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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

高原の魔女の偽物出現編

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120 後輩魔女の自宅訪問

 こうして、エノという魔女が偽物の正体ということは判明した。

 その日は集落の酒場でエノの話を聞いていたのだが、けっこうきつい話だったので、多少同情する気持ちになった。

「魔女をやっていますが誰からも知られないままで……もちろん友達も誰もおらず……趣味らしい趣味もなく、魔女として生きるのって空しいなと常々思っておりまして……」
「ああ、不老不死の人が仲間いないとそうなるよね」

「むしろ、アズサ様はどうして三百年、平気だったんですか……?」
 ライカに逆に質問される。
「そういえば、そうだな……。え~とね、私はフラタ村の人と交流があったし、三百年間、薬を売ったりしてると慕われたりするし、それで承認欲求は満たされるんだよね」

「やっぱり、その謙虚さが素晴らしいです! あの実力なら世界最強を名乗ることすらおこがましくはないですのに! アズサ様のすごさを再発見しました!」
「ライカ、それ、なんか勘違いしてるから! 私がステータス上、強くなってるってことに気づいたの、けっこう最近だから!」

 スライムをこつこつ倒す生活で最強を目指す人間なんてあまりいない。

「はぁ……この私にもこれだけは負けないなんて趣味があれば、偽物をやるなんてこともなかったんですが……うっぷ……」
 エノはお酒を飲むと暗くなる性格らしく、ずっとうつむいていた。

「人に自慢できることの一つや二つあるでしょ? 百五十年生きてるんだし。実はあなたのここがすごいとか知ってる人もいるかもよ」
「いや、それは甘いです。私、ほんとザコなんで……。魔女としてもマジで無名ですから……。魔女業界的なものともかかわりないですし」

 まあ、私も魔女業界みたいなのはまったく知らないけど。
 どうも、この人、このままほっぽりだすの、一抹の不安を覚えるな。

 大学時代、こういう後輩の悩み相談にいい答えが出せなくて、サークルを抜けられてしまったことがあった。※ちなみにものすごく弱い卓球サークルでした。

 もちろん、本人の悩みは本人にしか解決できない部分はある。とはいえ、もっと親身になってあげればいい結果につながったかもって気持ちもあるのだ。

「じゃあさ、エノ、あなたの魔女の工房に連れていってよ。それですごいところがあるか探すから」
「え、高原の魔女様が来るんですか?」
「そうそう。他人から見ないとすごさのわからないことも世の中多いしね。これは立派ってことが見つかったら、それを支えに生きていったらいいよ」

 つまり、エノの良かった探しをすればいいと思ったのだ。
 それを誇りにして生きていってもらおう。実際、モチベーションの維持って不老不死に近いポジションの存在は大きなテーマなのだ。

「わかりました……。私の生活を見ても面白くないとは思いますが、そうおっしゃるのであれば……」

「じゃあ、決まりだね。よろしくお願いします」

 後輩魔女の自宅というか工房訪問が決まった。



 翌日、私はエノが住んでいる土地までドラゴンになったライカで飛んだ。

「ドラゴンが降りられる広さの場所がありませんので、少し手前で降りて、そこから歩いていただくというのでよいですか?」
「そりゃ、そうだようね。そのへんのことは任せるよ」
 高原にぽつんとある私の家が特殊なのだ。ドラゴンが二人住むことになったわけだから、結果オーライだ。ドラゴンになってもらうために十五分歩くとか面倒だ。

 エノが「そこをまっすぐいって、街道が見えたら右。その次の分岐を左です」などと指示した場所に向かう。かなり山深いところの、かろうじてドラゴンが着陸できる場所といったところだった。

「ここから歩いていきます。よろしくお願いします」
 私たちはエノに連れられて、森の中に入っていく。なかなか薄暗い。

「けっこう、不気味なところだね。ある意味、魔女が住む環境かもしれないけど」
「魔女たる者、魔女らしいところに住もうと思って、こういうところにしました」

 道なき道というかただの森の中を、木に結ばれている赤い布をたよりに進む。
「これ、服装はもっと動きやすいものにしたほうがよかったですね。我の服が汚れそうです……」
「最近、私たち、よく森とか山とか歩いてるよね……」
 ライカはゴスロリ系の服なので、大変だよなあ。

 そして、道のりがけっこう長い。急な上り坂なんてものはないけど、森が深くなって、暗さは増していく。キアーキアーと不気味な鳥の鳴き声が響いているし、ハルカラが喜びそうな貴重そうなキノコが何種類も生えている。

 二十分ほど歩くと、
「着きました」
 とエノが言った。

 何もない森の中で。

「ごめん、こういうギャグだったら悪いんだけど、建物がない」
「ここから、洞窟の中に入っていきます」
 よく見ると、しゃがめばなんとか進めるかもという横穴が空いていた。

「マジか……」
「あっ、ライトの魔法を使いますのでご安心ください」
 そこはあまり問題じゃない。
 私とライカは中腰になって、その横穴を進んでいく。

 そんな調子で五分ほど芋虫みたいに移動すると、小さな縄梯子があった。

「ここから縦に降りていきます」
「……うん、わかった」

 さらに数分はしごを降りると、ようやく秘密基地的なエノの工房があった。
 鉄製の扉にも二重に錠がかかっていて、秘密基地感がパない。「無断で立ち入りし者には呪いがかかるであろう」といったことが書いてある。これは意訳すると「セールスお断り」みたいなものだ。こんなところまでセールスに来る奴は絶対いないだろうが。

「ここに籠もって百年以上経つんですが、ちっとも名前が広がらないんです……」
「当たり前だっ!!!」
 そりゃ、こんなの発見されるわけないだろ。隠れ家的なお店って概念はあるけど、それにも限度というものがある。

「ちなみに薬とかは町に出たりして売ってるの?」
「いえ、趣味で作ってはいますけど、営業活動をしまくるのも魔女らしくないと思ってやっていません。いいものであれば、そのうち、広まるかなと……」
「それで有名になれるわけないだろ!!!」

 この子、実際の行動とちやほやされたいって欲望に大きすぎるズレがある!

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