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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

高原の魔女の偽物出現編

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116 怖い酒場で情報収集

 私は帰宅すると、作戦会議を開いた。

「――というわけで、私の偽物がいます」

「許せませんね」(ライカ)「締めてやりましょう!」(ロザリー)「殺そう」(フラットルテ)「判例に従えば懲役五年は堅い」(シャルシャ)「ママはママしかいないからね」(ファルファ)

 血なまぐさいことを言ってるのもいるけど、もうちょっと軽い方向で処罰したい。ハードコアなのは私としても嫌だ。

「どのみち、情報を集めないことには何もはじまらないしね。遠方の州まで行って聞き込みでもしよっか。偽物っていうことは、逆に自分が高原の魔女だって誰にも言わないわけにはいかないはずだから」

「アズサ様、こんな時こそ、魔族の方々の力をお借りしては?」
 ライカが建設的な提案をしてきた。捜索人数が増えるなら、効果的ではあるけど……。

「悪いけど、それはパスで……。あの連中は徹底的にやりすぎるから……」
 町という町に魔族がやってきて調べ上げるなんてことになると、高原の魔女というか「高原の魔族の女」になってしまいそうだ。

「私としては、偽物に反省してもらえればそれでいいっていうか、穏便に済ませたいんだよね。もちろん、効き目のない薬を売りつけるようなことをしてたとしたら、その罰は受けてもらうべきだけど」

 偽の薬となると詐欺罪だし、最悪の場合それで死者が出ることもあるので、そうなればそこは裁判所の出番になる。

「それじゃ、各自、偽物の情報収集をお願いしていいかな?」

 偽物捜索はこのようにしてはじまったのだった。

 いろんな町にメンバーは飛んだけど、私はライカと西部の町で聞き込みをすることにした。南部は私が大会で優勝したこともあって、逆に存在が知られすぎていて、危なっかしいから避けていると判断して、ほかのエリアから調べる。

 偽物に戦闘の覚えがあるかは不明だが、手合わせでもお願いされると、普通は嫌だろう。

「そういえば、こういう聞き込みというか、情報を集めることって長らくやってなかった気がする」

 RPGのゲームだと割と定番のことに思えるけど、冒険者でなければそういう事態も発生しないよね。『方舟』シリーズって名前のゲームで、本編シナリオをあまりやらずにひたすらギルドの仕事請け負ってたのを思い出した。あのゲーム、本編は暗かったから、余計に息抜きになったんだよね。まあ、そんなことはどうでもいい。

「聞くとしたら、やはり酒場なんでしょうか? ああいうところは粗野な人が多いので嫌なんですけど」
「あるいは流れの冒険者もいるかもしれないから、ギルドかな。そのどっちかじゃないかな。こういうのは根気がいるから、めげずにどんどん行こう。じゃあ、私は川向こうのギルドに行くから、ライカは近くの酒場――」

 くいくいっとライカに服を引っ張られた。

「酒場みたいなところは、その……我は苦手なので……ついてきていただけるとうれしいんですが……」
 ああ、もうかわいいなあ!

「ライカ、お嬢様っぽいもんね。あんなのんだくれが集まるところはダメだよね。じゃあ、一緒に行こう」
「むしろ、アズサ様はなんで平気なんですか?」
「深夜というか早朝までやってる安い酒場でそのまま寝て、翌日出勤とかちょくちょくやってたからね……」

 今、考えると本当に最低の日々だな。そりゃ、過労死もするわ。

 そこは州都の中でも規模が大きな酒場なので、昼間でも人がなかなか集まっていた。
「おー、べっぴんさんだ! 踏んでくれ!」「ののしってくれよ~!」「冷たい目で『最低!』って言ってくれ!」

「なんで、粗野な発言がドMなのだけなの!?」

 そこに、かなり目つきのキツい女性店員さんが来た。
「いらっしゃいませ、ここは大衆酒場『お前より豚のほうがよっぽど役にたつよ』亭です」
 大衆酒場じゃなくて、絶対特定のコンセプトに沿ってるだろ。

「姉ちゃん、お酒、おかわり~!」
「黙れ。自分で厨房にでも行ってこい」
 店員さんが言った。接客という概念が崩壊している。

「ほら、アズサ様、やっぱり我はこういうところは苦手なんです……」
「ライカ、これを酒場のスタンダードにするのはやめようね」

「このお店は昔、店員の接客が悪くてつぶれそうだったのを、心機一転雑に扱うことをメインにした店にしたところ、一気に繁盛したそうです。発想の転換の勝利ですね」

 転換しすぎだろう。
「どうやら、お二人は雑に扱ってほしいわけではないようですね。あるいは、接客のアルバイト申し込みでしょうか?」
 こんな店、絶対働きたくないわ。

「ちょっとお聞きしたいことがあるんですけど、タダで聞くのは申し訳ないんで、何か注文します」
「それでしたら、そのへんの男たちに悪口でも言ってあげてもらえませんか? できれば幻滅した目や不快そうな目をしてもらえるとありがたいです」
 本当にとんでもない店に入ったな!

 しょうがない。この店員さん自身は情報いろいろ持ってそうだし、少しだけそれに従うか。
 私は心底あきれましたって顔をした。

「姉ちゃん、追加注文したいんだけどよー!」
「酒臭い口でしゃべらないで」

「姉ちゃん、こっちも――」
「それ以上しゃべったら蹴るよ?」

「高い酒頼んじゃおっかなー?」
「あなたなんて馬の桶に入ってる水で十分じゃない?」

「姉ちゃん、ちょっと笑ってくれよ!」
「…………はぁ?」

 こんなのでいいのかと思ったけど、泣いて喜んでいる人までいた。この人たち、おかしいぞ!

「う~、やっぱり罵られるの最高だな……」「このために三時間歩いて来てるんだよ……」「ああ、ぞくぞくしてきた!」

 ライカが「炎で消毒したいです」と言った。気持ちはよくわかるけど、焼かないでね。

「ありがとうございます! これで豚どもがまた店にお金を落とします!」
 ついに店員さんが客を豚と表現しだした。

「さあ、どんなことでも聞いてください。情報ならそれなりに自信がありますよ」
 とはいえ、初回でいきなりわかるってことはないだろうけどね。
「高原の魔女を名乗る調薬師がこのへんに来たりしてませんでしたかね?」

「高原の魔女……ですか。ああ、来てましたよ。この町にも滞在していたはずです」

 いきなりわかった!
書籍版の重版、本当にありがとうございます! 今週末ぐらいには多分重版分もお店に並ぶと思います!

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