思います」
「うん、それがいいよ」
「で、隙あらば、『マンドラゴラ錠』を買ってくれないかと交渉してみようかと……」
 うん、在庫が邪魔だからね……。

「プラス思考で考えればいいですよ。もし千ビン作っていたら、大変なことになっていました」
 ライカのフォローを聞きながら、私は思った。商売でいきなり四桁の商品を作るのはやめようと。まずはせいぜい三百ぐらいから様子を見るべきなのだ。

「我が一つ、在庫を買います。いくらですか?」
「いえ、そこは差し上げますから! むしろタダでもいいんで、もらってください!」
 結局、家用に二ビン、もらうことになった。効能は魔女として私がお墨付きをあげてもいい。

「じゃあ、またたまに遊びに来るね」
「はい、お待ちしております!」
 魔女の妹分は元気に手を振った。

「もう、高原の魔女の偽物にはならないでね」
「はい、これからは『洞窟の魔女』としてやっていきますね! しばらく市には参加する予定ですので、よかったら寄ってやってください!」



 これで、私の偽物が出たという話は無事に解決したのだけど、この話にはもうちょっと続きがある。

 二週間ちょっと経ったある日、高原の家に手紙が来た。
 差出人はエノだったので、元気にやってますという内容だろうと思って、開封してみた。

===
親愛なるアズサ様へ。
すいません……。唐突で申し訳ないのですが、『マンドラゴラ錠』が次の市で突然爆発的に売れるようになりまして……生産がまったく追いつきません……。働いてくれる人を雇いたいのですが、経験がないためよくわからず……。どうすればよいでしょうか……?
===

 え、あの錠剤、ヒットしたの!?

 エノのところに行って話を聞くと――
 前回の購入者が使ってみたところ、とても体がよくなった。それが口コミで広がっていき、うちも買おう、うちも買おうということになったという。
 結局、ダメ元で全部持っていっていた在庫は最初の二時間で売り切れて、そこから先も注文が殺到して、錠剤作りに追われているとか。

「質のよいマンドラゴラを採集しないといけないんですが、出かける時間がとれないんですよね……」
「これはハルカラ案件だな。あの子に聞くしかない」

 ハルカラを派遣して、工場制にする可能性も模索してみたが、丸薬にするのに特殊な技術がいるため、大量生産にも限度があった。

 大量生産を諦めたエノは、この薬は受注生産制にして、作れる範囲で売ることにした。販売から三か月ほどで、「薬作りの匠」としてエノはその名を知られるようになってきているらしい。
 私としては眠っていた才能を引き出せたわけだから、いいことをしたのではないだろうか。

 現在、私の部屋には洞窟の魔女が作った『マンドラゴラ錠』が常備薬として置かれている。
偽物編はこれにて終了です。次回から新展開に入ります! 実は偽物編で伏線を入れております。まあ、わかる人はすぐにわかると思いますが……。
そろそろ書籍3刷の本が書店さん出回ってる頃かと思います。4刷も今月後半には出回るかと思います。こんなに多くの人に受け入れられるとは全く思ってなかったので、とにかく無茶苦茶うれしいです。感謝です!
書籍版2巻は4月に出ます。僕も幽霊のロザリーやペコラのキャラデザ、楽しみに待ってます! あと、ヴァーニアもキャラデザされるかな~と待っております。

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