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スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました 作者:森田季節

高原の魔女の偽物出現編

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115 もう一人の高原の魔女

書籍版の重版、本当にありがとうございます! それとポイントも3万点突破もありがとうございます! 今回から新章突入です!
 からんからんと、休憩時間の鐘が鳴った。

「ふ~。一回休憩、休憩~」
 私は腕を、「う~ん!」と伸ばして、それから、休憩室に入って、そこのソファーに横になる。朝の部は働いてる人も少なめなので、ソファーも独占できる。

 その部屋にハルカラが入ってきた。
 社長業の時はいつもの服の上から一枚ジャケットみたいなのを羽織っている。
 微妙に表情がひきついっているような気がするけど。

「お疲れ様です、お師匠様」
「はい、お疲れ様~。いや~、たまにはこういう労働もいいね~」
「でも、こういうお仕事飽きませんか? お師匠様はもっと、こう、クリエイティブな仕事のほうがその経験と能力を活かせるのではないでしょうか。こんなことやるためにここにいてもらわなくても」
「それが単純労働もはまると、意外と楽しめるんだよ~」

「わたしとしてはやりづらいので、普通に家にいてほしいんですけど!」

 ハルカラがぶっちゃけてきた。これはガチなやつだ。

「え~? アルバイトで赤の他人を雇うより知ってる人間を雇うほうが気楽じゃないの?」
「そりゃ、妹が働くとかならいいですよ? でも、お師匠はお師匠様なんですから! 目上の人が自分の経営する工場で働いてたら気をつかいますよ!」

 そう、実は私はハルカラの工場でパートで働いていた。
 とくにお金に困っていたわけではないので、理由としては暇つぶしということになるだろうか。ものすごく久しぶりにバイト的なことをしたかったのだ。
 ちなみにさっきまでやってた業務は売り出される商品にラベルを貼る仕事だ。黙々としわにならないように貼っていく。

「いや~、かなり上手にラベルも貼れるようになってきたよ。斜めになったりすることもないし、このまま続ければ職人クラスになれそう」
「そんなの、ならなくていいですよ……。だったら薬を扱う方面でトップを目指してくださいよ……。わたしとしては、お師匠様が偉くなったほうが内心鼻も高いし、うれしいです」

 なるほど。ハルカラの言いたいこともわかるといえば、わかる。素直に尊敬できるようなことをやってくれということだろう。しかし――

「超一流の調薬師になろうとすると、薬草探しで全国行脚は必須でしょ。それって、面倒くさい。しかも、家族をぞろぞろ連れていくわけにもいかないから、ひとりぼっちだし……」

 何が悲しくて、愛する娘や家族から離れて、単身赴任しないといけないんだ。しかも、伝説の調薬師なんてものになれば、世界中の金持ちや貴族から病気を治してほしいとオファーが来るだろう。忙しさはさらに加速する。そこにスローライフの要素はない。

 ちょうどハルカラも「そうですよね。わたしたちと離れたくないですよね」と頬を赤らめていた。なぜ、そこで頬を赤らめる。

「私としては、何事もほどほどがいいの。調薬師としても魔女としても天下を取る気はないからね。ほかのパートの人にも近くに住んでる娘って思われてるだけだし」

 そこに同じパートのおばちゃんが入ってきて「あらあら、アズサちゃん、お疲れ~」などと声をかけた。この世界は写真というものがないので、高原の魔女という存在は知られていても顔と名前が一致してない人が多いのだ。

 ハルカラは微妙そうな顔をしていた。おそらく、私が崇められてないことが多少気に入らないんだろう。けど、私としては承認欲求はフラタ村周辺で満たすぐらいでちょうどいいのだ。それを拡大していくと、きりがなくなるからな。

「ねえ、アズサちゃん、好きな人とかはいないの? 縁談持ってきてあげようかしら?」
「おばさん、そういうのはいいですよ~。私、娘が二人もいますから~」
「えっ?…… そうなの……。ははは……」

 娘がいると言うと、こういう話はあっさり終わる。見た目が若いとこういうことも言われるので、華麗に対処するよ。

「そうそう、そういえば、高原の魔女様のお話、知ってる?」
 ここでも魔女の話題ぐらいは当然出る。
「私はフラタ村のほうに住んでますから、実物見たことも何度もありますよ」
 何食わぬ顔で話に乗る。ハルカラとしては「それが私です」なんてことを言ってほしいんだろうな。

「その高原の魔女様、今は全国を回って、薬探しの旅に出てるらしいわね。本当に偉大な方だわ~」

 ん?
 どうにも、ありえない話が聞こえてきたような……。

「あれ、それは私も初耳なんですけど……」
「世界中の病を治したいという誓いを立てて、各地を回っては薬を売って歩いているそうよ。その人徳を慕って、人も各地で集まってるって」

「へ、へえ……。けど、高原の魔女様、今日も村のあたりで見たんですけどね……。なんででしょうね……」
「魔女様ってドラゴンの子も住んでるんでしょ? ドラゴンにでも乗って戻ってきたんじゃない?」
 そんなところだけ詳しく知ってるのか。

「じゃあ、ちょっと水を飲んでくるわ。アズサちゃん、またね」
 そう言って、おばちゃんは部屋を出ていった。

 私とハルカラだけが残された。必然的に目を見合わせる私たち。
「ハルカラ、大変なことになってるよ……」
「お師匠様、わたしに黙ってこんな偉いことをなさってたんですね」
「違う」

 その可能性はない。なぜなら私がやってないからだ。

「つまり、私をかたってる偽物がいるってことだよ。おおかた、私の名前を使えば薬がよく売れるからとか、そういうことでしょ」
「な、なんて人でしょうか……。許せません……。精神的苦痛を受けているとして、慰謝料を請求しましょう!」

 慰謝料を払わせるかは別として、どうにかしなきゃいけないのは事実だ。活躍されすぎても私が困るし、罪を犯されたり評判を落とされたりしても本物にしわ寄せが来る。

「よし、裁判所に訴えましょう」
「ハルカラ、あなた、社長だけあって社会人としてはまっとうな選択肢とろうとするね……。でも、起訴する主体がどこにいるかわからないんじゃ、どうしようもないでしょ。向こうは旅してるから、住所もわからないし」

 ハルカラもそれもそうだという顔をしていた。

「なので、まずは偽物を直接とっちめるしかないね」
偽物と表記するか偽者と表記するか悩んだのですが、ひとまず偽物に統一することにします。ご了承ください。

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