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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

高原の魔女の偽物出現編

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117 情報収集は順調らしい

「高原の魔女……ですか。ああ、来てましたよ。この町にも滞在していたはずです」

 いきなりわかった!

「その人を探してるんです。どんな情報でもいいから教えてください!」

「といっても、私も見たことはないんですよね。ここで飲んだくれのクズどもの相手をしていたので」
 客に聞こえたら炎上しそうな発言ですけど、ここはむしろそれを客が求めてるので問題はない。むしろ、こちらとの会話中も仕事のことを忘れていないとさえ言える。

「もしかしたら、飲んだくれのクズどもが知ってるかもしれませんので、聞いてもらっていいですよ。虫に見えるかもしれませんが、人の言葉も使えますので」

 ほんとにとんでもないところに来ちゃったな……。

 私とライカはいい感じに出来上がっているおっちゃんたちに聞いて言った。
「高原の魔女って知ってます?」
「知ってるぜ。高原にいる魔女のことだろ」
「何も知ってないじゃん!」
「おっ、いいツッコミだ! もっときつく言ってくれよ! 『この役立たず!』とか言ってくれ!」
「この役立たず!」
「ああ、いい! 嫁に言われるとストレスたまるけど、若い子に言われるとご褒美になるなあ!」

 この人、こういうお店に来てることばれると、また奥さんになんか言われそうだな……。

 ライカのほうも最初はおっちゃんたちに戸惑っていたようだけど、途中で何かスイッチが入ったらしく、視線がきついものになっていた。

「黙れ、矮小な人間ども。レッドドラゴンに向かって、よくそんな口がきけるな。八つ裂きにしてやろうか?」
「おおっ! こういうタイプは初めてです! もっとお願いします!」
「お前らごときが我に何かを要求する権利などない」
「ありがとうございます!」

 ライカ、あくまでも目的にしてるのは偽物の正体を聞くことだからね?

 結局、高原の魔女本人の姿を見た人は誰もいなかった。使えない人たちだ(この店用の表現でふだんはもうちょっと穏やかです)。

 じゃあ、その魔女から薬を買った人がいないかと聞いてみた。
 というのも、もし毒になるような有害な薬物を私の名前で売られると、人の命にもこっちの立場にもかかわるからだ。これは最優先で確認しておきたかった。

 逆に薬でもなんでもない効き目のないものを売られても、やっぱり薬が必要な人が効かないものを飲んで、治らずに死ぬおそれもある。

「いや、うちの家内が風邪薬を買いに行ったんだけどよ、その魔女は『まだ自分は人を治すようなものを売れる立場じゃない』といって、何も売らなかったらしいんだ」
「へぇ、殊勝なことを言ってるんですね……」

 薬を売ってないだけマシだけど、一方で偽物に勝手に卑下されるのもムカつくなあ……。風邪薬ぐらいなら作れるっての……。

「そういや、ほかの土地でも薬は売ってなかったらしいな。名声でお金を稼ぐようなことはしたくないとか言ってたそうだ」
 お客さんの言葉に安心する反面、謎が深まった。

 名声でお金を稼ぐ必要がなかったら、どうして偽物やってるんだ?
 てっきり薬を売りさばいて儲けようとしてると思っていた。ていうか、それ以外にない。

 目的がわからないというのも、それはそれで気持ち悪いな。

「アズサ様、高原の魔女は二週間前に北へ向かう街道を歩いていったということです。各地に逗留しているとしたら、そう遠くまで進んでないかもしれません」
「ライカ、ありがとう。じゃあ、追うことはできるね」

 ある程度の捜索の目星がついただけでも助かった。

「もう、行かれるんですね」
 そこに店員さんがやってきた。
「もしよかったら、またここに働きに来てくださいね。普通の酒場の五倍の額のお給料が出ますから」
 もはや、それって居酒屋の店員でもらえる給料の額じゃないだろ……。

 私たちはひとまず郊外に出て、そこでライカにドラゴンになってもらって、百キロほど北の町に行った。ちなみにこの世界でキロという単位があるわけじゃないけど、いまだに脳内でキロで換算してしまう癖がある。この世界だと地域によってちょっとずつ単位が違っていたりしてわかりづらいのだ。

 百キロなら(私やライカみたいなのとは違うごく一般的な)女性の足だとだいたい三、四日歩く距離だ。さらに途中の町で二日や三日とどまっていれば、ちょうどこのあたりっていうことになるんじゃないかと考えた。

 私は町の広場近くの青果店に聞き込みをはじめる。偽物は目立つことを欲してるだろうから、広場のあたりに来るはずだ。

「高原の魔女? ああ、二日前までいたね。けど、思っていたのと違うかったよ」
 お店のおばちゃんがそう言った。
 かなり近づいてきた! ただ、思っていたのと違うってどういうことだろう。

「風の噂では魔女ってもっと美少女だって聞いたんだよ。でも、まったくそういうジャンルではなかったねえ」
「いやあ、それほどでも……。そんなに美容とかは気をつかってないんですけどね。気候がいいのかもしれませんね」

「なんで、あなたがうれしそうなんだい? あれ、でも、たしかにあなたも美少女だねえ」
「おばちゃん、そっちのリンゴとオレンジください」
 ここはお店の売り上げに貢献しなければ。いい情報をくれたのだから、これは当然だよね。

「アズサ様……やけに買っておられませんか……?」
「大丈夫。果物なら多少、量が多くても食べられるから」

 宿でリンゴとオレンジを並べて私はちょっと後悔した。

「旅先だと、調理もできないし、これ、少し飽きるね……」
「アズサ様、実はおだてられると弱いんですね」
 ライカがあきれていたけど、すぐにまたくすくす楽しそうに笑っていた。
「でも、そういうところも見られて、我は幸せです」

「前世だと、認められたりする前に過労死したからね……。あまり偉くなるようなことは避けてるけど、そりゃ、褒められればうれしいよ。やましいことなんて何もないわけだし」

「ですね。アズサ様の、こう、包み隠すところがない点は、弟子として本当に尊敬しています。理想の生き方といってもいいかもしれません」
 いいこといってくれるじゃない。そういえば、ライカと二人きりでの旅なんてこれまでなかったよなあ。もし、私が放浪の旅をしていたら、こんな生活をずっと続けていたんだろうか。

「よーし、じゃあ、ライカにご褒美でこれをあげよう」
 私はリンゴを一個、差し出した。
「もう、飽きてきました。肉がいいです……」
スライム倒して300年の重版分ができました! 今週末から月末あたりに順次お店に並んでいくかと思います。
ただ、どこのお店が補充分を注文してるかわからないので、念のため店頭にてご注文・ご確認いただけるほうが確実ではあります。ツイッターのリプなどで見つからないというご意見をけっこういただいているので……。お手数おかけします……。

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