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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

高原の魔女の偽物出現編

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122 即売会っぽい市

「では、活動していくことにしよう」

 私の言葉に少しエノが怯えたような反応をした。

「あの……活動というと、どういうことをするんでしょうか……?」
「薬を売る。売って、有名になる」

「そ、それは……。私、あがり症なんで、他人を装ってる時は大丈夫なんですけど、そうじゃなければ緊張して絶対にダメになるんじゃないかなと……」
 だから、高原の魔女を装ってる時は平気だったのか。演技と割り切ると、外向的な性格になる人は割といるので、わからなくはない。

「それも含めて慣れていくの。こんな誰にも気づかれないところで一人寂しく生きていくの、嫌なんでしょ?」
「それは……嫌です……。もっと目立って、あこがれの視線とか浴びたいです! できればブロンズ像とか建ててもらいたいです! 郷里で名誉市民みたいなのにしてもらいたいです!」

 無茶苦茶、世俗的な欲望が噴出してきた!

「今になって思えば……もっと都市部に近いところに工房置いておくべきでした。王国の王都からアクセスできる場所にしていれば……」
「アズサ様、この人、急にコンセプトが変わり出したんですけど……。悪霊でも召喚して乗っ取られたりしてませんか?」

 ライカがびっくりしていたが、ある意味、自分に正直になった結果なので、ここはエノを評価したい。

「いや、これでいいよ。それぐらいの気持ちのほうがいいから。じゃあ、売るよ!」



 私たちは近くの町に出て、そこでまずは二週間に一回ある大きな市の出店許可証を買った。

 いきなりお店を持つのはハードルが高いけど、市に出るだけなら準備も比較的少なくてすむ。疲れたとしても、翌日まで爆睡してしまえばいいのだ。

 なお、私たちのスペースナンバーは「ア-23b」だった。

「やった、これは壁ですよ!」
 エノが喜んでいた。壁? 同人誌即売か!?

 場所は決まったので、商品と宣伝用の材料などを作る。多少恥ずかしいけど「高原の魔女も絶賛! マンドラゴラ錠」といったのぼりも用意した。本当にいいと思いはしたので、ウソは一切ついていない。

 お釣りの用意とか、こまごましたことはライカがやってくれた。そういうのは本当に気がきく子だ。

「アズサ様、『初出店!』と書いた看板と、『百五十年の伝統の効き目』と書いた布を用意したのですが、これも使いませんか?」
「ライカ、あなた、やる時は徹底的にやるタイプだね……」

 けど、三人で力を合わせて、ひとまずの用意はできた。

「これでおおかたの準備はできたでしょ。私たちは一度帰るけど、また市をやる日には来るからね」
「はい、ありがとうございます! 錠剤シェアナンバーワンを目指します!」
 やけに商売に傾きすぎてる気がするけど、まあ、いっか……。

 そして、市が開かれる日。
 私はライカと一緒に市にやってきた。

 場所は大きな建物の壁の側で、後ろがほかの出店場所じゃない分、スペースに余裕があった。壁ってこういう意味か。たしかに間違いではない。

 行ってみると、すでにエノが本格的な設営をしていた。
 私たちが手伝った時より、はるかにガチで、ほとんど常設の店のおもむきがある。

 ただ、設営なんかよりもっと目立つことがあった。

 ものすごく派手な格好をエノがしていたのだ。
 魔女じゃなくて、これ、魔女っ子の服装ではというようなもの。いや、違うか。魔法少女か。魔女らしく黒が基調なんてことは一切なくて、むしろピンクと白がメインになっている。杖というか、魔法のステッキみたいなの持ってるし。

「これ、まったく新しい邪教ですかね……」
 ライカがファンタジー世界観を前提に警戒していた。

「エノ、基本に忠実に質問するけど、これはどういうことなの?」
 元日本人から見ると、コスプレにしか見えない。

「ほら、私ってあがり症って言ったじゃないですか」
 その声は無茶苦茶、はきはきしていて、むしろアニメ声っぽさすらあった。

「なので、自分とまったく違うキャラを演じることによって恥ずかしさを克服することにしたんです!」
「なるほどね。間違ってるのか正しいのかよくわからなくなってきたけど、あなたが納得してるならそれでいいよ!」
「ちなみにこの格好は、当地に古くから伝わるフェアリーの姿を模したものです」
 じゃあ、やっぱりコスプレなのだろうか。

 店の前には「本日に限り、最初の一ビンは半額!」という作った覚えないポップまで置いてあった。わかった。もう好きなようにやってくれ!

「この日のために五百ビン作ってきました。完売を目指します」
 後ろにはビンが入ってると思しき箱が並んでいる。これが在庫として余ったらけっこう悲惨なことになるんじゃ……。
「初日から五百ってけっこう強気じゃない……?」
「いけます、いけます! むしろ千ビン作るか迷ったぐらいですから」

 目をきらきらさせてエノが言ってるけど、私は思った。
 これ、ろくでもないことになるやつだ……。

 そして、十時。市がオープンした。

「はい、山奥の魔女の『マンドラゴラ錠』、体に効く『マンドラゴラ錠』です! 高原の魔女様も絶賛! はい、本日最初の一ビンに限り、半額! 半額で提供いたします! はい、どうぞ!」
 宣伝の声が大きい……。

「アズサ様、これ、私たちはここにいる必要ないのでは……。この人が全部やりますよ……」
「それはそうかも」

 周囲の店と比べても異様だったので、注目だけは集めているが、これ、売れるのかな……。けど、やたらと真剣なエノの顔を見ていたら、だんだんとこれでいい気がしてきた。

「ライカ、引っ込み思案な人間がこれだけ頑張ってるんだよ。その時点で成功と言えなくもないんじゃない?」
 そう、これまで人に気づかれることを待っていた人間が前に前に出ているのだ。
「これなら、仮に失敗したとしても、またそれをばねにして先に進める。それならいつかは成功するよ」

 ライカも私の言葉がわかったらしく、小さくうなずいていたが、

「つまり、今回は失敗すると予想されているということですか?」
「……さ、さあね……。注目は集めてるみたいだけどね……」
即売会・・・じゃなくて市の続きは次回です!

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