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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

高原の魔女の偽物出現編

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121 魔女の秘密の工房

今回、あとがきにいろいろ書きました。ご確認ください!
 工房に入ると、そこは「THE魔女」とでも言うべき、おどろおどろしい空間だった。
 謎の液体につかったトカゲの尻尾とかサソリを入れたビンがずらっと並んでいる。あと、動物の骨の標本。

「薄気味悪いところですね……」
 ライカはこういう場所はダメらしく、身をすくめている。人によってはドラゴンのほうがはるかに恐ろしい気もするけど、また違う要素の恐ろしさなんだろう。

「あっ、そこにおかけください」
 テーブルと椅子が置いてあるけど、その椅子も骨製だ。座り心地悪そうだし、遠慮させてもらう。

「これ、私にあこがれるのおかしくない? 私とは魔女のジャンルが違うと思うんだけど……」
「いえ、私も薬は作ってますから。ええと、たとえば……これですね」

 棚からまたビンが出てくる。ただ、液体ではなく小さな粒がいくつも入っていた。

「乾燥させたマンドラゴラで作った丸薬です。疲労回復に効果がありますよ。目にもよく効きますし、おなかの調子も整えます!」
「へえ、いいの作ってるじゃない」

 エノはそのあと、丸薬の作り方をとうとうと語って、乾燥マンドラゴラも見せてきた。
「このマンドラゴラはどれも三年物の、ほどよく育ったものを使っているんです。もっと若いものでも作れるんですけど、成分が中途半端になるんですよ。そこは薬作りのプロとして妥協なしでやっています!」
 私も魔女のはしくれなので、作り方を聞けば、これが本当にちゃんとした薬だってことぐらいはわかる。

 冷静に考えれば、不老不死になってるぐらいなので、魔女として優秀なほうなのだ。別に何もできない子なんてことはないはず。

「なかなかいいよ、これ。『マンドラゴラ錠』なんて名前で売ればヒットすると思う。いや、むしろもう売ってるのかな」
「いえ、魔女たる者、不用意に人に知られるのもどうかなと思って、市販はしてません」
「え……? もったいない……」

「ま、まあ……誰かがこの丸薬の良さを認めてくれてぜひ商品化したいと言ってくれるなら、それは考えなくもないですが……」

 ちょっと照れたようにもじもじと下を向くエノ。

「ほら、こんなの売ってますって魔女があまり表に出るのも、魔女のあり方としておかしいっていうか……知る人ぞ知る天才みたいなほうにあこがれるっていうか……」
 ああ、この子のこじらせ方がだいたいわかってきたぞ。

「あなた、できることなら『この世界の超一流の魔女だけが、この魔女の薬を認めてる』みたいなポジションに立ちたいと思ってるね」
「はい、自分が認めた者だけに薬を売る、こう一見さん魔女お断りみたいなのがいいです!」
 ちょっと、エノの目が輝いた。

「で、そういう頑固一徹な職人として、世間に知られていれば、もっといいんだよね?」
「はい、そうです、そうなんです!」

「それ、矛盾してませんか?」

 ライカが横で適切なツッコミを入れた。

「知る人ぞ知るって立場でいたいのに、世間に知られたいって、両立できないと思うんですけど、それって錬金術師的な哲学とかだと解決するものなんですか? 無学な我にはよくわかりませんね」

 ライカの声にトゲがある。もし心の声を読むと「あほですか」とでも書いてあると思う。

 そして、その心の声はエノにも届いたらしい。

「あっ……それはおっしゃるとおりなんですけど……そこはほら、ほら……そういうことなんですよ……」
「どういうことなんですか?」
 ずいっとライカが距離を詰めてくる。

「あなた、先ほどからずっと言動に一貫性がありませんよ? つまり、何を目指したいのですか? どうしたいのですか? 愚か者の我にもわかるように説明していただけませんかね?」

 エノの背がちょっと縮んで見えた。けっこう参っているらしい。

 私はぱんぱんと手を叩く。

「ライカ、もういいよ。あとはエノに代わって、私が説明するから」
「アズサ様はこのような難解な理論を統一することができるのですか? さすがです!」

 まあ、統一なんて偉そうなものじゃなくて、人間は矛盾した生き物だってことを前提にすればいいだけなんだけどね……。

「あのね、ライカ、人間には見栄みえってものがあるの」
「虚栄心というものですね」
 熟語にされると、なんか重いな……。

「エノの場合、その見栄っていうのは、かっこいい魔女としてありたいってものなの。より、具体的に言うと、商売っけのない知る人ぞ知る天才魔女みたいなのがいいと思ってる」

 エノは小さく、うなずいている。認めるのも恥ずかしいからね。

「けどね、一方で世間に偉大な魔女様って知られたいって欲望もあるんだよね。でも、そのためにはいい薬を作って売るような宣伝活動が必要だし、こんな誰も見つけられないような工房で生活していると、誰も発見しようがない」

 せめてもうちょっと人里に近いところで活動したらいいのに……。これ、同業者すら発見できないからね……。同業者が発見できなかったら、業界ですら話題にならないからね……。まず形から入るっていうのを徹底しすぎたんだと思う。

「そこが謎なのです。矛盾しているとしか我には思えない……」
「いや、だから、矛盾してるんだよ。むしろ、言動が何もかも一貫してるほうが特殊とすら言えるかも。ライカはそこに迷いとかないからね」

 うつむきながら、エノはずっと無言でこちらの言葉を聞いていた。

「これは、あくまで私の意見なんで、反論があったら好きなだけ言ってね……。あくまでライカに対して話した一般論だから」
「そ、それで間違いありません……すいません……」

 本人が認めたら、後は簡単だな。

「つまり、ちやほやされたいんだね?」
「はい、私は、ちやほやされたいです!」
「そのためには、どうしたらいいと思う?」
「ゆ、有名になるための活動をするしかないですっ!」

 うん、よく言った。

「では、活動していくことにしよう」
スライム倒して300年、3度目の重版が決まりました!
そして2巻の刊行日も決まりました! 4月15日に出ます!
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