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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

高原の魔女の偽物出現編

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119 意外な動機

「わしは偽物なのじゃ! すいませんでしたーっ!」
「腰を曲げたの、おじぎの意味かよ!」

 偽物の潔い反応にまたツッコミを入れてしまった。

「なんだ、偽物なのか」「美少女じゃないもんな」「アンデッドだと思ったのに」「あなた、アンデッドにこだわりすぎてキモいよ」
 聴衆も解散していった。これでいいのかな。まあ、偽物がおばあさんなので、あまり追及するのも酷か。この土地で詐欺行為で利益を得ていたりはしないようだし。
 でも、私たちはまだ解散しない。むしろ、これからが本番。

 ライカが偽物の前にゆっくりやってきた。

「我は高原の魔女アズサ様の弟子であるライカです。師の偽物がいるということで探していました。あなたはどうしてこのようなウソをおつきになったんですか?」
「…………腰が痛いのじゃ」
 露骨に話をそらしにきたな!

「それはおかしいですね。さっき、おじぎをする時、背中がよく伸びていましたが」
 名探偵ライカ……。ライカがきっちり尋問していく。

 やむをえないと思ったのか、偽物はきをつけの姿勢になった。ライカの推理で正解だった。

「許してほしいです……」
 声もこころなしか若く聞こえる。そりゃ、よぼよぼの体で旅なんてできないだろうしね。

「じゃあ、こっちの質問に答えることね。なんで、お年寄りの設定にしたの? 高原の魔女ってもっと若い設定で知られてるはずなんだけど」
「それは……そんなに詳しく知らなかったのでノリで……。あと、やりはじめてから高原の魔女が若いんだと知りました……」

「偽物やるくせに雑!」
 聴衆に説明してる時もそういう印象あったけど、こういうことする人ってむしろ計画性とかないんだよね……。

「今度は我の質問です。あなた、どうして高原の魔女を名乗ったんですか? しかも商品も売らずに。それでは名をかたる利益もないでしょうに」

 うん、それは私も気になった。
 儲かる要素がないんだったら、偽物をやるリスクのほうばかりが目立ってしまう。こうやって高原の魔女の弟子が来ることは想定してなかったかもしれないけど。
 なお、私は高原の魔女であることは言わない流れでいく。私が有名になると、本末転倒だからだ。

「はっきり言って最大の疑問だね。そこを聞いておかないと、納得できない」
 やっぱり、犯人の動機は知りたい。こういう事件の場合、ついカッとなってなんてこともありえないので、動機がないというケースもない。

 で、もしもその理由が合理的なものなら、二人目三人目の偽物が出てこないように気を付けることもできる。あるいは、お涙ちょうだい的な理由なら、この偽物に対する情状酌量の余地もあるかもしれない。

「ええとですね……その……ほら、よくあるやつっていうか……」
 すごく言いづらそうにしている。
 これは後ろ暗い事情、確定か。少なくとも郷里の病気の親がいるから、金が必要で……みたいなのではない。そもそも稼いでなかったようだけど。

「はっきり言わないと雲がかかってるあたりから火山の火口に落としますよ」
 ライカが真顔で脅した。
「言います! 言いますから!」
 よし、やっと理由がわかるんだな。じっくり聞かせてもらおうじゃないか。

「高原の魔女の偽物になったのは…………」
「「なったのは?」」と私とライカが口を合わせる。

「ちやほやされたかったからですっ!!!」

 想像の斜め上というか、別次元の回答が来たので、私はやたらと目をぱちぱちさせた。
 ライカはもっと理解ができてないらしく、ほとんど聞こえてないかのように、じっとしている。

「悪いんだけど、言ってる意味がよくわからないので、詳しく聞かせてくれる?」

 答えるのにかなりの体力を消費したのか、ゆっくりと老婆はその場に女の子座りになる。このお年寄りの姿、介抱しないとこっちが悪いように見えるので、正体がもっと若いなら若い姿になってほしい。

「あの、私も魔女をしていて長いんですけど、こう全然世間的に注目されなくてですね……それで、ちやほやされたいと思って、高原の魔女を名乗ったんです。ただ、薬をあまり売って歩くと足がつきそうだったので、薬は実力不足なので売れないという設定にしていました」

「ふざけた内容で煙に巻こうとしないでください。我はそんなにやさしくありませんので、炎を吐くぐらいのことはしますよ」
 ライカとしては理由にならない理由らしい。

「だいたい、それで評価されるのは結局、高原の魔女という他人ではないですか。あなたの本体は名前も知られないままなんですから筋が通りません!」
「ライカ、待って待って! それは正論だけど、こういう人がいるのも事実なんだよね……」

 私は前世の記憶を引っ張り出していた。
 ほかの人が描いた絵を自分が描いたものとして発表する不届き者っていたんだよな……。で、あれもまさに盗用なんだけど、お金のための盗作なんかとは意味が違うので、処罰の仕方がけっこう難しかったはずだ。

 おそらく世の中にはそういう人もいるんだと思う。
 たとえば、身近な人に成功しているとウソをついていい顔をしたいとかってケースもあるだろうけど、それとは別の、誰かからの賞賛を浴びたいって気持ちはあるようなのだ。

 ほら、大衆酒場に行ったら、「俺、あの大臣と実は知り合いなんだぜ」とかしゃべり出すおじさんとかいるでしょ? で、よくよく聞いてみたら、道で遭遇しただけじゃんてなるやつ。あれに近いやつだと思うんだよね……。

「やっぱり我にはよくわかりません。それって、偽物の能力は全く成長しないではないですか。まだ、成長速度が遅くても、自分で活動すれば強くなれるかもしれないのに。不合理です。人として終わっているのでは?」
「ライカ、この人、そろそろ泣きそうだから、正論はストップしようか……」

 これ、成長志向のライカには理解できないことなんだろうな……。

「しょ、正体を現しますね……」
 老婆の姿が、若い赤い髪の女性に変わった。老婆基準だと50歳とかでも若いけど、誰が見ても若いと思える次元の若さ。

「魔女をやっていますエノと言います……。不老不死の能力は持っているんですが、百五十年ほど鳴かず飛ばずで……。もう偽物になってでも評価の声聞こうかなって悪魔のささやきが……」

 百五十年かぁ……。
 そんなに生きて認められたいって気持ちだけ強かったら変になっちゃう可能性は否定できないな。

「まったく、謙虚さが足りませんね。我の師匠であるアズサ様なんて、どれだけ強くても全然偉そうな顔をしないほどなのに。あなたとこのアズサ様の実力の違いはその態度にあります!」
「あれ、この人が高原の魔女のアズサさんなんですか?」

 ライカがしまったという顔をした。そこで、きっちりしまったという顔をしないでほしい。

「ばれてしまってはしょうがありませんね。このお方が高原の魔女アズサ様です!」
「ちょっとは誤魔化そうという努力を見せてよ、ライカ!」

 そこ、まだ誤魔化せるチャンスあったよね!?
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